第4回関東電子政府推進員協議会に参加して、ソフトウェア業界の影響力に注目

平成20年10月24日、さいたま新都心で「第4回関東電子政府推進員協議会」に参加しました。前回の様子は、「第3回関東電子政府推進員協議会(1)」などをご覧ください。

今回は、簡単にその様子をお伝えして、作者が感じたことを記しておきます。

これまでと同様に、参加者の中心は士業の方々で、発言も士業が多かったように思います。企業や個人など、他のユーザーが見えてこないのは課題ですね。

●オンライン利用率・利用件数への指摘

本ブログでも指摘されている「オンライン利用率・利用件数」については、かなり評判が悪かったですね。行政側は、オンライン利用の数え方と開示方法について、考え直すべきと思います。

●利用状況について

登記申請については、オンライン利用が進まず、今後も増えそうにありません。

以前に「オーストラリアの電子政府優秀賞2008から学ぶ」で指摘したように、「オンライン申請」ではなく、「安全な不動産取引」といった視点でシステムを作り直した方が良さそうです。

登記関連の証明書の交付・閲覧については、業務で十分に使えるオンラインサービスなので、改善の余地はありますが、今後も利用は増えていくでしょう。

社会保険関連手続についても、オンライン利用が進んでいません。しかし、窓口でのFD申請(電子データの持込み)は多いので、やり方次第ではオンライン利用も増やすことは可能でしょう。

社会保険関連手続については、電子申請システムの統合に伴い、そのオンライン窓口が「e-Gov電子申請システム」へ移行しているので、本システムの改善が必要となります。「e-Gov電子申請システム」の課題と改善方法については、別ブログで提案する予定です。

最も利用が進んでいるのは、電子申告を取り扱う税理士でしょう。そもそも、税務の処理はコンピュータ化が進んでおり、オンライン申請に馴染みやすいのです。利用が進んだ主要因は、次の3つ。

1 電子申告に対応する税理士業務ソフトウェアの更なる効率化
2 添付書類の省略
3 電子署名の省略

早い話が、「紙申告より電子申告した方が合理的・効率的になった」ということですね。こうなると、「利用しない方が損になる」ので、利用は増えていきます。

オンライン利用については、滅多に「利用が増える」と予測しない作者も、「電子申請・電子申告による税額控除と添付書類の省略」で税理士による電子申告の利用増加を予測しました。

今後は、地方税の電子申告が活性化することが予想されるので、税理士に加えて、企業による利用も増えていくことでしょう。

●ソフトウェア業界の影響力に注目

電子申告の利用が増えた背景に、ソフトウェア業界の活躍があります。税理士さんと電子申告の話をしていて、ほとんど必ず出てくるのが「TKC」という企業です。

税理士業務ソフトウェアのシェアトップを誇る一部上場企業で、低価格なASP方式により地方自治体の電子申請・電子申告サービスのシェアも増やしています。

士業ビジネスモデルの崩壊」で『税理士に業務独占が許されていない米国では、税理士の力は強くない。では、どこが強いかと言えば税務ソフトウェア業界である。』と述べましたが、これと同じような状況が日本にも起きつつあります。

オンデマンドサービスのsalesforce.comが、公共部門でも利用されるようになってきたのも、電子政府分野へのソフトウェア業界進出を意味しています。

既存の大手電子政府ベンダーにとっては、こうしたソフトウェア業界といかに上手に付き合っていくかが、今後ますます重要になってくるでしょう。

そして、その先に見えるのは、「かなり安価で生産性の向上したシステム開発・運用・統合」であり、「費用に見合った効果をもたらす電子政府の登場」なのです。

“第4回関東電子政府推進員協議会に参加して、ソフトウェア業界の影響力に注目” に4件のコメントがあります

  1. とりあえずこちらに、電子政府ガイドライン作成検討会(第1回)会合
    どこにコメントするか迷いましたが、電子政府ガイドライン作成検討会(第1回)会合の議事概要がいつのまにかでてました。

    •ユーザビリティ分科会がスタートする前に、特に利用件数の多い登記、国税、社会保険・労働保険分野のオンライン申請を一度使わせて欲しい。現実に何が問題になっていて、どこにユーザインターフェース上の問題があるかということを事前に確認した上で会議を行った方が、議論が効率的に進むのではないか。

    こういう意見がなぜいままででなかったか、不思議ですが、各大臣にまず使っていただくのが一番話は早いはずです。
    意外と法務大臣使えたりして。

  2. 使えばわかる
    sagoさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    電子政府ガイドライン作成検討会
    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/guide/index.html
    に期待していたのは、正にこの「実際に使ってみる」です。
    ようやく、ここまでたどり着きました。

    評価委員会でもお願いしていたのですが、評価委員会では時間や人材の関係で難しいため、電子政府ガイドライン作成検討会の皆さまには大いに期待しています。

    これからの電子政府・電子申請は、じゃんじゃん膿(うみ)が出てきます。そして、この膿出しは、将来のために絶対に必要な過程なのです。

  3. 登記識別情報を提供するパターンを是非
    むたさん ありがとうございます。

    乙号証明だけじゃなく、特に識別情報を提供する贈与による所有権移転なんか試していただきたいですねえ。

    識別情報のセキュリティとユーザビリティの両面から検証していただきたいです。

    ところで自動車登録識別情報は順調でしょうか?
    自動車OSSは、朝ズバでもやられたとか。

  4. 自動車OSSも正念場
    sagoさん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。

    登記の手続は一般の人には馴染みにくいので、「簡易な手続を例にして、ちょっと操作してみる」程度になるのではと思います。

    それより先は、分科会の検討に期待したいですね(過度な期待は禁物ですが)。

    自動車OSSは、「みのもんたもビックリ」の現状ですから、廃止・停止も十分にあり得るでしょう。存続させる場合は、かなり厳しい条件を課さなければいけません。

    個人的には、「自動車OSSをどのように処理するか」が今後の日本の電子政府に大きな影響を与えると考えています。

    「今までたくさんお金をかけてきたから」、「省庁横断のワンストップ事例だから」といった理由で安易に存続させるようであれば、日本の電子政府はダメになるでしょう。

    「自動車OSS」については、また別ブログで解説したいと思います。

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