統一されていそうで、実はされていない自治体の歳出科目
「税金はどこへ行った?」でわかる自治体会計データ項目の不統一について、『地方公共団体では予算科目が地方自治法施行規則で節レベルまで統一され公開されていますよ。』とご指摘をいただきました。
実は、作者も「税金はどこへ行った?」を見るまでは、科目名は統一されていると思っていました。ところが、基データを見ていくと、どうもそうではないなあと気がついたのです。
二つの自治体で比較してみましょう。政令指定都市である横浜市と川崎市です。
横浜市の平成23年度決算にある歳出決算の概要(PDF)の中に「一般会計歳出費目別(款別)決算額の前年度対比」があります。
ここにある「款名」というのが横浜市の歳出科目(目的別)で、次の通りです。
1.議会費
2.総務費
3.市民費
4.こども青少年費
5.健康福祉費
6.環境創造費
7.資源循環費
8.経済観光費
9.建築費
10.都市整備費
11.道路費
12.港湾費
13.消防費
14.教育費
15.公債費
16.諸支出金
次に、平成23年度川崎市一般会計・特別会計決算見込にある川崎市一般会計決算資料(PDF)を見ると、「一般会計決算額の推移(歳出・款別)」があります。
ここにある「区分」というのが川崎市の歳出科目(目的別)で、次の通りです。
1.議会費
2.総務費
3.市民費
4.こども費
5.健康福祉費
6.環境費
7.経済労働費
8.建設緑政費
9.港湾費
10.まちづくり費
11.区役所費
12.消防費
13.教育費
14.公債費
15.諸支出金
二つを比べると、科目数も名称も微妙に違っていることがわかります。
うーん、どうしてこんなことが起きるのか?
根拠法を確認してみましょう。
地方自治法
第216条(歳入歳出予算の区分)
歳入歳出予算は、歳入にあつては、その性質に従つて款に大別し、かつ、各款中においてはこれを項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを款項に区分しなければならない。
地方自治法施行規則
第15条
1 歳入歳出予算の款項の区分並びに目及び歳入予算に係る節の区分は、別記のとおりとする。
2 歳出予算に係る節の区分は、別記のとおり定めなければならない。
別記 歳入歳出予算の款項の区分及び目の区分(第15条関係)
別記 歳入予算に係る節の区分(第15条関係)
別記 歳出予算に係る節の区分(第15条関係)
気になるのが、施行規則の「別記のとおりとする」と「別記のとおり定めなければならない」という二つの表現です。
歳出の科目は、その目的に従って「款(大分類)」と「項(中分類)」に区分しなければいけないし、「節(最小分類)」は別記に書いてあるものと同じでなければいけないよ。でも、「款(大分類)」と「項(中分類)」と「目(小分類)」については、別記と同じでなくても(自治体ごとにアレンジして)良いよ。
と読み解けるような、読み解けないような。。
横浜市予算、決算及び金銭会計規則を見ると、
第2条(用語の意義)
(7) 予算科目 歳入歳出予算の款項をいう。
第13条(予算編成方針)
2 歳入歳出予算の予算科目及び目節の区分は、毎年度歳入歳出予算の定めるところによる。
第31条(目の新設)
局長(予算配付事務所の長を除く。)は、歳入予算科目の目節を新たに設ける必要があると認められる歳入を徴収し、又は収入するときは、直ちに、その旨を財政局長に通知しなければならない。
第37条(予算流用及び予備費補充)
2 局長は、予算科目、目、節又は説明を新たに設ける必要があると認めるときは、仮に新設する費目を定め、歳出科目新設要求書兼通知書(第11号様式)又は歳入科目新設要求書兼通知書(第12号様式)を財政局長に送付しなければならない。
うーむ、けっこう自治体側でアレンジできるらしい。
川崎市予算及び決算規則を見ると、
第3条(歳入歳出予算の款項及び目節の区分)
歳入歳出予算の款項は、毎会計年度歳入歳出予算の定めるところによる。
2 歳入歳出予算に係る目及び歳入予算に係る節の区分は、毎会計年度歳入歳出予算事項別明細書の定めるところによる。
3 歳出予算に係る節の区分は、地方自治法施行規則(昭和22年内務省令第29号)別記に定める区分による。
なるほど。やはり歳出予算に係る「節」の区分は、地方自治法施行規則の別記に縛られているけど、歳出予算の款項は自治体側で決めることができるらしい。なので、横浜市と川崎市で歳出科目(目的別)の数や名称が異なっていても不思議は無いのね。
ということで、「統一されていそうで、実は統一されていない自治体の歳出科目」なのでした