社会基盤としての国民IDに関する国民意識調査、日本と韓国の比較からわかる意識の違い
NPO法人のEABuS(東アジア国際ビジネス支援センター)が、『社会基盤としての国民IDに関する国民意識調査』を実施し、調査結果の概要(PDF)を公開しています。
関連>>必要性は理解しているが情報保護に不安—個人IDに関する意識調査より:ITpro
国民IDについては、国民を交えて、きちんと議論して欲しいと主張してきました。
関連ブログ>>社会保障カードの導入は、国民IDの議論が終わってからにして欲しい|社会保障カードから読み解く、国民ID構想の全体像
今回のような調査をきっかけとして、国民の関心が高まり、国民による参加と監視の中で、国民IDの議論が行われるようになると良いですね。
●調査結果の結論は
詳しい調査結果は、上記の報告書概要や関連記事を参照してもらうとして、ここでは『結論』とされている部分をまとめておきましょう。
・日本においても、個人情報の複合的利用による新しい官民サービスへの期待と、そのために統一個人番号が必要であるとする意識が高い。
・実現のためには、統一個人コードの具体的な体系、情報セキュリティおよび透明性の高い管理体制に対する解決策が求められている。
・韓国では、住民登録番号制度が社会基盤の上で定着している。
・韓国の住民登録番号は、民間利用への開放と同時に、韓国国民の強い監視下に置くことで、信頼性を高めている。
・日本での統一個人IDの議論でも、国民の監視に耐えうる高い透明性が求められる。
・統一個人IDを活用したモデル・サービスとして、医療・保険分野、救急・防災分野へのの適用が考えられる。
・統一個人IDの信頼性を担保する政策的な仕組み作りが重要である。
・日本では、統一個人ID制度の導入に関しては、議論すること自体がタブー視されてきた。
・日本では、統一個人ID制度の導入に関して、国民的なコンセンサス(意見の一致)が醸造されていない。
・国民向けサービスの向上を前提とした、社会基盤としての統一個人ID導入について、真摯なビジョンの提示と国民的論議が必要な時期に来ている。
●国民の関心と意識改革が必要
作者の国民ID導入に対する考え方も、上記の結論と多く一致します。
国民ID導入については、その目的と使命を明言した上で、国民を交えた議論を行い、国民に導入の有無を問うことが必要ということです。
そこで心配なのは、やはり国民の意識でしょうか。
韓国の住民登録番号が、韓国国民の強い監視下に置かれながら活用されているのも、国民の高い関心と意識があればこそです。
韓国では、ほんの数十年前まで、軍事政権による言論統制が行われていたわけですから、政府に対する国民の警戒感が高いのも納得です。
他方、日本国民は、年金記録問題に見るように「お上任せ、お上頼り」の傾向が強く、とてもじゃありませんが、きちんと政府を監視できるとは思えません。
これが、例えば、自分の住む街に廃棄物処理施設を作るとか、もっと身近で具体的な話になれば、「当事者」「住民」としての意識が高まり、積極的に参加・監視するでしょう。
しかし、国民IDのような社会基盤となると、いまいち現実感に欠けるため、関心が高まらない、あるいは無知から来る恐怖や感情的な反応で終わってしまいます。
ではどうすれば良いかと言えば、政府が国民に対して積極的な情報開示をしながら、時間をかけて議論していくしか無いと思います。
その意味で言えば、今の日本が、国民IDを導入する時期でないことは確かです。
これからスタート地点に立てるかどうか。そんな時期なのだと思います。