「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」中間取りまとめ、霞ヶ関解体を視野に入れよう

総務省から、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」中間取りまとめ:政府情報システム整備のグランドデザインが公開されています。

本研究会の目的は、

・クラウド・コンピューティング等の最新の技術を活用し
・政府情報システムの更なる全体最適化を推進すべく
・「霞が関クラウド(仮称)」構想の具体化に向け
・その在るべき将来像を明らかにする

しかし、政府の戦略では、十分な検討をすることもなしに、いきなり霞が関クラウド(仮称)を含む「電子政府・電子自治体クラウド」を構築することが、決定されてしまいました。

では、「電子政府・電子自治体クラウド」とは何なのかと尋ねても、誰も答えられません。

こうした一方的で拙速なやり方は、電子政府にとって、好ましいものではありません。

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公開された中間取りまとめを見ると、2015年に「政府共通プラットフォーム」を稼動させる予定になっています。

「業務・システム最適化」で構築されてきた「共同利用システム基盤」が、十分な効果を発揮しないまま、更なる統合・共有化である「政府共通プラットフォーム」へ発展させるようです。

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こうした取組みは、一見すると合理的ですが、「行政の縦割り」といった本質的な問題の解決には、ほとんど役に立ちません。

実際、これまでの電子政府施策や「業務・システム最適化」により、「行政の縦割り」がなくなったとか、組織間の連携により高度な行政サービスを実現できたといった話を聞いたことがありません。

結論から言えば、こうした本質的な問題の解決を期待できない「政府共通プラットフォーム」を作ってはいけないのです。

●霞ヶ関解体を視野に入れたグランドデザインを描け

作者であれば、政府情報システムの整備を次のように進めるでしょう。

1 国(旧霞ヶ関)の「業務の棚卸し」を行う
2 国でしかできないものを除き、地方自治体へ権限委譲する
3 残った業務のうち、共通業務は民間へアウトソースする
4 予算も人員も減ったコンパクトな「新霞ヶ関」に最適の情報システムを整備する
5 上記を実現するために必要なルールを整備する

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今回政府から提示された「政府情報システム整備のグランドデザイン」は、現行の霞ヶ関を全面的に肯定したものであり、これでは権益確保の既定路線と言われても仕方が無いでしょう。

●今後の政府情報システムを占う

クラウドでは、パブリック型が普及する中で、プライベート型やハイブリッド型への移行が提案されています。

将来的には、各種タイプのクラウドを使い分けると共に、業務自体の民間アウトソースも行いながら、より安価で効率的な方法を選択していくことになるでしょう。個人の仕事のやり方まで変わってくれば、クラウドタイプの分類も意味が無いものとなるかもしれません。

もちろん、どのクラウドサービスも、一定レベル以上の安定性や安全性が求められ、利用する側もデータマネジメントや事業継続計画を確立しておく必要があります。

この流れは、政府の情報システムでも、あまり変わらないと思います。

現在は、クラウドベースの政府向けアプリケーションは少ないですが、これから増えライブラリ化されていくことでしょう。

自治体は、こうしたライブラリが充実しているプラットフォームを選び、カスタマイズ性や費用などを考慮して使えば良いのです。

いずれにせよ、「定額給付金」のような一度限りの迅速性・効率性が要求されるサービスに対応していくためには、民間サービスを活用する必要があります。

国が作った「電子政府・電子自治体クラウド」が、安価で使いやすいサービスとなる保証は無く、むしろ「また変なもの作って」となる可能性が高いのは、これまでの実績が証明しています。

ですから、自治体は、自らの判断で、より安価で使いやすく、住民や職員の役に立つシステムを選択し使っていけば良いのです。

心配なのは、国の情報システムです。

地方と違って、潤沢な資金があり、さらに経済対策の一環で、電子政府ベンダーへの大盤振る舞いが実施されている現状を考えると、目も当てられない惨状となることは、もはや避けれらないのかもしれません。

なんとか政治的な判断で、電子政府を一時停止した上で、統治形態の改革を見据えたグランドデザインを描いて欲しいと思います。

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