クラウド時代のマイポータルを考える、個人情報の自己責任管理型で広がる自分だけの電子政府
国民ID制度と情報連携基盤が複雑化する理由を考えるで触れたように、「社会保障・税に関わる番号制度及び国民ID制度」は複雑化する一方で、一体何のための番号制度なのかと思うこの頃です。今後、議論はますますマニアックな方向へと進み、マニアックになればなるほど盛り上がっていくことでしょう。
作者がイメージしていた「社会保障・税に関わる番号制度」とかけ離れていく(と共に関心も薄れていく)のは寂しい限りですが、そのおかげもあって、より自由な発想で電子政府サービスやマイポータルを考えられるようになりました。
今回は視点を変えて、組織横断的な行政機関の情報連携など無理な話とあきらめて、そもそも行政に期待しない「自己責任管理型の電子政府サービス」を提案したいと思います。
●クラウド型ストレージサービスに注目
小池良次氏の現代ビジネス記事に「クラウド・ブラックホールがやってくる」というのがあります。小池氏は、米国アマゾンのクラウド・ドライブ(Cloud Drive)という無料のオンラインストレージ(データ保存)サービスなどを紹介して、クラウド・ブラックホール現象(ハードウェアから高度な機能を担うアプリケーションを分離して、データセンターに集約する現象)を解説されています。
この「クラウド・ブラックホール現象」は、今後の電子政府サービスを考える上で、とても大切な視点です。
なぜなら、電子政府の利用者である個人や企業は、個人情報を含む様々なデータをオンライン上に保存し、そのデータを自分のニーズや生活スタイルに応じて活用していくと予想されるからです。
●自己情報を自分で集めて自分流に使う
海外の電子政府では、住民に対して行政からのお知らせや公文書をオンラインで届けたり、それに対して返信できる、いわゆる「電子私書箱サービス」がありますが、その担い手は行政とは限らず、一定の要件をクリアした民間機関が提供する場合もあります。
現在のクラウド型ストレージサービス上で、SaaSのように様々なアプリケーションを動かせるようになれば、自分だけの電子政府サービスを作ることも夢ではありません。グーグルなどは、近いところまで行っていると言えるでしょう。
自分の責任と判断で、民間が運営する「電子私書箱サービス」に、行政が保有する自己情報等を集めて、これまた自己責任と判断で、集められた自己情報を官民の各種オンラインサービスに活用すると。自分自身が情報連携基盤として機能するようなイメージです。分野別の番号を自分で管理する機能があれば便利でしょうか。
これなら税金もほとんどかかりませんし、ICカードが無くても大丈夫です。
●情報連携基盤の位置づけ
政府が構築する情報連携基盤は、これとは別の位置づけになります。
政府情報連携基盤が、どのようなものなって、どれぐらい利用されるようになるのか不安材料が多いですが、「電子政府は誰でも使えなくて良い、使わない人でも恩恵を受けられることが大切」で書いたように、『オンライン申請を利用する人も、窓口で手続する人も、さらには手続をしない人も、差別されること無くその効果や恩恵を受けることができる」ものになることを願うばかりです。