つぶやき電子政府情報(2012年9月2日):日本におけるオープンデータの行方

オープンデータに関するお話を聞く機会が増えてきました。9月10日(月)に開催する電子行政研究会の第2回ワークショップでも「電子行政オープンデータ戦略について」をテーマとしています。結論から言えば、日本におけるオープンデータはあまり進まず、欧米など諸外国との差が広がっていくのではないかと感じています。

政府機関が保有するデータのうち、「価値がわかりやすいもの」「お金になりやすいもの」については、省庁の外郭団体や独立行政法人などが保有し資金源となっている現状があるため、こうしたデータがオープンになっていく可能性は低い(障害が多い)でしょう。

他方、「価値がわかりにくいもの」「お金になりにくいもの」については、自治体が保有することが多いため、データをオープンにするためのコスト(面倒)が障害となります。各自治体でバラバラにデータが公開されても、利用しにくい、付加価値を生み出しにくいといった問題もあります。「価値がわかりにくいもの」「お金になりにくいもの」をお金に換えるビジネス事業者にとっては、データがオープンにならない方が嬉しい場合もあります。これは、電子申請における士業との関係(行政手続が誰でも簡単にできるようになっては困るビジネスモデル)に似ています。

一つの方法としては、政府CIOが各地方政府CIOと協力・連携して、中長期のビジョンを描くことが挙げられます。データを決められた方式でオープンにすることを前提とした公共情報ライフサイクルを国と地域で共通化し、10年ぐらいかけて情報システムを更改していくのです。それと並行して、短期的には、あまりコストをかけず、できるところやニーズが多いデータから公開していけば良いでしょう。

これに対して、政府以外の公共機関(電気、ガス、水道、交通機関など)が保有するデータのオープン化は、より多くの実践や効
果を期待できます。今年の夏、家庭を中心とした電力消費量が減少したのも、でんき予報などによるデータ公開や可視化の効果が貢献していると思います。


Open access to research results aims to boost Europe’s innovation capacity
http://www.epractice.eu/en/news/5385106
欧州のイノベーション能力を高めることを目的とした研究成果への

オープンアクセスについて。2012年7月17日、欧州委員会が採択した「ホライズン2020」を通じて、研究のためのオープンアクセス政策目標を設定。科学論文やデータへのより広範で迅速なアクセスにより、研究者や企業が公的資金による研究の成果を活用しやすくなると。

Consultation period begins for guidelines on digital stamps
http://www.epractice.eu/en/news/5387766
イタリアでは、行政機関の電子記録管理におけるデジタルタイムスタンプ利用のガイドラインを策定したと。電子文書が原本で、紙はコピーと考えているようです。日本と逆ですね。

Impact 2.0: New mechanisms for linking research and policy
http://impact2point0.comunica.org/
公共政策におけるソーシャル・ネットワーキングのアプリケーションやサービスの利用に関するレポート。公共政策にSNSを利用した場合、既存のやり方と比較してどのような違いが出るのか、設計・実装・影響等を調査。

ハローワーク特区に関する埼玉県知事との協定の締結
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002im0q.html
特区制度を活用して、試行的に東西1か所ずつハローワークが移管されているのと実質的に同じ状況を作り、移管可能性の検証を行うもの。
関連>>ハローワーク特区について(PDF)

フェイスブックの「顔認識データベース」、独政府が破棄を要求(WIRED.jp)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120821/417007/?ST=govtech
「明示的なオプトイン同意が必要」の規定は、意図した効果を発揮できるのだろうか。

秋田市上下水道局:お客様情報の流出について(おわび)
http://www.city.akita.akita.jp/city/ws/okyakusama/owabi/default.htm
職員の自宅パソコンからソフトウェアを介してウイルスに感染した可能性が高いことから、上下水道局において、職員に対し事実確認を行った結果、流出もとが自宅のバックアップ用パソコンにあることを確認したと。「正規の管理からはずれて散在する個人情報」はかなりあるんだろうなあ。

富士通が宮崎県などで災害復旧訓練、グループ3500人が参加
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120831/419643/
災害対策のPDCAサイクルにおいて、「訓練」の役割は大きいですね。

個人ローン業務IT化の考慮点
http://e-public.nttdata.co.jp/topics_detail4/contents_type=20&id=728
「ITリスク抑止に視点をおいた考慮点」は電子政府の分野でも参考になります。

“上から目線”の排除が、電子政府推進のカギ
http://www.atmarkit.co.jp/im/cits/serial/bizknowledge/11/01.html
マッシュアップによって官民が統合されたWebサービスを目指すべきと。

米国政府の災害・緊急事態対応計画
米国政府の災害・緊急事態対応計画(Federal Response Plan)では、交通、コミュニケーション、火災や医療などの対応機能別に計画が立てられていると。「緊急事態支援機能」は参考になりますね。

CIOが知っておくべきビッグ・データに関する5つのこと
企業規模は小さくても大量のデータを持つ企業や、テラバイト級のデータを持つ小規模ヘッジファンドが存在することを指摘。公共・政府機関による民間データの活用も進みそうです。

国民的議論に関する検証会合(第2回)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive12_02.html
エネルギー・環境会議から。団体等の提言などの資料を見ると、現実派と理想派の隔たりは大きい

安心・安全な社会へのICT技術(PDF)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/mynumber/symposium/oita/siryou5.pdf
マイナンバーシンポジウムin大分から。米国のトラストフレームワークを紹介。技術的な方向性はディレクトリサービスで十分と。

マイナンバーと電子自治体(PDF)
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/mynumber/symposium/miyazaki/siryou5.pdf
マイナンバーシンポジウムin宮崎から。行政依存の「紙」だのみの結果は多くの国民が知るところ。日本が厳しい財政状況を実感していく中で、個人情報の公益性を認めざるを得なくなるでしょう。

Microsoft Office 365の野望をくじくGoogle
http://www.gartner.co.jp/b3i/research/120821_app/index.html
ガートナーが予想したよりも多くの企業がMicrosoftからGoogle Appsに流れていると。こうした流れは、電子政府にも影響を与えつつあります。