社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(1)、番号制度は「国民主権を実現するための手段」
平成23年1月31日の政府・与党社会保障改革検討本部決定として、社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(PDF)と概要(PDF)が公開されています。事前(28日)に公開されていた基本方針案(PDF)と照らし合わせてみましたが、特に追加・変更等はありませんでした。
社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会(第3回)、番号制度の形が見えてきたで書いたとおり、今回の基本方針により、番号制度に対する政府の方向性が明確になりました。
(1)理念
ここでは、「背景・課題」を説明した上で、「理念・実現すべき社会」を提示しています。
●背景・課題
・国民一人ひとりが公平・公正に扱われているか
・自分の納めた税金や保険料にふさわしい社会保障か
・社会保障が、きめ細やかに、また的確に行われているか
・自分の権利がしっかりと守られ、そのことを自分の目で確認できるか
・どれも、不十分である
・国民が行う行政手続は、煩雑かつ不便でコストがかかる
・利用できるサービスを知らないために受給の機会を逃してしまう
・国民の負担や不公平が生じている
・国民の実情にあったサービスを提供するために、正確な本人の特定が必要
・現在は、行政が正確に本人を特定できない
・真に手を差し伸べるべき人に対して、セーフティネットを提供できない
・不正行為の防止や監視が行き届かない
・行政は、多大なコストと時間と労力をかけて数多くの書類を審査している
・人的なミスを誘発しやすい作業を毎年繰り返している
・国、地方、組織、業務間の情報連携が不足している
・財源や人的資源が、重複する作業等に費消されている
・民間事業者も、本人特定・本人確認のために多大なコストを要している
・日本には
・「複数の機関に存在し、かつそれぞれに蓄積される個人の情報」が
・「同一人の情報であるということの確認」を行うための
・基盤が存在しない
・国民一人ひとりの情報が生涯を通じて「タテ」につながることが必要(年金)
・国民一人ひとりの情報が分野を超えて「ヨコ」につながることも必要(医療・介護)
★作者コメント
番号制度によって、「新たに個人情報の利用やヒモ付けが行われる」と思われているようです。しかし実際には、「現在既に行われている情報の利用を、今よりも効率的に行いましょう」ということが主となります。
市町村では、既に世帯の所得を把握していますが、そのための負担が大きいので、番号制度の活用により少しでも負担を軽減しましょうと。今のうちに効率化しておかないと、現状のサービスを維持することさえ困難になるでしょう。
●理念・実現すべき社会
・複数の機関に存在する個人の情報が
・同一人の情報であるということの
・確認を行うための基盤は
・情報化された社会には必要不可欠なインフラである
・多くの諸外国で整備されている
「社会保障・税に関わる番号制度」は
・個人情報確認の基盤を提供する
・国民が公平・公正さを実感できるようにする
・国民の負担を軽減する
・国民の利便性を向上する
・国民の権利がより確実に守られるようにする
・主権者たる国民の視点に立つ
・国民一人ひとりの情報をより的確に把握する
・行政サービスを利用するための必要不可欠な手段となる
・国民と国・地方公共団体等との新しい信頼関係を築くキズナになる
番号制度が目指す実現すべき社会は
1)より公平・公正な社会
2)社会保障がきめ細やか且つ的確に行われる社会
3)行政に過誤や無駄のない社会
4)国民にとって利便性の高い社会
5)国民の権利を守り、国民が自己情報をコントロールできる社会
★作者コメント
理念では、「公平・公正さの実感」「国民の負担軽減」「国民の利便性」「国民の権利保護」など「国民」が前面に出ています。そのこと自体は、良い傾向と思います。番号制度が本当に国民視点のものになるかは、他でもなく国民自身の手にかかっています。
現在の政府・政党が、国民から信頼を十分に得ていない中で、番号制度を導入することは難しいのではないかと言う人もいるでしょう。作者の考え方は少し違っていて、多くの国民が「政府に任せておけない」と感じて、自分達でしっかりチェックしていかなければダメだと思った時こそ、番号制度を導入する機会だと思います。番号制度を「国民主権を実現するための手段・道具」と考えると、その見方も変わってくるでしょう。
「根拠の無いまま政府を信頼する」というナアナアの関係が終わり、国民と政府がお互いの役割や責任を明確にして、その様子が透明性の高い仕組みの中で誰もが確認できる。そんな社会を期待しています
つづく