自治体クラウドの整理:自治体クラウドに関係する団体は

自治体クラウドでは、総務省や参加自治体以外に、次のような団体が関係しています。

(1)(財)地方自治情報センター(LASDEC)

LASDEC(ラスデック)は、総務省の外郭団体で、地方公共団体におけるコンピュータの有効かつ適切な利用の促進を図るため、地方公共団体のコンピュータ専門機関として1970年に創設されました。

会員は、正会員(地方公共団体等)と賛助会員(民間企業等)で構成され、2010年11月1日現在1,589団体となっています。

総合行政ネットワーク(LGWAN)住民基本台帳ネットワークシステムコンビニにおける証明書等の交付など、電子政府・電子自治体に関係する基盤の構築・運営、実証実験等の実施に関与しています。

自治体クラウドでは、標準仕様書の作成自治体クラウド部会の開催、参加自治体費用分担の調整などを行い、これまでの電子自治体施策と同様に中心的な役割を担っています。原口ビジョンⅡでも、「国は所要の予算確保に努める、地方はLASDECを核として取組む」としています。

LASDECが地方公共団体の情報化に一定の貢献を果たしてきたことは確かだと思いますが、自治体情報システム・業務の標準化・共通化、システム間の情報連携等が進まないまま現在に至っています。

今のように、一省庁所管の財団法人に地方公共団体の情報化推進の多くを任せている状況では、地域主権が進む中で、バラバラなシステムやデータの標準化・共通化・情報連携を実現していくことは難しいと思います。

自治体クラウドを本気で実現したいのであれば、
政府CIO体制を確立して
・より強力な政府のリーダーシップの下で
・自治体CIOとの連携を強化しながら
・自治体への財政・技術・人材支援を戦略的に行っていく
必要があるでしょう。

(2)(財)全国地域情報化推進協会(APPLIC)

APPLIC(アプリック)は、地方公共団体の情報システムの抜本的改革や、システム連携基盤(地域情報プラットフォーム)の構築と本格的な普及を推進するとともに、公共アプリケーションの検討・整備、ブロードバンドネットワークの利活用の提案、各種地域情報化推進に関する活動の支援等を行っている団体です。

会員
は、普通・賛助会員(民間企業等)と特別会員(地方公共団体や有識者等)で構成されており、電子政府・電子自治体に関係するITベンダーを中心とした団体と理解して良いでしょう。

自治体クラウドでは、複数の業務アプリ、あるいは自治体クラウド間を連携する基盤として、APPLICが作成した「地域情報プラットフォーム」を活用したい意向があるようです。

総務省とITベンダーが中心となって「地域情報プラットフォーム」を構築したものの、思ったように普及が進まず困っていたところに、自治体クラウド推進の動きが出てきたので「一緒に乗っかって活用してもらおう」といった感じだと思います。

総務省の資料には、次のような記述が見られます。

・地域情報プラットフォームとは、様々なシステム間の連携(電子情報のやりとり等)を可能にするために定めた、各システムが準拠すべき業務面や技術面のルール(標準仕様)
・地方公共団体においては、地域情報プラットフォームを活用したシステム再構築を行うことで、業務・システムの効率化が実現
・自治体クラウドにも地域情報プラットフォームの活用は重要。自治体クラウドと一体になった取組を推進
・自治体クラウドによるコスト圧縮を図りつつ、地域情報プラットフォームを活用したシステム間連携により、住民サービスの向上、業務の効率化が図られ、「住民本位の電子行政」の実現に資する

関連>>地域情報プラットフォームについて(PDF)

(3)総合行政ネットワーク(LGWAN)運営協議会

自治体クラウドは、地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワーク「総合行政ネットワーク(LGWAN)」の利用を前提としています。

このLGWAN(エルジーワン)の最高決定機関とされているのが、総合行政ネットワーク運営協議会で、全都道府県と市町村を代表する運営委員で構成されています。「LGWANは誰のもの?」と考えると、「全ての地方公共団体のもの」が答えになります。

最高決定機関である総合行政ネットワーク運営協議会の決定により、地方自治情報センターがLGWANの運営主体を任せられているわけです。

ですから、自治体クラウドで「今後もLGWANを活用していくのか」といった問題に対して、最終的に答えを出すのは「総合行政ネットワーク運営協議会」、つまりは自治体自身ということになります。

地方自治IT法務大全
藤谷 護人
日経BP出版センター