日本の番号制度案における様々な番号たち:Numbers in Japan ID Number Framework

複雑化する番号制度・国民ID制度・情報連携基盤については、様々な組織や識者が懸念しているところですが、今回は番号制度案に出てくる番号たちを整理してみましょう。もちろん、ここで触れる番号たちは、住民票コード以外は全て検討中のものですから、参考程度に考えてください。

とりあえず、「日本の番号制度(案)における様々な番号たち」という一覧表にしてみました。英訳”Numbers in the draft of National Identification Number Framework“も併記していますが、適当なのでこちらも参考程度にどうぞ。

参考>>社会保障・税に関する番号制度についての基本方針(PDF)個人情報保護・情報連携基盤技術WGの検討状況

この一覧表だけで、「ふむふむ、なるほど」と思った人は、相当にツワモノ(マニアック?)ですね。普通の人は「なんじゃ、これは?」という感じで、利用イメージも描けないのではないかと思います。

■国民・住民が使うのは、どの番号?

番号(コード、符号)の種類としては、

1 住民票コード
2 番号(社会保障・税の共通番号)
3 利用番号(分野・業務別番号)
4 IDコード
5 リンクコード
6 認証用シリアル番号

がありますが、住民に直接関係があるのは、住民票コード、番号(社会保障・税の共通番号)、利用番号(分野・業務別番号)の3つぐらいです。

しかし、住民が日常生活で「住民票コード」を使うことはありませんので、番号(社会保障・税の共通番号)と利用番号(分野・業務別番号)が残ります。

番号(社会保障・税の共通番号)は、いわゆる「共通番号」のことと理解して良いでしょう。社会保障番号と納税者番号(いずれも日本に無かった)の機能を持っています。今後は、日常生活の場面で利用する(例えば、銀行の口座開設時に用紙へ記入したり)ことが予想されます。番号(社会保障・税の共通番号)は、当面は社会保障・税の分野に限って使われるので、次にあげる「利用番号」の一種とも言えます。

利用番号(分野・業務別番号)は、特定の分野や業務で使われる番号たちのことで、例えば「基礎年金番号」「健康保険の保険者番号」「雇用保険の被保険者番号」「運転免許証番号」「パスポート番号」などがあります。これらの番号は、日常生活で住民が直接使うことはほとんどありません。基本的には内部で使われる事務処理用の番号なので、年金手帳や免許証といったカード類を提示することで用が足りています。

■IDコードやリンクコードは、誰が使う?

気になるのは、「見えない番号」と言われる「IDコード」と「リンクコード」でしょうか。

日本弁護士連合会のパンフレット「共通番号制度の問題点Q&A」(PDF)では、「秘密の番号」といった表現もありますが、「よくわからない」「目に見えない」ものに対する恐怖は、福島の原発問題で多くの国民が実感しているところと思います。

この「見えない番号」を無理やりに見せると、例えばこんな感じでしょうか。

30 81 89 02 81 81 00 da 4d 8f 39 9e 1a 34 c0 08 54 93 e0 6e 88 88 cd 8a af 96 7e eb 8a 10 ee e1 b2 d1 3e 42 2a 1d bb db 99 c6 dc c4 18 d1 3c 52 85 55 90 8b 64 51 7e 43 da 20 46 e6 6d 94 73 d6 b8 64 78 4e c9 27 4b 21 9a e0 76 e3 a6 d4 8c 67 c5 47 0a eb f6 e0 87 79 69 8b f7 40 9c 23 ef e7 28 fe 6f a8 ec 5c 19 9e a1 16 7d b7 9f 45 0f c0 74 94 1a be ad 74 38 12 0f 9f 1c 8f e5 65 32 e0 ce f5 1a b4 21 ba 19 02 03 01 00 01・・・・・・(さらに続く)

まあ、生身の人間が使える番号ではないのですね。ですから、自治体が保有することになる「リンクコード」についても、事務処理を行う行政職員が直接利用している感覚は無くて、業務を処理していく中でコンピュータが勝手に使ってくれる番号という感じでしょう。

自治体の職員にとっては、これまで通りに「住民票コード」や「利用番号(分野・業務別番号)」を使うのが一般的で、その一部が「番号(社会保障・税の共通番号)」に入れ替わるかもしれない…今のところは、それぐらいの理解で良いと思います。システム改修等に伴う費用や事務負担などが、一番の心配事かもしれませんね。

■番号制度のアキレス腱になり得る「IDコード」と「リンクコード」

既に一部の識者によって指摘されていると思いますが、今回の番号制度にとって、「IDコード」と「リンクコード」は
アキレス腱になるかもしれません。

なぜなら、「IDコード」も「リンクコード」も生成するのは、総務省(情報連携基盤も管理)になる可能性があり、総務省によって悪用される懸念があるからです。しかも、番号が「見えない」ことで、国民や第三者機関等が後で発見・検証することも困難になります。また、総務省は情報保有機関でもあるので、その場合の悪用はますます発見されにくくなります。さらに、自治体と(自治体への影響力が大きい)総務省が結託した場合は、さらに問題が深刻化するでしょう。

これに対して、「番号(社会保障・税の共通番号)」は、本人が自分で確認できるだけでなく民間でも利用されるので、行政による不正利用もより発見されやすく、事後の追及・検証も比較的容易と言えるでしょう。もちろん、「よくわからない」「目に見えない」ものに対する不信や恐怖により、制度導入の拒絶や訴訟といったリスクも高くなるでしょう。

こうした事態を防ぐためには、制度をもっとシンプルにして透明性を高めると共に、第三者機関の権限と体制をしっかり整備することが望まれます。

「より良い社会を目指す」という目的がぶれないように、多くの国民に関心を持ってもらえれば幸いです。