厚生労働省:「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会これまでの議論の整理」について
厚生労働省から、:「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会これまでの議論の整理」が公開されています。現在検討されている「社会保障カード」の概要、電子私書箱・住基カード・公的個人認証といった既存インフラとの関連性が理解できますね。
関連ブログ>>社会保障カード:MBRコンサルティング
これまでの議論の内容を踏まえると、次のようになること予想されます。
●社会保障カード(仮称)とは
年金手帳、健康保険証、介護保険証としての役割を果たす政府発行の統合カード。今まで複数枚を保有・管理する必要があったものを、一枚のICカードにまとめたと考えて良いでしょう。
今年度中(2009年3月末まで)に、基本計画を策定することが予定されています。。
●社会保障番号は導入されるのか?
本人を識別する情報(本人識別情報)については、
案1 各制度共通の統一的な番号を利用
案2 カードの識別子を利用
案3 各制度の現在の被保険者番号を利用
案3―2 各制度内で不変的な番号を創設し、利用
案4 基本4情報(氏名、生年月日、性別、住所)を利用
が検討された結果、とりあえず「案1 制度共通の統一的な番号」と「案2 カー
ドの識別子」に絞り込まれたようです。
●社会保障カードでできること
・インターネット上で年金記録や診療履歴・医療費履歴などが確認できる。
・自分の年金情報等が不正に閲覧・改ざんされないよう監視できる。
・転職等による保険証の取替えが不要になる。
●社会保障カードの課題
ただし、上記の効果を実現するためには、「電子私書箱」等の新しい仕組みが必要となります。また、社会保障カードが無くても、上記の効果を実現することは可能です。
そこで、大切になるのが、費用対効果です。中長期の視点から国民を交えて「社会保障カードって本当に必要なの?」といった議論を徹底して行い、税金の無駄遣いとならないように監視・評価していくことが必要となります。
具体的には、現在の年金・医療制度の中で、今後数十年~50年間ぐらい制度を維持・管理していくためにどの程度の支出が可能であり、他のシステム構築・維持費用と合わせて、可能な支出範囲で「社会保障カード」を導入し維持していくことができるのか。ということです。
●新たな政府情報基盤は負債である
インターネットは既に民間で利用・普及している情報基盤であり、政府にとっては「負債」ではありません。
ここでの「負債」は、「政府の金庫(国庫)からお金を支出させるもの」という意味です。
これに対して、「社会保障カード」や「電子私書箱」は、政府にとっての「負債」です。毎年、数十億円、数百億円といった税金が失われていく(電子政府ベンダー等のフトコロに流れていく)からです。
社会保障カードについては、作者の知る限りでは、これまでの失敗を踏まえて、政府内でもかなり慎重に議論されていると思います。しかし、技術・制度的な仕組みに関する議論に比べると、費用対効果の議論はまだまだ不十分と思います。
今後は、「社会保障カード」という「負債」が、社会に対してどれだけの価値を提供してくれるのか、それが費用に見合うものなのか、費用を負担していくことは本当に可能なのか、といったことをシミュレーションし、わかりやすい形で国民に提示していくことが必要でしょう。