i-Japan戦略2015を読み解く(6)、これからの電子政府を考える

本シリーズの最後として、ひとつ問題提起をしておきましょう。

●電子政府の方向性を考える

これからの電子政府・電子行政サービスとして、選択肢は二つあります。

1 サービスの現状維持と緩やかな改善
2 サービスの抜本的改革

「現状維持」は、わりと気楽です。何と言っても、あまりお金がかかりません。

今のまま縦割り行政で良いので、必要なときだけ、今のやり方で連携すれば良いのです。

もちろん、新たな情報システム構築も必要ありません。

組織内で業務フローを見直せば、ある程度のサービス改善もできるでしょう。

システム更改時には、より安価な方法へ移行することも可能です。

人件費の抑制によるコスト削減も良いでしょう。

お金ばかりがかかって効果の無いIT投資が抑制されるので、面倒な費用対効果を考える必要もなくなります。

お金が無いことによって、お金をかけなくてもできることを考えるようになり、アイデアや工夫が生まれやすくなるでしょう。

これに対して、「抜本的改革」は、かなり大変です。

抵抗勢力がある中で、仕事のやり方だけでなく、仕事のあり方や公務員のあり方まで見直す必要があります。コスト高の元凶である外郭団体の排除も必要です。

「国民電子私書箱」や「行政情報共同利用支援センター」、さらには「霞が関クラウド」と、新しい情報システムが次々に構築されていきます。

お金は、いくらあっても足りません。。。

ちょっと両極端な選択肢ですが、それほど的外れな分類ではないと思います。

さて、あなただったら、どちらを選ぶでしょうか。

作者の選択は、意外かもしれませんが、「サービスの現状維持と緩やかな改善」です。

なぜなら、「便利な電子政府」や「サービスの抜本的改革」の名の下に、税金の無駄遣いが進んでいるからです。

これまで莫大な税金を使って、電子政府を構築してきましたが、家族や友人に対して「こんなに良くなったよ」とか「これは、すごいサービスでしょ」と誇れるものは、ほとんどありません。

また、作者自身が仕事を抜きにして「使いたいから使っている」という電子政府・電子自治体サービスは、2つか3つぐらいです。

電子政府に関与する者として、これほど恥ずかしいことはありません。自らの無力さを感じるばかりです。

そうした思いから、当面は、縦割りの行政サービスで良いから、お金をかけず、新たなシステム構築を必要としない方法で、各サービス業務の徹底的な見直し・簡素化・効率化を進めることに集中するべきだと考えています。

その上で、一定のサービス・業務水準になったものを連携する。あるいは、オンラインサービスとして提供する。というのが良いでしょう。

仕事のあり方や公務員のあり方、コスト高の元凶である外郭団体の排除などは、政治的判断を待ち、時機を見計らって実行することになります。

現在、政府は「国民電子私書箱」「行政情報共同利用支援センター」「霞が関クラウド」などを構築しようとしています。もはや国民には、こうした新たなシステムが何をするものなのかも、本当に必要なのかどうかも判断できません。

本ブログで書いてきましたが、上記のようなシステムを構築しなくても、同様の効果を上げることは可能です。もちろん、ずっと安価に済ませることができますし、リスクも格段に低くなります。

これまで急ピッチで進めてきた電子政府だからこそ、立ち止まり、しばらくを充電期間として、じっくり考えてみるもの悪くないでしょう