IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会、社会保障番号(国民のID管理)の議論が活発になるか
IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会(第2回)の配布資料が公開されています。
その内容を見ると、これまではどちらかと言えばタブー視されてきた、社会保障番号や住基ネット(住民票コード)などの国民のID管理に関する議論が活発になってきたようです。
外国人についても、法務省が、外国人登録制度に代わる「在留カード」による「在留管理制度」の実現を進めています。
関連>>外国人に「在留カード」…偽造行為に罰則、国が一元管理へ(読売新聞)
国民や市民のID管理については、国際的な流れもあり、日本でも国民や外国人に対してID(各人に重複しない番号や記号等を付与する)を付与し、そのIDを行政機関や民間企業などで共有しましょうといったことが検討されています。
現行の住基ネットはかなりいびつなので、本格的な国民IDとして活用する場合は、制度そのものの再設計が必要でしょう。
IDに付き物なのがICカードで、例として住基カードや運転免許証などがあり、今後は社会保障カードなどが検討されています。
ID管理は、国民だけの話ではありません。
国家公務員の背番号制度、企業コードなどから、手続や様式へのID付与もあり得ますし、オンライン申請における受付け番号もIDの一種です。
IDがあると何が便利かと言えば、「情報共有・連携」が簡単に(低コストで)できることがあります。「追跡」も得意です。同じことを何度も言ったり書いたりしなくて良いのですが、悪いことをしても、すぐばれちゃったりします。
・サービスを受ける場面では
・より適切なサービスを
・迅速かつ包括的に受けられるようになりますが
・義務や責任が発生する場面では
・そこから逃れることが難しくなる
といった感じです。
よく言われるIDの悪用、例えば「他人への成りすまし」や「政府による国民の監視」などについては、かなり誤解があります。
「他人への成りすまし」や「政府による国民の監視」は、国民IDの導入と関係なく起こります。(実際、起きています。)
社会保障番号や住基ネットがあろうがなかろうが、ほとんど関係ありません。
他方、国民IDを活用することで、「他人への成りすまし」や「政府による国民の監視」を抑制・防止することもできます。
国民のID管理については、議論をオープンにすることで、国民に次のような問いかけをする必要があります。
国民IDを導入すれば、縦割りの無いワンストップ行政サービスなどを実現できるかもしれません。ただし、義務や責任については今まで以上に厳しく追及されるでしょう。
国民IDを導入しなければ、行政サービスの質は低下するかもしれません。税金も必要以上に増額しなければいけなくなるかもしれません。ただし、義務や責任については逃げ道が確保されるでしょう。
ただし、国民IDの導入は効果が保証された万能薬ではありません。「副作用ばかりで全然効かなかった」なんてこともあり得ます。
最悪のシナリオとしては、
・国民IDを導入したものの
・期待されたほど行政サービスは良くならず
・依然として、縦割りや天下りが横行し
・儲かったのはICカードなどのベンダーだけで
・その維持費用に税金が食いつぶされていく
・他方、税金や社会保険料は厳しく徴収され
・以前より国民の暮らしは大変になった
現在の政治や行政、そして、これまでの実績を見る限り、この最悪のシナリオとなる可能性は、けっこう高いと思います。残念ながら。。
今のままでは、国民の理解を得るのは難しいだろうなあ