世界の公務員の成果主義給与

世界の公務員の成果主義給与

OECD(経済協力開発機構)による本書は、先進国における公務員の成果主義給与を比較し、そこから学ぶべきものを整理しています。要約版(英語)は、OECDのサイトで閲覧することが出来ます。

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日本の公務員の給与が割高であることは、公務員だから仕事をもらえない時代へでも触れましたが、成果主義の導入についても遅れています。また、成果主義とセットで導入すると有効とされる「権限委譲」についても遅れています。 そのため、各国からのレポートを基礎とする本書でも、日本の事例は記載されていません。

公務員の給与は、中流階級のようなものです。民間と異なり、数億円の年収がもらえることはありませんが、民間企業の水準よりは上といった感じです。

日本の場合は、公務員と民間の差が広がってきたことが問題となり、現在は調整中といったところです。さらに、公務員の中でも、正規雇用と非正規雇用の格差が広がっていることが問題となっています。

海外の場合は、公務員であっても終身雇用が保証されておらず、有期雇用が一般的となっている国も多い。その場合、仕事の内容が同じようなものであれば、日本のような格差は生じにくくなります。

本書が指摘することの一つとして、「成果主義の導入は、公務員のインセンティブとしては、あまり期待できない。」ということがあります。

かなり以前から、公務員のインセンティブとしては、金銭や報酬といった経済的なものよりも、キャリア開発や仕事の内容(やりがい)に効果があることが認識されています。

では、なぜ面倒で手間のかかる成果主義を導入するのかと言えば、「組織変革やマネジメント改革を促進する」という効果が期待できるからと指摘されています。

もう少し具体的に言えば、
・目標設定のプロセスが見直される
・公務員自身が、自分たちの仕事内容を見つめなおす機会となる
・職務遂行のために必要な能力(コンピテンシー)が明確となる
・必要な能力を磨くための学習やスキルの獲得に対して意欲的になる
・職員と管理職の対話(コミュニケーション)が改善される※1
・チームワークが向上する※2

※1 成果主義では、職員の自己評価を基礎とし、上司との対話を通じて評価を確定させることが多い。
※2 個人の評価だけでなく、チームや組織の成果も評価対象とされることが多い。

つまり、自分を見つめなおし、仕事を見つめなおし、上司や同僚、国民といった360度の視点から、自分の仕事がどのように見られ評価されているのか、どのように役立っているのかを意識するようになるのです。

このような2次的な効果は、電子政府でも同様に期待できるものです。

電子政府を「きっかけ」として、公務員が仕事のあり方や、やりがいといったものを考えるようになれば、それだけでも効果は大きいと言えるでしょう。

最近では、このような「きっかけ」が増えてきています。小さな「きっかけ」も、「チリも積もれば山となる」で、気がつけば大きな変革の波となります。

大きな波に備えて、今から準備・練習しておきましょう

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