自治体クラウドの整理:自治体クラウドって、何ですか
自治体クラウドの定義は、大きく分けて2つ(狭義と広義)あると思います。
(1)狭義の自治体クラウド
総務省の自治体クラウドポータルサイトを参考にすると、次のように定義できます。
・クラウドコンピューティングを電子自治体の基盤構築にも活用していくという考えで
・総合行政ネットワーク(LGWAN)に接続された
・都道府県域データセンターとASP・SaaS事業者のサービスを組み合わせて
・共同利用用途の各種業務システム等の開発実証を行い
・地方公共団体が当該業務システムを低廉かつ効率的に利用できる環境の整備を推進していく
・この利用環境のことを「自治体クラウド」と呼ぶ
基本的には、LGWANでシステムの共同利用を行う、いわゆる「プライベート・クラウド(地方自治体専用の独自クラウド)」、あるいは「コミュニティ・クラウド(複数の自治体が集まって利用するクラウド)」と理解して良いでしょう。
狭義の自治体クラウドでは、LASDECが策定し提示する「自治体クラウド開発実証に係る標準仕様書」に従うことになります。
自治体クラウドは、これまで総務省が進めてきた共同アウトソーシングや地域情報プラットフォームなどの延長線上にある施策と位置づけられています。
「約1800の自治体ごとに作って利用してきた情報システムを、少しでも共通化・標準化して、みんなで共同利用していくことで、コストも減らしつつ、自治体間で連携した住民サービスを実現できるようにしましょう」ということです。
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なお、自治体クラウドの標準仕様書は改定されていくので、自治体クラウドの定義も変化していく可能性があります。
例えば、現在はLGWANへの接続を前提としていますが、LGWAN自体が古いネットワークシステムなので、今後は別のネットワークが活用されるかもしれません。
電気通信政策の推進では、ブロードバンド・オープンモデル実証実験を実施していますが、このモデルでは、LGWANに限定せず「広域イーサネット、IP-VPN等」としています。
(2)広義の自治体クラウド
広義の自治体クラウドは、「自治体が利用できる各種クラウドサービス」です。
実際、自治体の選択肢は、
・国内ベンダーによるクラウドサービス
・国外ベンダーによるクラウドサービス
・先進自治体によるクラウドサービス
・自治体クラウド(狭義)のサービス
と様々です。政府専用もあれば、民間と共同利用する場合もあります。お金があれば独自に構築することできますし、複数の自治体が集まって構築することも可能です。
民間クラウドの活用事例としては、山梨県甲府市の定額給付金支給管理システム(Salesforce over VPN)などがあります。定額給付金支給管理システムは、他の自治体も利用できるようにライブラリ化されています。
いずれにしても、クラウド自体が未成熟の分野であり、民間企業でも試行錯誤しながら導入を進めている状況です。
各自治体は、「地方公共団体におけるASP・SaaS導入活用ガイドライン」、2011年以降に策定される「電子自治体最適化計画」や「調達基準」などを参考にしながら、各地域の実情に即したタイミングと方法で、クラウドを活用していくと良いでしょう。