政権交代で電子政府は変わるのか、民主党に期待すること
今回は、政権交代を期待されている民主党のマニュフェストから、今後の電子政府を探ってみたいと思います。
電子政府に直接関係のある政策としては、次の二つがあります。
★電子投票制度の導入
地方選挙においてのみ実施可能となっているタッチパネルの電子投票機等を用いて投票する電子投票制度を、国政選挙にも導入することを目指します。電子投票には選挙事務の効率化、選挙結果の公表の迅速化といったメリットがある一方で、投票データの改ざんや機器の不具合への懸念も示されています。そのため、導入に際しては、不正・事故防止のための措置を設けることを選挙管理委員会等に義務付けるなど必要な対策を合わせて講じます。
★インターネット選挙運動解禁
政策本位の選挙・カネのかからない選挙の実現、候補者と有権者との対話促進などを目的として、インターネット選挙運動を解禁します。民主党が2006年の164回通常国会に提出した「インターネット選挙運動解禁法案」を成立させ、政党や候補者に加え、第三者もホームページ・ブログ・メール等インターネットのあらゆる形態を使って選挙運動ができるようにします。インターネット導入に伴って予想される不正行為に対しては、①誹謗・中傷を抑制するためにホームページ等を使って選挙運動をする者の氏名・メールアドレスの表示を義務付ける②「なりすまし」に対する罰則を設ける――など、きめ細かな対応策を講じます。
国民の政治参加を促す政策は、大いに歓迎されるものです。その手段として、情報機器やインターネットを活用することは、電子政府本来の姿でもあります。
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電子政府と直接の関係はありませんが、非常に重要な政策も二つあります。
★税・社会保障共通の番号の導入
厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するためには、真に支援の必要な人を政府が的確に把握し、その人に合った必要な支援を適時・適切に提供すると同時に、不要あるいは過度な社会保障の給付を回避することが求められます。このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入します。
★「年金通帳」で「消えない年金」
いわゆる「消えた年金」「消された年金」問題への対応を国家プロジェクトと位置付け、2年間集中的に取り組みます。記録問題の被害者に一刻も早く補償し、年金記録問題の再発防止と年金制度に対する信頼の回復を図るため、以下の政策を実行します。①年金記録が間違っている可能性の高い方については、証拠収集等を簡略化し、一定の基準の下で記録を訂正する「一括補償」を実施する②納付した証拠のない方の記録を積極的に回復するため、「年金記録回復促進法案(仮称)」の成立を図り、事務局体制強化や判断基準の見直しを行う③記録訂正後の年金額が支払われるまでの期間を短縮するため、事務処理体制を見直す④コンピューター上の年金記録と紙台帳の記録の全件照合を速やかに開始し、コンピューター上の記録の訂正・統合を行う⑤厚生年金記録の改ざん等、記録問題の実態解明に必要な調査を実施し、被害者の確定と補償を行う⑥すべての加入者に「年金通帳」を交付し、いつでも自分の年金記録(標準報酬月額を含む)を確認できるようにする。
i-Japan戦略2015を読み解く(6)、これからの電子政府を考えるで解説したように、現在の電子政府は、構造改革を行わないままに、複雑で巨大なシステムを構築する方向にあります。その背景には、雇用対策の名の下に、大手の電子政府ベンダーにバラマキとも言える大盤振る舞いを進める政府の方針もあります。
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しかし、「税・社会保障共通の番号」や「年金通帳」が導入されることになると、旧制度を前提とする大規模システムの構築にストップがかかるでしょう。
●電子政府の「負の遺産」を清算する
作者が民主党に期待することは、電子政府に関する新しい施策、特に大規模なシステム構築の停止です。
そして、これまでの電子政府施策を総括し、積み上げてきた電子政府の負の遺産たち(公的個人認証や住基カード、使われていない電子申請など)を清算して欲しいのです。
じっくりと行政改革、政治改革、地方分権改革、公務員改革、税制改革、社会保障改革などに取り組んでもらい、改革を支援する手段として電子政府を活用する。あるいは、改革後の制度を支える基盤として電子政府を活用する、としてもらいたいのです。
どこまで改革が実現されるかわかりませんが、この機会を逃してしまうと、変な方向へ行こうとしている電子政府を止めることは、ますます難しくなるでしょう。