財政のしくみがわかる本、電子政府の問題点もお金の流れを追えばわかる

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)
神野 直彦
岩波書店

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財政学が専門の著者は、財政が本来果たすべき役割を担うことで、「幸せな社会」の実現を目指しているようです。

「ジュニア新書」と思って侮る事なかれ。わかりやすい説明の中にも、かなり深いところまで踏み込んだ内容となっています。

例えば、新聞やテレビを通じて「国の借金の状況が大変なことになっている」と知っても、実際のカラクリを知らない人も多いでしょう。

日本の借金は、国債=国民からの借金なので、いざとなったら帳消しにできる(方法はいくつもあります)のですが、だからと言って増えすぎると困ります。

平成20年度一般会計歳出歳入の内訳を見ると、支出の4分の一が借金の支払いとなっています。

つまり、借金が増えても夕張市のように破綻をする可能性が低いのですが、行政サービスや社会保障などに使えるお金が減ってしまうのですね。

ただでさえ、将来の投資となる(役に立つ)教育や子育て支援にお金を使わない日本は、借金が増えれば増えるほど、社会保障のお金を払ったら何もできない政府となってしまうでしょう。

電子政府でも、財政の仕組みや現状を知っていると、色々と見えてくることがあります。

国の支出で最も多いのが、社会保障(医療、年金、介護、福祉など)の26.2%で、公共事業の3倍以上となっています。この割合は、これからもっと増えていきます。

では、社会保障(医療、年金、介護、福祉など)を担当する省庁はどこでしょうか。そう、厚生労働省です。つまり、厚生労働省が一番お金を使えるということです。

300億円以上の税金投入で利用率0.1%の社会保険・労働保険関係手続のオンライン申請も厚生労働省が担当しています。しかし、彼らにとっては300億円なんて、たいした金額ではありません。

それどころか、「年金記録問題への対策」といった名目で、社会保険・労働保険に関係する新たなシステムが、これまた気前良く税金を使って作られようとしています。利用率0.1%のオンライン申請も、その実態を把握しないままに存続させようとしています。

作者が「社会保険・労働保険関係手続のオンライン申請」を取り上げて、その見直しを訴えるのも、そうした「社会保障バブル」「年金記録バブル」への警鐘という意味が強いのです。

「バブルは弾けてみないとわからない」と言いますが、国民が知らないままに「社会保障バブル」「年金記録バブル」は確実に電子政府を蝕んでいるのです。

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