メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故
メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故 | |
大鹿 靖明 (著) | |
講談社 |
100人以上の関係者への取材を基に書かれたと言うドキュメント。
東日本大震災による福島第一原発事故の発生から、菅内閣の崩壊までを描いています。
単純に読み物として面白かった。
まず思ったのは、「人間は普段から練習や訓練していることしかできない」ということ。
緊急時の対応手順が整備されて、かつ定期的な訓練をしていない限りは、首相が誰であっても、結果はたいして変わらなかったと。自衛隊が活躍できたのは、やはり訓練の賜物であろうと。
で、次に思ったのが、「東京電力、経済産業省、原子力安全・保安院、原子力安全委員会、資源エネルギー庁、大手銀行、族議員など、全て同じ穴のムジナであり、五十歩百歩である」ということ。
こうしたガバナンス体制(無責任体制)が続く限り、原子力発電であろうと再生可能エネルギーであろうと、税金の無駄遣いは無くならないし、事故の教訓を生かした危機管理は望めそうにありません。
日本のエネルギー事情を見ても、日本が原子力発電無しにやっていくことは難しいですが、現在の状況を考えると段階的な廃止もやむを得ないでしょう。もちろん、原子力発電を停止することによる(痛みを伴うであろう)リスクを国民は引き受けなければいけません。
現実的な路線としては、再生可能エネルギーへ継続的に投資すると共に、石炭・石油・天然ガスなどの主要エネルギー割合を調整しながら、そのために必要なインフラ整備をし安定供給を確保していく。同時に、競争を促進してイノベーションが起こりやすい環境を整備していくといったところでしょうか。
いずれにせよ、抜本的なガバナンス体制の改革が無ければ、全ては絵に描いた餅になってしまうのですが、その可能性が高いというのが悲しいかな今の日本なのでございます