図表でみる世界の年金―公的年金政策の国際比較 経済協力開発機構,栗林 世 明石書店 このアイテムの詳細を見る

追記（2009年6月25日）
2009年版の調査結果が公開されたので、リンクを張っておきます。
Pensions at a Glance 2009: Retirement-Income Systems in OECD Countries

年金制度は破綻するのか、知りたいのは「いくらもらえるか」でも取り上げた年金制度ですが、本書はOECDの国際比較レポートを日本語訳したものです。

もとネタの報告書は2005年の発表で、データは2002年時点のものです。2年毎に調査されるとのことで、最新版も含めて概要（日本語版あり）をOECDのウェブサイトで閲覧できます。

関連＞＞Pensions at a Glance 2005｜Pensions at a Glance 2007

世界各国の年金、とりわけ日本と同じような高齢化社会を向かえている先進国の事例は、興味深いですね。

日本の年金は、賦課方式（unfunded：次世代への先送り方式）で、基礎年金と確定給付（DB:defined benefit）の組合せとされていますが、実際にはもっと複雑でわかりにくいものとなっています。

●シンプルなのは良いこと

世界の中でも群を抜いてシンプルなのが、ニュージーランドです。

ニュージーの公的年金は、居住調査に基づく定額制で、基礎年金しかありません。

具体的には、20歳以降で10年間の居住歴があれば、65歳から年金をもらうことができます。

保険料の徴収もなく、全て税金でまかなわれています。

●日本と比べると、その差は歴然

2002年時点の給付額は、一人暮らしの単身者で、週あたり288ニュージーランドドル。

現在の為替レート（約56円）で計算しても、日本円にして16128円。月額で67000円ほどです。

これに対して日本では、平成２１年度での国民年金（老齢基礎年金：１人分）が ６６，００８円。これは、保険料を満額支払った場合にもらえる給付額です。

ニュージーランドでは、10年以上住んでいるだけで67000円もらえるのに、日本では少ない収入から一生懸命やり繰りして保険料を40年以上も払い続けないと66000円もらえないという事実。

社会保険料の徴収や支払い記録の管理には、莫大なコストが発生しますが、ニュージランドには、そうしたコストは発生しません。税金と社会保険料を別々に徴収しているより、統合した方が安上がりなのは言うまでもありません。

●金額よりも、将来設計を立てやすいことが大切

雇用問題においても、給与が高いことより、キャリアパスといった将来の見通しを立てやすいことが、より強いインセンティブになることが認識されています。

年金制度で、国民から信頼されていない政府が、「将来にわたって、面倒見ます。」と言っても、誰も信用しない＝保険料を払おうと思わないでしょう。

それよりも、基礎年金として、誰であろうと収入や貯金がいくらであろうと平等に一人月額6万円を払います。後の足りない分は、各人が働くなり貯金するなり資産運用するなりして、確保してください。

他の年金が欲しい人は、民間の個人年金や、各種団体等による職業年金などに入ってくださいと。

これぐらいシンプルな方が、無駄な税金は使われないし、年金記録問題のようなことは起きないはず。

もちろん、事情があって働けない人や貧しい人には、生活保護などの援助をすると。この場合も、月額6万円が保証されていれば、２、３万円の追加支援で足ります。

日本人の給料が下がることは確実なので、それに見合った生活スタイルに移行していくことは避けられません。当然ながら、物価も下がります。ユニクロが盛況なのは、一時的なものではありません。

人間というのは、思っている以上にたくましいものです。

高齢者であろうが若者であろうが、お金が少なくても（さすがにゼロは困りますが）、少ないなりに生活できるよう、色々と知恵を絞って工夫するものです。

というわけで、「月額6万円でも、なんとか生活できるスタイル」というのが模索されるんじゃないかなあ

その一方で、リッチな人は、さらにリッチになるのですが、まあそれはそれ。リッチになりたければ、別の方向での努力や学習が必要となりますので

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