年金制度は破綻するのか、知りたいのは「いくらもらえるか」

テレビ東京のNEWS FINEで、年金の話題を取り上げていました。

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)の著者である細野氏による解説で、さすがにわかりやすいお話でした。

作者は、細野氏とはちょっと違う視点から年金制度に触れてみようと思います。

●年金制度が破綻しない理由

年金制度については、厚生労働省の年金情報ページから、たいていの情報は入手できるようになっています。これも電子政府の効果の一つですね。

結論から言えば、未納がいくら増えようと、年金が破綻することはありません。

なぜなら、足りない分を穴埋めできる仕組みになっているからです。

その方法は、基本的に次の3つです。

1 保険料を上げる(または税負担分を増やす)
2 支給額を減らす
3 支給対象者を減らす(支給年齢の引き上げ等)

もちろん、上記を好き勝手にできるわけではありませんが、破綻するよりはマシなので、年金の財源が厳しくなれば調整できるのですね。

●3%の運用でも減っていく「年金積立金」

次に、番組でも触れていた「厚生年金・国民年金の積立金運用」を見てみましょう。

運用状況では、「収益がプラスかマイナスか」に注目が集まりがちですが、市場動向など誰も読めませんので、良いときもあれば悪いときもあります。

では、何を見れば良いかといえば、それは「年金積立金額」です。

収益率や収益額がどうなろうと、「年金積立金額」さえ減っていなければ、「出て行くお金より、入ってくるお金の方が多い」となり、維持していけるからです。

平成18年度を見ると、収益率が3.10%(約4.6兆円のプラス)だったにもかかわらず、「年金積立金額」は約1兆円も減っています。

この運用状況を見ても、やはり調整は避けられないと言えるでしょう。

●個人の損得で考えると

「払った保険料より、もらえる年金額の方が少ない」といった話があります。

一般的に言えば「もらえる年金額の方が多い」ので、こうした主張は間違いとも言えます。

もちろん、年金がもらえる頃に死んでしまったら、やはり「払い損」となります。

考えてみれば、「払った保険料より、もらえる年金額の方が多い」のは当たり前の話です。

だって、銀行に普通預金で預けていても、いくらかの利子がついて、元金より多くなって返ってくるのですから。。

単純に金銭の損得だけを考えれば、

・保険料を払わないで、その分を自分(民間)で運用する。
・運用に失敗したら、生活保護を受ける。

となるでしょう。

●年金で使えるお金は減っていく

基礎年金国庫負担の見通しでわかるように、国の負担額は増えていきます。

しかし、財政のしくみがわかる本、電子政府の問題点もお金の流れを追えばわかるでも触れたように、国の支出を見ると「国債費(借金の利息払い)」が増え、「社会保障費(年金の他に、医療や介護を含む)」も増えていくため、そうそう年金ばかりに税金を投入していられません。

つまり、「年金制度」を単体で見る限りでは破綻はなさそうですが、「日本政府の財政」や「社会保障費」というもっと大きなくくりで見ると、年金制度はかなり危ういかもしれません。

●知りたいのは「いくらもらえるか」

さて、日本政府が破綻でもしない限りは、年金制度も破綻しないことはわかりましたが、それで国民が安心できるわけではありません。

国民が知りたいのは、やはり「いくらもらえるか」ではないでしょうか。

平成21年度の年金額は、次の通りです。

国民年金(老齢基礎年金:1人分) 66,008円
国民年金(老齢基礎年金:夫婦2人分)132,016円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)232,592円

この金額を見て、特に国民年金だけの国民は「これでは、やっていけない」と思うでしょう。

「この年金額なら、生活保護を受けた方が良い」という人がいても、その通りとしか言いようがありません。

しかも、上記の額は、保険料を満額納めた優等生がもらえる金額で、将来的にはさらに減っていくことが予想されます。

●年金の未来は、国民の覚悟次第

今のように、国民が政府を信頼できず、消費税10%にさえ反対するようであれば、公的年金だけで国民が安心できるようにはならないでしょう。

確かに、税金や保険料を増やしても、そのお金を政府が適切に使ってくれると思えなければ、国民が反対するのも無理はないと思います。

日本が、「高負担・高福祉」を選ぶのか、「中福祉・中負担(?)」を選ぶのか、「低福祉・低負担&自己責任」を選ぶのか。。

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『どの方向へ進んでも困らないように、勉強し準備しておくこと

今の日本に必要なのは、「国民の覚悟と決断」かな

“年金制度は破綻するのか、知りたいのは「いくらもらえるか」” に2件のコメントがあります

  1. 「『未納が増えると年金が破綻する』って誰が言った?」
    物事を「素直」に見ることと「深く」見ることは矛盾しない 「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? 世界一わかりやすい経済の本 (扶桑社新書)細野 真宏扶桑社 2009-02売り上げランキング : 125おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 昨今のメディアに…

  2. ありがとうございます
     とてもすばらしい分析で、勉強になりました。これからも期待しております。ありがとうございます。

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