自治体クラウドの整理:自治体クラウドの推進体制は

自治体クラウドは、総務省の地域力創造グループ地域情報政策室が中心となって進めていますが、より大きな枠組みの推進体制が整っています。

参考>>自治体クラウド推進本部の設置と今後の取組み(PDF)

推進体制の概要は、次の通りです。自治体や民間との連携は見られるものの、基本的には総務省が中心で他省庁との連携が無いのが心配です。

自治体クラウド推進本部:政治的な判断を含む最終的な決定機関
有識者懇談会:全体的・専門的見地から課題等を検討
幹事会:総務省内の調整が中心か?
検討プロジェクトチームと研究会:個別具体的な作業を行う部隊

(1)自治体クラウド推進本部

IT戦略本部や企画委員会(PDF)による政府全体の方向性の決定等を除くと、自治体クラウドについては「自治体クラウド推進本部」に決定権があるようです。その構成は次の通りです。

本部長:総務大臣
副本部長:総務副大臣、総務大臣政務官、内閣総理大臣補佐官
本部員:事務次官、総務審議官、地域力創造審議官、官房長、行政管理局長、自治行政局長、自治財政局長、自治税務局長、情報通信国際戦略局長、総合通信基盤局長、政策統括官(情報通信担当)、消防庁次長

自治体クラウドの推進に熱心だった原口総務大臣が片山総務大臣に変わったことで、その影響が心配されましたが、「自治体クラウドを積極的に推進していく」という方向性は維持されているようです。

(2)有識者懇談会

有識者懇談会は、自治体クラウド推進本部の下に置かれています。「総務省が書いたシナリオを有識者懇談会で検討していく」と理解して良いでしょう。検討事項は、次の通りです。

(1)地方自治体業務用ネットワークに求められる要件等の検討
(2)地方自治体業務用ネットワークの高度化の推進のために必要な方策の検討、実施
(3)地方自治体業務用システムの共同利用を通じた業務の見直しや標準化の推進のために必要な方策の検討、実施
(4)自治体クラウドの円滑な展開を促進する観点から必要となる財政措置等の検討
(5)その他、住民本位の電子自治体を確立するために必要な方策の検討、実施

ネットワーク、共同利用、業務の見直し、標準化、財政措置、住民本位の電子自治体というキーワードから、ネットワークと共同利用に重点が置かれているようにも見えます。

有識者懇談会は、大学教授、自治体職員、弁護士などで構成されており、バランスは悪くないと思います。メンバーは下記の通りです。

遠藤健司 長井市企画調整課長
尾家祐二 九州工業大学教授
大山永昭 東京工業大学教授
岡村久道 英知法律事務所所長
佐々木良一 東京電機大学教授
新免國夫 岡山県高度情報化顧問(前岡山中央総合情報公社常務理事)
須藤修 東京大学大学院情報学環教授
辻琢也 一橋大学大学院法学研究科教授
豊田麻子 広島市副市長
原田智京 都府総務部税務課長
山戸康弘 大分県商工労働部情報政策課長

2010年12月10日現在までに3回開催されており、議事次第や配布資料が公開されています。

(3)幹事会

幹事会は、有識者懇談会と同じく、自治体クラウド推進本部の下に置かれています。検討事項も、有識者懇談会と同じです。総務省の課長クラスを中心に構成されています。

顧問:総務副大臣
幹事長:大臣政務官、幹事長代理:地域力創造審議官及び官房審議官(地方行政・電子自治体、選挙担当)
大臣官房企画課長
行政管理局行政情報システム企画課長
自治行政局住民制度課長
地域力創造グループ地域政策課長
地域力創造グループ地域情報政策室長
自治財政局調整課長
自治税務局税務管理官
情報通信国際戦略局情報通信政策課長
情報流通行政局情報流通振興課長
情報流通行政局地域通信振興課地方情報化推進室長
総合通信基盤局電気通信事業部高度通信網振興課長
消防庁総務課長

総務省内の情報共有や調整が、主な役割なのではないでしょうか。

(4)検討プロジェクトチームと研究会

自治体クラウド推進本部の下に、自治体クラウド推進本部事務局等の構成員からなる「検討プロジェクトチーム」が置かれています。構成は、地域力創造グループ地域情報政策室、情報流通行政局地域通信振興課地方情報化推進室、総合通信基盤局電気通信事業部高度通信網振興課などです。検討内容については、適宜、有識者懇談会に報告を行うことになっています。

検討プロジェクトチームは、「自治体業務用ソフトウェア研究会」「自治体業務用ネットワーク研究会」の二つの研究会を設置し、自治体クラウドの円滑な展開に必要となる措置等について意見交換を実施します。

研究会の構成は、
・検討プロジェクトチーム
・地方公共団体
・民間事業者等
となっており、「個別具体的な作業を行う部隊」と理解して良いでしょう。

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本田 雅裕
技術評論社