公的個人認証サービスの普及策、その1:役人が率先して取得し利用する
政府が推進する「公的個人認証サービス」の普及が進まない。政府やシンクタンクとは少し異なる視点で、作者から普及推進策を提案しておこう。
正直なところ、現在の「公的個人認証サービス」では、費用に見合うだけの普及・利用が見込めないので、一旦停止(廃止)して、やり直すのが良いと思っている。
利用者の視点を重視し、民間サービスを上手に活用すれば、コストに見合うだけの利用を期待できるサービスモデルの実現も不可能ではないだろう。
しかし、政府にしてみれば、今までかけたお金や、自治体等に課した負担を考えると、やり直しができないというのが現実であろう。
ただし、本人確認等の方法については、電子証明書・電子署名にこだわらない、時代にあった柔軟な対応が進められることなるだろう。
●10万枚を超えた発行枚数
まず、現在の利用状況であるが、総務省自治行政局自治政策課の提供資料によると、平成17年11月末現在、電子証明書の発行枚数は103,912枚となっている。
当初は、目標1000万枚と言われていたので、一見すると少ないように思われるが、全国規模で10万枚を超えるICカード格納の電子証明書なんて、世界を見渡してもそうあるもんじゃない。
なお、電子証明書の入れ物となる住基カードについては、平成17年8月末時点で、全国約68万枚が発行されている。
続いて、公的個人認証サービスの対象手続(利用できる電子政府・電子申請サービス)を見てみると、平成17年11月末現在
・国(11府省庁)
・都道府県(39団体)
・市町村(19都道府県内の市町村)
まで拡大されている。これまた、たいしたものである。
それでも、「公的個人認証サービス」の普及が進まないと言われるのは、発行された電子証明書が、実際に利用されることが少ないからである。実際、国や都道府県の電子申請は、利用率が0~数パーセントというものが多い。
●普及推進策その1:役人が率先して取得し利用する
電子政府・電子申請全般に言えることだが、「公的個人認証サービス」の担当職員から説明等を聞いても、あまり熱意が伝わってこない。本当に良いサービスと思っているのか、使って欲しいと思っているのかわからないのである。
実際に自身で電子証明書を取得して利用しているのかと聞くと、苦笑いが返ってくる。。こうした態度には、正直言って怒りすら覚える。こんな他人事感覚で、国民に使ってもらおうなんて甘すぎる。
まずは、公務員自身が自分で個人的に使ってみること。これが、普及策の第一歩であり、しなくてはいけないことである。約6000人いる総務省の職員の半分でも取得すれば、3000枚も発行数が増える。
実際に自分で取得して使ってみると、問題点もたくさん見えてくる。
1 わざわざ平日の昼間に役所へ行って取得するだろうか?
2 住基カードに加えて、電子証明書にもパスワード。覚えておくだけでも大変ではないのか?
3 ICカードリーダの取得は、お金の負担に加えて、どこで売っているのかもわからない。近所の量販店では、買えなかったし、店員さんも知らなかった。。
4 必要なソフトウェアやドライバをパソコンにインストールするのだけでも大変だ。画面に出てくる説明やメッセージの意味がわからない。。
5 ようやく電子証明書が利用できると思ったら、電子申請のソフトウェア等を別途インストールしなければいけない。これだったら、役所で手続きしたほうが早いのではないか。
「公的個人認証サービス」の担当者は、実際に自分で取得して使ってみて、それでも国民に使って欲しいと思えるだろうか。もし、そう思えたなら、今すぐサービスを止めたほうが良い。
関連>>第12回住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会|公的個人認証サービス ポータルサイト
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