「国民電子私書箱」構想の課題、まずは100万ユーザーを目指せ
政府が検討する国民電子私書箱が実現すると、「これまで郵送していた役所からの通知が、オンラインで閲覧・保管できるようになる」とされています。
政府の検討では、
『これらの通知に対し電子私書箱(仮称)を導入することで、社会保障分野/公共サービス分野においては年間で約4,600億円のコスト削減が期待される(社会保障分野においては、年間約600億円のコスト削減が期待される)。』
としています。
ところが、この試算は、「電子私書箱の利用率70%と2/3のコスト削減効果」を想定したものです。
70%の分母が明らかではありませんが、8000万から9000万人ぐらいの国民が利用することを想定していると考えて良いでしょう。
この利用率は、とてもじゃありませんが、無理な数字です
関係する数字を見てみましょう。
・住民基本台帳カードの累計交付枚数:約323万枚(2009年2月)
・公的個人認証サービスの電子証明書の累計発行件数:約113万件(2009年3月)
・年金個人情報提供サービスのユーザID・パスワード累積発行件数:約146万(2009年2月)
年金記録問題があれだけ話題になった中で、自分の年金記録がインターネットで確認できるサービスでも、何年もかかって150万人の利用者を集めるのがやっとなのです。
民間サービスも見てみましょう。
電話の利用料金や明細などがオンライン閲覧できるNTT東日本の@ビリングは、150万の加入実績(2009年1月現在)があるそうです。加入実績ですから、「利用者数」はもっと少ないはず。
こうした数字を見ても、電子私書箱の利用率を70%していることが、いかにナンセンスなことかわかります。
●まずは100万ユーザーを目標として、費用対効果を測るべき
これまでの電子政府やオンライン申請の実績を考慮すると、電子私書箱の利用者は、
サービス開始から3年以内に100万人=利用率1%ぐらい
を目指すのが妥当なところと思います。
よって、費用対効果も、100万人の利用者で測るべきです。
100万人の利用者だと、1件あたりの処理コストも上がるため、約4,600億円と試算されるコスト削減額は、10-30億円ぐらいになるでしょう。
政府が試算する「電子私書箱の導入にかかるコスト」は、
・初期整備経費:200-400億円程度
・年間運用経費:数十億円程度
となっています。(恐らくは自治体の負担を含めていない)
作者が責任者であれば、初期整備経費と年間運用経費を少なくとも20-30%は削減するように指示します
利用者数や利用率を増やすことの難しさは、これまでの電子政府プロジェクトでさんざん苦労してきたことであり、海外の電子政府先進国でも同様の苦労があります。
「国民電子私書箱」が学ぶべきは、そうした過去の経験であり、慎重な費用対効果の算出なのです。
ドンブリ勘定だけは止めさせないと、電子政府にとって大きな痛手となることは間違いありません