社会保障・税番号大綱案を読み解く(22)、法人番号はオープンガバメントと一体で
社会保障・税番号大綱案を読み解く(21)、罰則の強化よりも問題解決を目指した柔軟な対応をの続きです。
今回は、法人等に付番する番号(P.53)について整理しましょう。
●ようやく法人情報がウェブ無料公開か
大綱では、「法人等に付番する番号」について次のように整理しています。
「法人番号」の付番対象となる法人等
(1) 国の機関及び地方公共団体
(2) 登記所の登記簿に記録された法人等
(3) 法令等の規定に基づき設置されている登記のない法人
(4) (1)から(3)に掲げる法人等以外の法人(国税に関する法令の規定により法人とみなされる者を含む。)で、国税・地方税の申告・納税義務、源泉徴収義務若しくは特別徴収義務若しくは法定調書の提出義務を有し、又は法定調書の提出対象となる取引を行うもの
★作者コメント
「法人番号」も社会保障・税の一体改革として導入されるので、社会保障や納税の対象となる組織であれば、登記の有無に関係なく「法人番号」を付与する必要があります。
「法人番号」の付番方法
・登記のある法人等については、法務省が有する12桁の整数からなる会社法人等番号の法令上の根拠を明確化した上で、これを基礎として付番する
・法務省及び国税庁において、所要の措置を講じる
・会社法人等番号を有しない登記のない法人等に対しては、国税庁において、登記のある法人等に係る会社法人等番号と重ならない番号を付番する
・「法人番号」の付番の所管は、国税庁とする。
★作者コメント
国税庁の所管は、あまり異論が無いようです。海外でも納税者番号を他分野にも利用している場合は、所管は国税庁や財務省となることが一般的です。将来的には法人登記業務を地方自治体に移管して、付番と法人データベースの所管を国税庁とするのが良いと思います。
支店や事業所の取り扱い
・法人等の支店や事業所に関しては、必ずしも会社法人等番号を有していないこと等から「法人番号」の付番は行わない
・他方、国税の源泉徴収義務と地方税の特別徴収義務の両方を有する法人等の支店や事業所が相当数あることから、国税の源泉徴収義務者について国税当局内部で活用している番号を地方税当局と共有し、地方税当局及び徴収義務者の事務処理の効率化を図ることとする
★作者コメント
社会保障や税の分野では「支店」や「事業所」単位で手続等を処理することがあります。「法人番号」は、所管を国税庁としていることからも、税分野を中心に考えているようです。そのため、「支店」「事業所」についても国税と地方税による内部番号の共有にだけ触れています。本来であれば、個人事業主なども含めて事業用税務番号を付番するべきでしょう。
変更
・「法人番号」は、会社法人等番号(平成24年度以降)と同様に変更しない
・重複付番を避けるために、一度使用した番号は再利用しない
★作者コメント
法人の場合は、個人と異なり「生涯不変の番号」で問題ないので、妥当な判断と思います。
通知
・国税庁長官は、付番した「法人番号」を当該法人等に書面により通知する
★作者コメント
付番および通知作業については、法務省との連携で効率化の余地がありそうです。
検索及び閲覧
・「法人番号」は、広く一般に公開されるものであり、自由に流通させることができ、官民を問わず様々な用途で利活用する
・法人等に対する付番機関においては、国民の利便性に配意し、法人等の基本3情報(商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、会社法人等番号)の検索、閲覧ができるサービスをホームページ等で提供する
★作者コメント
海外の法人は、基本情報について無料でウェブ検索・閲覧できるのが一般的です。作者自身は、オーストラリアの企業検索サービス、日本でも無料開放をなどで、日本における法人情報の無料公開をずっと訴えてきました。電子政府先進国の10年遅れとなりましたが、オープンガバメントの一環として法人基本情報データやAPIを公開し、ビジネス等で二次利用できるようにしましょう。
「法人番号」の適切な利用に資する各種措置
・「法人番号」についても、告知を受ける際の本人確認、「番号」の真正性確保、告知義務、虚偽告知の禁止等、
・番号制度を適正・円滑に運営するために必要な措置については、個人に付番する「番号」と同様の措置を講じる
★作者コメント
法人の基本情報がウェブで無料公開されると、法人の「実在確認」が容易になりますが、法人代表者等の本人確認については、これまでと同様の手間がかかります。
法人等付番機関
・法人等付番機関は、会社法人等番号を活用して法人等に付番するため、法務省に付番対象である法人の登記に記録されている事項のうち、法人等基本3情報及び「法人番号」の運用・管理に必要な情報の提供を求めることができる
・法人等付番機関は、法務省から提供のあった付番対象である法人の登記簿に記録されている事項及び「法人番号」を適切に管理しなければならない
・法人等付番機関は国税庁に必要な体制の整備を検討する
★作者コメント
「法人番号」の付番を所管するのは国税庁ですが、実作業を行う付番機関については明確にされていません。税務署で行うのが現実的でしょうか。