i-Japan戦略2015を読み解く(4)、具体的な数値目標やスケジュールはこれから
i-Japan戦略2015を読み解く(3)、「国民電子私書箱」の一人歩きに注意の続きです。
今回は、電子政府・電子自治体分野における方策を見てみましょう。
「方策」と言っても、目的、手段、計画、予定、検討事案などが混合しているため、ちょっとわかりにくいです。いちおう、
(1)情報公開、評価・分析、改善など
(2)業務改革、システム統合・連携・共同利用、電子化・デジタル化など
(3)国民電子私書箱、社会保障番号・カード、バックオフィス連携など
(4)電子政府推進の体制強化、法制度の整備など
の4つに分けておきました。
これまでの戦略と比べると「いつまでに」といった記述や具体的な数値の明示が少なくなっているようです。
これは、政局が不安定な時期であることに加えて、「オンライン利用率50%」といった数字が一人歩きしてしまったことへの反省があるかもしれません。
内容を見ると、すでに実施されているものも多く、あまり変わり映えしないとも言えますが、政府や策定者の強い意志を感じる部分もあります。
より詳しい内容については、2009年秋頃に策定する「具体的な目標と工程を明らかにした計画」を待つことになります。
(1)情報公開、評価・分析、改善など
・これまでの取組みについて、成功要因と阻害要因を究明する
・具体的な目標と工程を明らかにした計画を策定する(2009年秋)
・行政の質の改革について、明確で客観的な評価基準を設定する
・PDCAサイクルを制度化する
・不断の見直し・改善を行い、その結果を毎年度公表する
・利用頻度が高い重点71手続の利用者満足度を高める
・重点71手続の業務改革に取り組む
・関係機関の連携を強化する
・評価結果や改善措置を踏まえて、計画を見直し、予算に反映させる
・有用な行政情報を電子化し、国民が利活用できるよう公開する
(2)業務改革、システム統合・連携・共同利用、電子化・デジタル化など
・業務改革としての業務・システム最適化を徹底する
・行政情報システムの全体最適化を推進する
・電子政府・電子自治体クラウドを構築する
・行政情報システムの共同利用や統合・集約化を進める
・国と地方の既存ネットワークを活用する
・地域情報プラットフォームを活用する
・国と地方が連携する基盤システムを整備する
・行政オフィスの業務プロセスを徹底して見直す
・紙中心の事務処理から、電子中心の事務処理へと見直す
・行政事務の電子的処理をルール化する
(3)国民電子私書箱、社会保障番号・カード、バックオフィス連携など
・国民電子私書箱(行政サービスの専用口座)を整備する(2013年度まで)
・国民電子私書箱の基本構想を決定する(2009年度中)
・国民電子私書箱には、地方公共団体の意向を十分に反映する
・社会保障番号・カードを早期に導入する
・国民電子私書箱と社会保障番号・カードは、一体的に検討する
・国民電子私書箱には、本人によるコントロールを保障する
・住基ネット等の既存のインフラを有効活用する
・行政機関内の各システムにおける既存の企業コードをひも付けする
・国民・企業等が相互連携させるべきデータの種類や範囲を明らかにする
・共有される行政情報の提出要求を禁止する(住民票の提出など)
・アクセス手段の技術的方式について、複数の方式を選択可能とする
・行政データベース間のデータ連携を容易にするよう構築する
・第三者機関等が、システム全体の運用・管理を監視することを検討する
・第三者機関等が、個人情報保護の措置をとれるよう検討する
・国・地方行政の総合ポータル機能について、具体化する
・行政情報共同利用支援センター(仮称)の構築・運営について、具体化する
・国民が国民電子私書箱の利便性を実感できるようにする
・国民電子私書箱を導入・普及させる、民間部門へのインセンティブを導入する
(4)電子政府推進の体制強化、法制度の整備など
・電子政府と行政改革を担う政府CIOを任命する
・政府CIOに、予算の調整や配分等の権限と与える
・政府CIOの権限を実行する組織を整備する
・政府CIOは、府省共通の課題について、各府省CIOを統括する
・政府CIOを補佐する専門家を配置し、スタッフを充実する
・既存関係部局の統廃合を進め、推進体制を充実強化する
・政府CIOは、地方公共団体のCIO等との十分な意思疎通を行う
・各府省CIOを、電子政府プロジェクトの専担的な実施責任者とする
・各府省CIOは、組織の業務改革、情報資源の戦略的マネジメント・投資管理を行う
・各府省CIOの活動・成果を、人事上の評価に適切に反映させる
・情報システムと業務の両面から、各府省CIOを支援する体制を整える
・電子政府の取組・評価、業務改革は、各府省CIOの下で一体的に行う
・各府省が能動的に情報セキュリティ対策に取り組む体制を整備する
・業務プロセスの見直し結果を踏まえて、関連法令を見直す
・電子政府・電子自治体の推進に必要な基本法制度を、早期に整備する
次回は、作者が重要と考える、いくつかのポイントを指摘してみたいと思います。