なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する

なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する 木下敏之

実体験に基づいた内容で、改革の現場を垣間見ることが出来ます。作者が特に感心したのは、著者のビジネス感覚です。自身のビジネス能力の限界を認識した上で、勉強を続けると共に、民間経営者の知見を借りる。これは、なかなかできることではありません。

「コスト削減」は、自治体職員(地域医療における医師や医療関係者等も)にもできることが多いのですが、「お金を稼ぐ」となると全く別の思考と能力が必要となるため、「役人では無理」と考えて良いでしょう。

なぜなら、役所の人は「経営者としての教育や経験が無い」だけでなく、お金は「稼ぐもの」ではなく「もらうもの」という考えが身に染み付いているからです。

自治体は「住民から税金をもらう」「国から補助金をもらう」ことで成り立っており、公務員は「給与をもらう」ことで生活しています。そのため、「お金を増やす」とか「収益を上げる」といった思考が欠落しているのです。

さらに、彼らにとっては「お金をいかに残さず使うか」の方がより重要なので、コストを削減できたとしても、その浮いたお金で借金を返したりすることもありません。いっそのこと、部局ごとに予算だけでなく借金を割り当てれば良いと思うのですが。。

こうした傾向は、ある意味仕方の無いことであり、大手企業である電子政府ベンダーで働く人も同じような思考があります。ベンダーは、「役所から仕事(=お金)をもらう」「補助金をもらう」のであって、役所の収入アップに貢献することはまずありません。

しかし、今まではそれでも何とかなったのですが、今後は、特に地方自治体においては、「コスト削減」だけでなく、「いかにお金を稼ぐか」「いかにお金を増やすか」といった能力が必要となります。

電子政府・電子自治体も同様です。

・ホームページの広告で稼ぐ
・業務パッケージを開発・販売して稼ぐ
・業務マニュアルを作成・販売して稼ぐ
・オークションで稼ぐ
・地方特産品やキャラクターグッズで稼ぐ

など何でも良いから、まずは考えてみることが大切ですね。

本書でも問題とされている自治体の財務状況については、総務省が公表している「財政比較分析表」が参考になるでしょう。著者が市長をしていた佐賀市を含めて、全自治体の財務状況が一目でわかりやすく公表されています。

自治体の中でも、市町村レベルとなると、民間委託等の推進などの行政改革・財政改革は遅れており、市町村間でかなりの格差があります。

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例えば、「公用車の運転」の民間委託については、都道府県63%で政令指定都市65%でに対して、市町村では41%にとどまっています。

「学校給食の調理」は、都道府県89%で政令指定都市100%でに対して、市町村では47%となっています。

もちろん、規模が違うので単純な比較はできませんが、公務員や一部企業・団体の既得権益や抵抗勢力が関係していると考えて良いでしょう。

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“なぜ、改革は必ず失敗するのか-自治体の「経営」を診断する” に4件のコメントがあります

  1. 電子行政推進法試案もありましたが
    イエモリさん 見ました。
    推進法試案で、資格者は「代理業等」でしたね。
    まあ このくらいの扱いの方が過度に期待しなくていいでしょう。

    法案審議の前に政権が変わっているかもしれないが。

  2. 資格代理人への過度な期待は禁物
    sagoさんの、
    >まあ このくらいの扱いの方が過度に期待しなくていいでしょう。

    はい、いわゆる士業について、「代理人」として積極的に活用しないことですよね。過度な期待は、期待倒れとなる。

    というか、唯我独尊的に代理人の士業の為だけのシステム構築をと言い出すに決まっているのだから。

  3. 無駄なものは作らせない
    イエモリさん、sagoさん
    情報&コメントありがとうございます。

    経団連の提案内容は、盛りだくさんですね。

    実現の可能性は別として、「無駄なものは作らせない」という視点は大切と思います。

    せっかく無駄なものを止めても、後から後から無駄なものが作られたら意味無いですから。。

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