信頼のガバナンス―国民の信頼はどうすれば獲得できるのか、電子政府に情報公開と国民参加を

信頼のガバナンス―国民の信頼はどうすれば獲得できるのか
田中 一昭,岡田 彰
ぎょうせい

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「政府に対する国民の信頼」を中心として、「信頼」を獲得するための条件や要素について、官民学それぞれの立場から語っています。

「信頼」は、けっこう曖昧というかいい加減なもので、経済状況が良い時は「信頼」されていた政府も、不況と共に「信頼」が失われていく。。

つまり、問題や不安の複雑化・多様化・増加のバロメーターとして「信頼」が機能している面があります。

その一方で、「信頼」から始まる問題解決もあります。

まずは、相手との信頼関係を構築した上で、問題の解決に取り組むという方法です。

「理性で納得できても、感情で納得できなければ、人は動かない」ということですが、実際には「多くの人が共感し納得できる理論」と「人々の心に働きかける情熱や誠実さ」といった理性・感情の両方が必要です。

さて、電子政府に欠けているのは、どちらか。・・・いや両方か。。

これに加えて、ビジョン、リーダーシップ、カリスマといった要素があれば、かなり巨大な組織や多数の人々を動かすことができると。

作者が、電子政府や電子申請に関与し始めた頃から、実際にサービスが成功するためには「信頼」が欠かせないものであると感じていました。

そして、その「信頼」はバーチャルではなく、リアル社会における「信頼」こそが鍵を握っており、「リアルでの信頼が無ければ、電子政府が信頼される訳が無い」という考えに至りました。

電子政府で「信頼」を獲得するための要素は色々と考えられますが、「情報公開」と「わかりやすい説明」が、やはり最も効果が大きいと思います。

・良いところも悪いところも、包み隠さずに公開する
・公開する時は「わかりやすさ」を重視し
・もっと詳しく知りたい人のために、詳細なデータも開示する

「全ては、ここからスタートする」と言っても過言ではありません。

その上で、

・いくつかの選択肢を提示して
・国民や利害関係者に選んでもらい
・あるいは、代替案を考えてもらい
・選択肢を絞り込み
・さらに洗練させていく

といったことが続きます。

コンサルタントとしての仕事であれば

・顧客のニーズを理解し
・現状認識を踏まえた上で
・最も効果的と思われる手法を選択して
・顧客に提案する

という作業フローになると思います。

けれども、上記の作業フローは、単体としての企業や公共団体向けと言いますか、電子政府のような公共性の高い大規模な事業では、あまりオススメできません。

どういうことかと言えば、電子政府では、

「最も効果的な手法」が、必ずしも「最も賢明な選択」であるとは限らない

ということです。

むしろ、多くの国民や利害関係者が納得して選んだ手法であれば、2番手や3番手の手法で良いと思います。

自分達で決めたのだから、後で文句は言えないし、責任回避や言い逃れもできませんよ。ということです。

今の電子政府では、次世代電子政府サービスを考える:これからは行政が国民に合わせるでも触れたように、「行政が考えたやり方を、国民に押し付ける」という昔ながらの役所のやり方です。その結果が、

行政:さあ、良い物を作ってやったぞ。さあ、使え! 便利だろ?

国民:こんなの使えないし、こんなもの望んでないよ。期待していたのと全然違うよ!

という現状なのですね。

こうした手法は、「お手本や正解がある場合」は、それなりに有効ですが、電子政府のように「お手本や正解がない場合」は、あまり機能しないばかりか、国民の反感を買い「信頼」も失ってしまいます。

今後の電子政府では、「いかに国民を巻き込んでいけるか」が、ますます重要になることでしょう。

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山岸 俊男
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