復旧復興支援ナビ、民間事業者が作る電子政府ポータルの形
社会保障・税番号大綱案を読み解く(18)、マイ・ポータルの運営とサービス提供は分けて考えようで書いたように、マイ・ポータルの運営を民間に解放することについては、当面は難しいと思います。仮に民間に運営を任せたとしても、様々な制約が課せられる中で、民間独自のサービスを提供することは難しそうです。
他方、「民間事業者自身が企画・運営し、利用者の視点で作る電子政府ポータル」については、大いに期待しています。
例えば、電子政府の総合窓口e-Gov[イーガブ]では被災者の方の支援に関する情報を提供しています。総務省と自治体では避難先における情報提供の受付(全国避難者情報システム)により避難者情報の共有を進めています。本ブログでも、電子政府による被災者支援、被災者支援システムの活用を提案しました。
こうした行政が主導する動きに加えて、民間が主体となった情報提供も活発です。その一つが、復旧復興支援ナビです。市民や事業主などが、東日本大震災の復旧復興に関する行政支援制度を見つけることができるサービスです。
震災復旧・復興については、「政府の対応・支援が遅れている」といった意見があります。確かに遅れている面もあると思いますが、実際には「被災者が使える行政サービス」はたくさんある。けれども、その情報やサービスが被災者の所に届いていない。あるいは、行政職員自身も熟知していない。といったケースも多いのです。
こうした市民と行政の情報ミスマッチ状態を仲介することが、「民間事業者自身が企画・運営し、利用者の視点で作る電子政府ポータル」に期待される役割の一つでしょう。
復旧復興支援ナビの「あなたにぴったりの支援制度を探す」では、簡単な選択質問に答えるだけで、利用できるサービス(現在は住宅関連のみ)を見つけることができます。被災者だけでなく、窓口を担当する自治体職員にとっても大いに役立つでしょう。
●被災者が利用できない時は、仲介者が利用する
こうした被災者支援のオンラインサービスは、「インターネットを使う習慣が無い」「利用環境が無い」といった理由により、被災者自身が直接利用できない場合もあるでしょう。
その場合は、家族やボランティアなど、被災者と触れる機会の多い人が利用するのが良いですが、それ以外の仲介者の活躍も期待されます。
電子政府における仲介者の役割で書いたように、実際に電子政府・電子申請サービスを国民に利用してもらうためには、様々な仲介者を活用することが有効です。仲介者を活用することで、国民がサービスにたどり着くまでのプロセスの一部または全部を省略できるからです。
作者が考える「仲介者の条件」は、次の通りです。
1 社会的に認知され信頼されていること
2 必要な知識と実務処理能力があること
3 競争があり、利用者が選択できること
士業(司法書士、税理士、行政書士、社労士) の方々は、まさにこうした条件に当てはまります。
被災者支援制度・サービス>>復旧復興支援ナビ>>仲介者>>被災者
という流れで情報が伝わった後は、実際に制度を利用するための実務手続が必要です。この場合も、仲介者の活躍が期待できます。士業であれば、支援制度の存在を伝えるだけでなく、手続を代行する能力についても信頼性があります。
今月の行政相談週間(10月19日から25日まで)の前後には一日合同相談所が開設されます。行政機関等が一同に集まって、ワンストップで相談を受付けるものですが、東日本大震災等被災者の方からの相談も受付けるそうです。こうした場所でも、「復旧復興支援ナビ」を活用して欲しいと思います。