クラウドに踊らされないために、日米政府の比較でわかるWeb2.0とクラウドへの理解度

米国政府の初代CIO、Web2.0とクラウドの活用を推進 : [e・Gov]電子行政/電子政策 – Computerworld.jp

米国政府のCIOが、Web2.0とクラウドの活用していく意向を表明したそうです。

●民間サービスを有効に活用し連携していく

米国では、コストの安さや導入の容易さに期待が集まり、すでにいくつかの政府機関において、SaaSの導入事例が出てきています。

関連記事>>SaaS/クラウドに目を向けつつある米国政府機関

政府CIOのクンドラ氏が提唱するプロジェクトの1つが「data.gov」

政府の保持する情報を、オープン・フォーマットやアプリケーション開発に利用しやすい形で公開するもので、「情報の民主化」と語っているとのこと。

政府が保有する情報の公開については、作者が何度も提言してきたことで、今後の電子政府に欠かせない取組みと思います。

米国政府は、民間で既に展開されているWeb2.0やクラウドを、いかに政府サービスと連携させ、お互いに活性化させていくか。といった考えが見て取れます。

●自前で作りたがる日本政府と電子政府ベンダー

これに対して、日本政府はどうなっているかと言えば、かなり心配と言いますか、危険な状況です。

なぜなら、何を勘違いしたのか「政府専用のプラットフォームやらクラウド」を、自前で構築・維持しようとしているからです。

日本の電子政府ベンダーや外郭団体は、これまで政府のインフラ、つまり「プラットフォーム」みたいなものを構築し囲い込むことで、がっぽり稼いできました

ところが、SaaSみたいなものが出てくると、今までのようにがっぽり稼ぐことが難しくなり、肥大化した彼らにとっては「小銭ビジネス」にしかなり得ません。

となると、アプリケーションよりは、その基盤となっている「プラットフォーム」や「クラウド」を手がけた方が儲かるはず。と考えるのも無理はありません。

技術経営の分野では、文字通り「プラットフォーム戦略」と言われ、一般的なものです。

参考>>SaaS、PaaS、クラウド・コンピューティングの関係(小池良次氏による整理)

●地域情報プラットフォームと霞が関クラウド

日本政府の具体的な取組みは、次の二つです。

一つ目が、総務省が提唱し、APPLIC(財団法人 全国地域情報化推進協会)と主要の電子政府ベンダーによって構築されている「地域情報プラットフォーム」です。

これが、自治体用のプラットフォームとなります。

関連記事>>オープンソースで地域情報プラットフォームに準拠した自治体IT基盤を:ITpro

二つ目が、「霞が関クラウド」

最近、「ICTビジョン懇談会」緊急提言(ICTニューディール)の流れを受け、「デジタル日本創生プロジェクト(ICT鳩山プラン)骨子」が発表されました。

この中の「革新的電子政府の構築」の一環として、中央省庁用の「霞が関クラウド」が提唱されているのです。

関連記事>>総務省のICTビジョン懇談会が中間報告案,霞が関クラウドやデジタルシルクロード構想を盛り込む:ITpro

●まずは民間サービスを使いこなせ

しかしながら、今の段階で、政府が急いで自前のクラウドやプラットフォームを作る必要はありません。

今ある民間のプラットフォームを使えば良いし、現に使っています

もし政府が自前で作ったりしたら、構築・維持の費用や手間が「負の遺産」となって、次世代の国民に押し付けられることになるでしょう。

民間であれば、サービスの質は良いし、メンテナンスの費用もかかりません。

関連>>基幹系を捨てる日 ~エンタープライズ・クラウドの幕開け:ITpro

行政が保有するデータは、すでに政府の手から離れています。

電子政府インフラは、政府ではなく外郭団体の手にあります。

自治体がオンライン申請などで利用するデータセンターは、民間で運営されています。

住民のデータも、システム開発のベンダーの手にあり、彼らの下請業者から漏洩したりします。

「海外のサーバに日本政府のデータを置くのは危ない」といった主張が通じるのは、政府が保有する情報のうちほんの一部であり、1%にも満たないでしょう。

クラウドやプラットフォームを行政が自前でもつ必要はありません。

それよりも、しっかりしたリスク管理や緊急時対策・計画を作り、演習しておくことの方が大切です。

関連>>「データセンターの安全・信頼性に係る情報開示指針」の公表及び ASPIC「ASP・SaaS データセンター促進協議会」の設立について

ということで、電子政府がクラウドに踊らされることのないように祈るばかりです

“クラウドに踊らされないために、日米政府の比較でわかるWeb2.0とクラウドへの理解度” に4件のコメントがあります

  1. 横文字、カタカナ表記には眉に唾を
    >ということで、電子政府がクラウドに踊らされることのないように祈るばかりです

     仰せのとおりです。
     その昔、インターネット黎明期にはCALS、CALSで惑わされましたし。
     で、建設CALSなる造語も出てきて、踊らされましたよね。

     少なくとも電子政府としては、クラウドについては慎重なる啓蒙がいるのじゃないか。雲の上の話にしないように。

  2. 懐かしい
    イエモリさん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。

    国土交通省CALS/ECアクションプログラム2008(素案)に関する意見の募集
    http://www.mlit.go.jp/appli/pubcom/kanbo08_pc_000009.html

    と続いていますが、以前よりトーンダウンしたような気がします。。。

    建設や公共工事の調達に電子化は避けられませんが、使われるカタカナ用語はその時代で変わりますね。

    ご指摘のように、クラウドについても慎重なる啓蒙で良いと思います。

    民間でも、セールスフォース、グーグル、マイクロソフトといったところが覇権争いしている最中ですし。

    間違っても「霞ヶ関クラウド」は考え直して欲しいなあ

  3. 理解が深まりました!
    むたさん
    霞が関クラウド検索でこちらにお邪魔しました。本来のクラウドについてわかりやすく、ICT鳩山プランのおかしさが理解できました。ありがとうございます。
    記事の一部、URLを小職のBLOGに記載させてください。

  4. こちらこそ
    darumacompanyさん、こんにちは。
    コメントありがとうございます。

    記事のご利用は、ご自由にどうぞ。

    クラウドについては、政府機関が民間サービスを利用する中で経験を積み勉強しながら、政府全体の最適化計画方針などに組み込んでいくといった形が良いのではと思います。

    いきなり「霞が関クラウド」とか「5000億円で構築」とか、いくらなんでも安易というか急ぎ過ぎですよね。

コメントは停止中です。