クラウドで現実化する社会実験の環境、今後の日本に必要な試行錯誤
アクセンチュアの程氏が、「キーワードは伸縮自在、クラウドの課題は5年単位で改善される – 編集長インタビュー:ITpro」で「実験」という言葉を使っていました。
『だから短期的には、“実験”の時だと思っている。実験というと誤解を招くかもしれないが、要するに、明確な目標を設定した小規模なプロジェクトという意味だ。』
これは、クラウドに関する記述ですが、今の日本にこそ「明確な目標を設定した小規模なプロジェクト」のような「実験」が必要と思います。
●クラウドで変わる電子政府の開発手法
以前、電子政府サービスにおける開発手法のあり方でも触れましたが、電子政府の情報システムでは次のような手法があります。
1 ウォーターフォール型
2 反復型(アジャイル開発)
3 プロトタイプモデル
4 パッケージ導入
これまでは、プロトタイプモデルと言えば、開発期間も長く、金額規模も大きい案件でないと難しいとされてきました。そのため、それを補完する「ペーパー・プロトタイピング」などが実施されたりします。
ところが、クラウドの登場によって、プロトタイプモデルのイメージも変わってきました。
有名な事例としては、甲府市におけるsalesforce.comの導入事例(定額給付金システム)があります。
この事例では、「担当者が目の前でどんどんとこちらの要望に沿ってカスタマイズしていき、仕様を伝えた3日後にはプロトタイプができあがった」とのこと。
優れたPaaSがあれば、実際に動くシステムが短期間でできてしまうのですね。「ペーパー・プロトタイピング」より早くて安いかもしれません。
●初期・挑戦コストの低下で、再チャレンジが可能に
電子政府に限らず、政府による「(実証)実験」と言えば、「特定産業や地域へのバラマキ」といった印象が強く、何億・何十億円ものお金が、適切な監視や評価のないままに使われてきたと言われても反論できないでしょう。
しかし、今後の日本には、他の国が経験していないスピードで高齢化が進み、財政状況や人口動態を考えると、北欧型の「高福祉高負担」社会へ移行することも難しいとされています。
その一方で、日本以上のスピードで高齢化が進んでいる国もあり、日本がそれらの国の手本となり得る可能性もあります。
個人的には、
・財源を税金に頼らず
・民間(企業、市民)や海外から資金や労働力やアイデアを集め
・各地域に必要なインフラ整備や
・社会実験を行っていき
・市民や企業も積極的に参加していく
といった試みが必要と思います。
市民の参加形態には、次のようなものが考えられるでしょう。
・資金の提供(低額な寄付など)
・労働力の提供(ボランティアなど)
・アイデアや専門知識の提供(法律、金融、マーケティングなど)
・投票、審査、評価への協力
・サービス等の利用
こうした社会実験を支援するのが、今後のクラウドに期待される役割だと思います。
「個人支援ツール」や「ビジネス支援ツール」としてだけでなく、「社会支援ツール」としての役割です。
電子政府におけるクラウドと共通番号制度、その背景「縦割りの解消」を理解しようで
(3)個人の生産性が向上し、初期・挑戦コストが劇的に下がる
(4)チャレンジが増え、何度でも再チャレンジできる
(5)新しいサービス、価値、イノベーションが生まれる
と指摘しましたが、こうした流れを今の日本は大いに活用するべきだと思います。
これからの「実験」は、
・「特定産業や地域へのバラマキ」ではなく
・税金以外の財源で
・多種多様なテーマや事業を
・身の丈にあった規模で
・たくさんやってみる。
・テーマや事業は政府が決めるのではなく
・参加する市民や企業や教育機関などが決めれば良い。
・実施状況、結果、成果についても
・参加する市民や企業や教育機関などが中心となって評価すれば良い。
・そうした試みが円滑に行われるように
・行政は自分達に何ができるか、何を求められるかを
・真剣に考える必要がある。
そして、その先にある「ストレスや環境変化に強い社会」へ移行し、「たくましい日本」になれるように、作者も色々と試行錯誤していきたいと思います