ホームドクターと法務ドクター
作者が行政書士の廃業(登録抹消)をしてから、早いもので6年以上が経過した。
ところが、いまだに行政手続や民事法務に関して相談を受けることがある。
というか、少しずつ増えているような気がする。
20代・30代といった若い世代から、90歳を超える高齢者まで、その範囲は広い。
相談内容も
・相続(遺言、登記、税務、遺産分割)
・離婚
・悪質商法の被害
・確定申告
・雇用や業務委託の契約
・起業(事業計画、融資など)
・ローンの返済(整理、借り換えなど)
と、これまた幅広い。
基本的には、行政書士の仕事をしていないことを告げた上で、わかる範囲で質問に回答し、実際の手続が必要な場合は、士業等の専門家を紹介している。
今後、景気の低迷が続き、賃金が低下し、生活スタイルの変化を余儀なくされる人が増えると、ホームドクター(Family Doctor)ならぬ「法務ドクター」、つまりは一般の人が気軽に法務相談できて、かつ問題を解決してくれる人やサービスが必要になるだろう。
ネット上では、すでに[法律相談] 法、納得!どっとこむや無料法律相談ネット:法律相談を無料でなどのサービスがある。公的な団体としては、法テラスもある。
しかし、これでも、まだまだ敷居が高いように思う。
上記のサービスが、実際に問題を解決してくれる可能性は高いとは言えず、迅速性にも欠けるからだ。
例えば、近所の診療所に行けば、たいていは予約無しで診察してくれるだろうし、すぐに回復とまではいかなくても、薬の処方などは行ったその日にしてくれる場合が多いだろう。
法律相談では、そうはいかない。
作者の周囲でも、法律相談に行って、かえって混乱して帰ってくる人がいる。
ビジネスとして考えた場合、士業等の専門家を紹介して、そこから10%でもキックバックを受けるのが、システム化しやすく利益率も高いと言える。
作者の場合、そうしたビジネスはしていないが、士業間でそうした協定を結んでいる場合もある。
しかし、「顧客の視点」から言えば、そうした仲介サービスも、一種の「たらい回し」と言えなくも無い。
より早く安く便利で気軽に利用できる法務サービスがあって良いと思うのだが、様々な規制や既得権益が邪魔をしている現状では、それも難しいかもしれない。
黒澤明監督の『醜聞〈スキャンダル〉』に、「日本では弁護士が足りない」といった内容のセリフがある。
半世紀以上も前の話であるが、いまだにその現状は変わっていないのである。