電子政府サービスの実施状況 (2008年9月現在)、シンプルで反応の良いサービスを増やそう
電子政府サービスの実施状況(2008年9月現在)を公開しました。国と地方の連携は、まだまだこれからですね。
「利用者別」「国と自治体」の二つの視点から、代表的な電子政府サービスを分類し、該当するサービスや関連情報にリンクを張っています。
日本の電子政府サービスの特徴として、お金がかかり過ぎていることは「日本の電子政府の費用対効果は世界最低水準」で指摘しましたが、サービスの質は決して悪くありません。
●国のサービス
国においては、情報閲覧・照会など片方向型サービスが優れています。法令や統計など、省庁横断的に情報を検索・閲覧できるようになったのは、とても有意義なことです。
その一方で、電子申請・電子申告など厳格な双方向型サービスは、期待通りの利用が進まず、かなり悪戦苦闘しています。
厳格な双方向型サービスの中でも、実質的な強制力を伴う(公共事業を中心とした)電子入札・調達は、色々と課題はありますが、国際的に見ても進んでいると言えるでしょう。
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簡易な双方向型サービスでは、「意見公募手続」が要注目です。現在は、利用者視点に欠けたものとなっていますが、より双方向性を持たせ、意見提出者のモチベーションを高める努力をすれば、政治改革・行政改革に寄与する大きな可能性を秘めています。
●地方のサービス
地方自治体(特に市町村)は、市民との接点が多く距離感も近いので、優れたサービスが育ちやすい環境にあります。財政難でIT投資が難しい反面、新しいアイデアや工夫が生まれやすいとも言えます。
情報閲覧・照会など片方向型サービスは、生活情報、ビジネス情報などを中心に充実しています。
電子申請・電子申告など厳格な双方向型サービスは、利用が進みませんが、公共施設予約や図書予約といった簡易な双方向型サービスは、何度も利用してくれるリピーターに支えられています。
国と同様に、電子入札・調達の利用は進んでいると言えるでしょう。
●外国人向けのサービス
外国人へ向けのサービスは、国より自治体が進んでいると言えます。
特に、外国人が多く住む地域においては、サービス・情報の多言語化は必須となります。
多言語対応については、二つの側面があります。
1 日本に滞在する外国人へのサービス・情報提供
2 海外にいる外国人への情報発信
在日外国人は、全人口の数パーセントに過ぎないので、「日本に滞在する外国人」のためだけと考えると、それほど力を入れなくても良いと思いがちです。
しかし、「海外にいる外国人」を利用者として想定すると、その市場規模は日本国民向けサービスより大きくなります。日本経済も、内需(国内)より外需(海外)に依存していますね。
海外の人に、日本へ来てお金を使ってもらう。海外の企業や政府に、日本へ投資してもらう。そのためには、外国人向けサービスの充実が必須となります。
●行政・公務員向けのサービス
電子政府先進国では、「行政機関・職員」を「有望な電子政府サービスの利用者」として位置づけています。
日本でも、「オンライン利用拡大行動計画」において、ようやく行政機関や職員を利用者として注目するようになりました。
今までは、政府専用のネットワーク内で利用できるサービスが中心でしたが、今後はインターネット経由のサービスについても、利用が進んでいくでしょう。
●海外にあって日本に無いサービス
海外にあって日本に無いサービスとしては、「無料の企業検索」「運転免許の更新」「反則金オンライン納付」「失業手当給付」「建築許可」「電子請願(国会への意見・提案等)」などがあります。
海外の電子政府サービスは、非常にシンプルです。利用者が限定され、サービスの種類や機能も絞り込まれているため、迷うこともありません。
電子政府サービスの国際比較については、携帯電話と同じように考えてみると、わかりやすいでしょう。
日本の携帯電話は、海外と比べて高機能・高価格と言われています。しかし現在は、高機能の「全部あり」携帯電話がある一方で、高齢者にも使いやすいシンプルな携帯電話があったり、より個性的なデザインや操作性を持たせた携帯電話などがあります。また、海外の携帯電話も高機能化が進みつつあります。
これと同じような傾向が、電子政府サービスでも見られるのです。
●日本の電子政府サービスが進むべき道
日本の電子政府サービスは、高機能・高価格(でも使ってもらえない)なものが多かったのですが、今後はよりシンプルで使いやすいサービスを増やすべきでしょう。
機能を絞り込むことで、設計・開発期間を短縮し、費用を安価に押さえる。その分、回転率(PDCA)を高めて、改善のスピードを上げる。
1億円の電子政府サービスを一つ作るよりは、100万円のサービスを10個作って、10回転させる方が効果的です。
「バックオフィスの連携」のような事業には中長期的な視点が必要です。
しかし、個々のサービスについてはタイミングとスピードが鍵を握ります。
ということで、今の日本の電子政府に必要なのは、「シンプルで反応の良いサービス」でございます