「電子政府ユーザビリティガイドライン(案)」への意見募集、電子政府の無駄遣いを抑止するために

内閣官房IT担当室から、「電子政府ユーザビリティガイドライン(案)」に関するパブリックコメントの募集についてが公開されています。募集期限は、平成21年6月9日(火)17時まで。

ガイドライン案の内容はかなりの優れもので、付属資料も充実しています。

ユーザビリティというと、ウェブサイトのデザインや操作性の向上(いわゆる「使いやすさ」)を実現する技術や手法と思われがちですが、電子政府の本質を追求する上で欠かせない要素というのが、その実体です。

「使えない・使われない電子申請のユーザビリティを改善し、利用者数を増やす」といったことは、お金や時間がかかる割には、あまり効果を期待できません。

では、何のためにユーザビリティを考えるかと言えば、

・利用者とのコミュニケーション手段を確立し
・自分たちが何をするべきかを知ることで
ホンモノの電子政府に近づくため

です。

ガイドライン案では、ユーザビリティ向上プロセスを、大きく4つの局面に分けています。

1 ユーザビリティ向上の基本方針と目標の設定
2 利用者特性と業務の把握・検討
3 ユーザビリティ向上を実現するための技術検討
4 ユーザインタフェースの検討

そして、1と2を実施することにより、業務全体の見直し(BPR)につながる改善策が立案され、

3の実施の前に、2の局面で業務全体の見直し(BPR)を行うことが極めて重要である、と指摘しています。

つまり、「中身を変えないで、見栄えだけを良くしてもダメ」ということです。

また、企画、設計・開発、運用、評価といったあらゆる段階において、ユーザビリティをチェックしていくことも大切です。

ユーザビリティの検討は、一度や二度で終わるものではなく、非常に地道で忍耐の要する継続的な取り組みなのです。

しかし、ガイドライン案を真面目に実施すれば、ユーザビリティは電子政府にとって強力な武器となります。

少なくとも「こりゃ使われないでしょ」と思われるサービスは、運用開始とならないはず。

なぜなら、かなり初期の段階でボツになるか、別のサービスに生まれ変わるからです。

電子政府のユーザビリティを検討する仕組みは、電子政府への無駄な税金投入を防止・抑止する仕組みでもあります。

作者が、「日本の電子政府には、ユーザビリティとマーケティングが必要」と言い続けてきたのも、電子政府への無駄遣いを止めて、より効率・効果的な税金の使い方を考えて欲しかったからです。

PDCAを効果的に回していくためには、ユーザビリティが必須です。

電子政府の評価も、ユーザビリティという強い味方を持つことで、格段にその精度を増すことになるでしょう。