クラウドの未来─超集中と超分散の世界、民間が保有する個人情報で電子政府を改善しよう
クラウドの未来─超集中と超分散の世界 (講談社現代新書) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
クラウド関連の書籍は多くて、本ブログでも何冊か紹介していますが、個人的には著者(小池良次氏)の書いた本が面白くてお気に入りです。
関連>>クラウド グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図、電子政府を書式から解放しよう|クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす、ついでに電子政府の可能性も広がる
本書では、クラウドは「集中と分散」のペアであり、どちらが欠けてもクラウドにはならないと言っています。
様々なコンテンツやアプリケーションがデータセンター(クラウド)に集約(超集中)する一方で、場所や機器を問わない世界(超分散)へ広がっていくと。
そして、「超集中」と「超分散」を結び付けるのが、(モバイル)ブロードバンド・ネットワークであると。
このような性質を持つクラウドが普及していくことで、電子政府を取り巻く環境も変わってくるでしょう。
「電子政府におけるクラウドと共通番号制度、その背景「縦割りの解消」を理解しよう」で書いたように、「整理・統合」が進む一方で、「縦割りの解消」も進みます。
各省庁や自治体でバラバラの番号を共通化したり整理・統合すると共に、番号の利用や情報連携に関するルールを共通化します。こうした「集中」によって、地域や利用者の実情に合わせたサービスを展開(分散)することが可能になります。「集中」が無いままに展開(分散)すると、お金や人がいくらあっても足りなくなってしまうからです。
「国家管理のマイナンバーが地域主権の流れに反する」といった主張は間違いで、地域主権を支援するのが番号制度(やクラウド)に期待される役割なのです。
クラウドや番号制度によって、行政間の「縦割り解消」が進み、いわゆるワンストップサービスやプッシュ型(お知らせ型)サービス、記入済み申告(行政から送られてきた記入済みの申告書を確認するだけで終わる)などが現実化したとしても、それだけでは足りません。
民間クラウドが保有する個人情報を活用してこそ、本当の意味でクラウド対応の電子政府と言えるでしょう。
例えば、海外のデータセンターを拠点とするグーグルやアマゾンやフェイスブックには、膨大な個人情報が日々蓄積されています。そうした状況が好ましいか好ましくないかは議論があるところですが、日本が独自に同様のサービスを展開することは難しいでしょう。しかし、せめてその一部でも取り戻す試みがあっても良いと思います。
グーグルやアマゾンやフェイスブックが保有する個人情報を電子政府に活用することができれば、最適な行政サービスを提案したり、情報の二次利用による手続の省略・簡素化が可能になるでしょう。
「クラウド時代のマイポータルを考える、個人情報の自己責任管理型で広がる自分だけの電子政府」などは、その一例です。
個人が自らの意思で(喜んで)民間クラウドに提供している個人情報を、本人の同意の下で必要な分だけ電子政府サービスに活用できれば、行政にとっても膨大な個人情報を抱え込む必要が無いので助かるはず。
いずれにしても、クラウドはまだ始まったばかりで、電子政府における活用が進むのも、もう少し先のことになるでしょう。少なくともその頃までには、きちんと番号制度を整備しておきたいものです