社会保障・税番号大綱案を読み解く(11)、番号制度で進む識別情報の一元化

社会保障・税番号大綱案を読み解く(10)、今後の進め方と付番機関の続きです。

今回から、法整備(番号法)について整理したいと思います。

大綱によると、法整備の項目は次の通りです。

・ 番号制度の基本理念
・ 「番号」及び「法人番号」の付番・通知等の在り方
・ 「番号」を告知、利用できる手続の範囲
・ 「番号」に係る個人情報
・ 情報連携基盤を用いることができる事務の範囲
・ 情報連携により提供される「番号」に係る個人情報の種類及び提供元・提供先
・ あらかじめ本人の同意を得て情報連携する必要がある「番号」に係る個人情報
・ 「番号」に係る本人確認等の在り方
・ 「番号」に係る個人情報の保護及び適切な利用に資する各種措置
・ 情報連携の仕組み
・ 自己情報の管理に資するマイ・ポータルについて
・ マイ・ポータルのログイン等に必要なICカード等の要件
・ 第三者機関
・ 罰則
・ 施行期日
・ 施行のための準備行為

「番号法(番号制度に係る共通的な事項について規定した法律)」という名前の通り、番号制度についての規定であり、「国民ID制度」についての規定ではありません。番号制度と国民ID制度が別物であることは、社会保障・税番号大綱案を読み解く(8)、番号制度と国民ID制度の関係で説明したとおりです。

●基本理念の遵守は国民参加が不可欠

基本理念は、次のように整理されています。

(1) 社会保障給付及び社会保障負担並びに税の賦課及び徴収に関して、国民が公平さ及び公正さを実感できる社会の実現を目指すこと
(2) 社会保障給付が所得等の水準を的確に把握することにより適切に支給される社会の実現を目指すこと
(3) 行政が適正かつ効率的に運営される社会の実現を目指すこと
(4) システム技術、高度情報通信ネットワーク等を活用して国民生活の充実及び利便性の向上が図られる社会の実現を目指すこと
(5) 行政機関の保有する「番号」に係る個人情報の適正な取扱いを確保し、当該個人情報へのアクセス記録を国民自ら確認できる社会を目指すこと

番号制度が基本理念を逸脱することが無いように、国民自身が積極的に参加し監視・監督していくことが大切と思います。

●「番号」の付番

「番号」の付番については、次のように整理されています。

・付番対象者は、住民票コードが住民票に記載されている日本人と外国人住民(中長期在留者、特別永住者等)である
・住民は、出生時に「番号」を付番される
・番号生成機関(指定情報処理機関を基礎とした地方共同法人)が、「番号」を指定する
・市町村長は、住民に対して「番号」を通知する
・市町村長は、「番号」を住民票に記載する
・ICカード交付により、「番号」の通知を省略できる
・市町村長は、「番号」と本人確認情報を都道府県知事と番号生成機関へ通知する
・「番号」の付番に係る制度の所管は、総務省とする
・付番について、安定的・効率的・透明な運用を可能とする措置を国が講じる

これを文面どおりに解釈すると

・住民票に記載の無い者や住民票コードを持たない者は「番号」が付番されない
・既に出生している住民には、これから「番号」が付番される
・付番制度の所管は総務省だが、実務の大半は市町村で行われる
・論理的には、「住民票コード」「4情報」「番号」をキーとして住民を名寄せできる
・「番号」と本人確認情報(4情報+住民票コード+変更履歴)は、市町村と都道府県知事と番号生成機関で共有する

となります。こうして見ると、番号制度は全く新しいものを作るのではなくて、住民基本台帳や住基ネットを拡張・改善・強化したものであることがわかります。住民の個人情報は基本的には各市町村等で分散管理されますが、主に個人を識別するための情報(住民票コード、4情報、番号)については一元管理されることになります。総務省が番号制度に対してこだわりを示すのも自然なことと言えるでしょう。

なお、各市町村が、既存の住民票コードや独自の住民番号に代えて(加えて)、新しい「番号」をどのように実務で使っていく(使い分ける)ことになるのかは、今のところはっきりしていません。このあたりも、ユースケースの検討が進むことで明らかになってくるのだと思います。

●「番号」の変更と失効

「番号」の変更と失効については、次のように整理されています。

・「番号」は、本人や代理人が変更を請求できる
・変更請求の要件等については、今後、番号法案策定時まで引き続き検討する
・変更により新しい「番号」が付番されると、従前の「番号」は失効する
・不正手段で「番号」が取り扱われた時などは、失効させることができる

現在までの検討(PDF)では、「番号」は(住民票コードに関係ない)乱数により生成され、住民票コードと「番号」は対照テーブルで管理されるようです。ですから、住民票コードを変更しても「番号」は変更されません。番号の変更は、本人からの請求による場合と、(市町村長等が)職権による場合になりそうですね。

住民票コードと異なり「番号」は民間機関等でも利用されるので、住民票コードのように自由に(理由無く)変更できるとした場合、かなりの混乱が予想されます。番号の変更には 正当な理由が必要とした方が良いでしょう。