外字実態調査が示す電子政府の課題、司令塔不在では役所で使う漢字さえ統一できない
自治体クラウドの円滑なデータ移行等に関する研究会(第3回)の配布資料として、外字実態調査の報告(PDF)が公開されています。
ここで言う「外字」とは、一般的にパソコン等で利用される文字コードに含まれない文字のことです。
文字情報基盤構築に関する研究開発事業、外字問題の解決に向けてで書いたように、各市町村が、コンピュータで出てこない漢字を、自分達で作ってしまい、その漢字が自分たちのコンピュータでしか使えないという問題です。複数の機関や自治体間において電子データのやり取りをする時に、外字問題があると、正確なデータのやり取りができなくなってしまいます。
上記調査では、「1,386の市区町村から、 1,166,536文字の外字情報を収集し、文字情報基盤漢字と字形レベルでの同定を実施した」とあり、100万字以上の外字が存在していることが明らかになりました。
他の文字コード等を見てみると、
・常用漢字:1945字 (2010年11月の改正後は2136字)
・JIS漢字コード:11,233字(第四水準漢字や非漢字を含む)
・住基ネット統一文字:19,432字(漢字のみ)
・戸籍統一文字:55,266字(漢字のみ)
・文字情報基盤漢字:58,712字
※住基ネット、戸籍の統一文字数は上記報告書調査時や文字情報基盤事業実施時のもの
となっており、役所で使われる漢字がいかにバラバラで統一されていないかがわかります。
これからの行政機関では、今までのように「自分仕様の高級パソコン」を欲しがるワガママは通じなくなりますが、外字についても同様です。政府CIO制度の下で、期限を決めて、原則として外字を廃止する方向を打ち出してくれることを強く願います。
以下、文字情報基盤構築事業への作者からの提言を再掲しておきます。
・電子政府の観点、特に長期の視点から言えば
・行政事務で使用する文字については
・ベンダーやシステムに依存しないように
・中央省庁と自治体で統一共通化され公開された文字コードを利用するべきで
・時間はかかってもそこをゴールに定めるべきです。
・国際競争力のある電子政府を実現するために
・文字コードの標準化・共通化は欠かせない必須条件です。
・外字については、これ以上増やさないだけでなく
・期限を決めて廃止することも視野に入れる必要があります。
・統一された共通文字コードの利用は
・今後設置される政府CIO体制の下で
・法令等による権威付けや義務化が必要です。
※住民に対する説明の根拠としても有効
・戸籍については
・個人のアイデンティティ(自己同一性)や歴史文化の問題にも関係するので
・外字の利用を例外的に認めるなど別枠で扱っても良い。
・ただし、戸籍は、日本人の公的な記録のルーツとして
・行政事務には欠かせない情報なので
・外字によって事務処理が妨げられないようにしておく必要があります。
例えば、
・戸籍にも、住民票コードや共通番号を記載事項として追加し
・容易に個人を特定識別できるようにしておく。
・戸籍のデータベースを、各自治体で個別に管理するのは止めて
・諸外国の住民登録データベースのように
・ネットワーク化や統合化により、連携共有を進める。
・外字情報も共有化する。
などの方法が考えられます。
・いずれにしても、日本がデジタル社会への移行を本格的に進めるためには
・行政事務や行政情報管理のやり方・考え方を
・大幅に改めなければならない時期にきていることを
・本事業の成果の中に示して頂きますようお願いいたします。