公的個人認証サービスの普及策、その3:民間の「入れ物」を活用する
前回、公的個人認証サービスの利用については、民間への安易な開放は良くないと述べたが、入れ物(格納媒体)については、積極的に民間サービス等を利用したい。
現在、公的個人認証サービスの電子証明書を格納できるのは、住基カードだけとなっている。住基カードは、平成17年8月末時点で、全国約68万枚が発行となっており、いかんせん分母(パイ)が小さい。これではどうがんばっても、公的個人認証サービスの利用も増えない。
これが、契約数9000万を超える携帯電話となれば、分母が増えるばかりか、新たに住基カードを取得する手間もなくなる。2~3年で機種変更することが多いのも、3年を有効期間とする公的個人認証サービスにとっては都合が良い。
新しい入れ物しては、携帯電話の他に、社員証、運転免許証などもある。「日常的に携帯されるもの」が望ましく、スイカなどの交通系カードも悪くない。無線LAN機能などを備える携帯ゲーム端末も面白い。
しかしながら、携帯電話や運転免許証に入れれば、公的個人認証サービスが利用されるのかと言えば、全くそんなことはない。
入れ物の特徴や日常における利用場面を考えた上で、きちんとサービスモデル(利用イメージ)を描くことができるかがポイントとなる。
入れ物としていくら魅力的でも、具体的なサービスモデルが描けなければ、あるいは描いたサービスモデルに魅力がなければ、公的個人認証サービスも利用されないのである。
公的個人認証サービスの利用・普及策を実施するのは良いが、ただでさえ赤字の事業を拡大するわけだから、慎重かつ綿密な事前調査と準備をしなければいけない。
そのためにも、最低限のマーケティングが必要なのである。