外国人の看護・介護受入れ問題、ガラパゴス化で介護難民国にならないために
厚生労働省から平成25年度外国人看護師候補者学習支援事業実施団体の公募結果が公表されています。選定されたのは、社団法人国際厚生事業団です。
外国人の看護・介護受入事業に関する厚労省の利権や天下りについては、以前から問題とされてきましたが、今回はちょっと別の視点から取り上げたいと思います。
外国人の看護・介護受入は、日本とフィリピンやインドネシアとの間で締結された経済連携協定(EPA)に基づくものです。具体的には、フィリピン人やインドネシア人の看護師・介護福祉士候補者を受入れて、日本の事業所で就労・研修を行い、日本の国家資格取得を目指すことになります。候補者と言っても、単なる希望者ではなくて、母国で看護課程を修了していたり、国家資格や実務経験のある人たちです。今後は、ベトナムからの受入れも開始する予定です。
参考>>インドネシア、フィリピン、ベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて|ベトナム人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて|看護師・介護福祉士候補者の資格取得までの流れ(PDF)
日本語ボランティアをしている関係で、この問題について何度か研修を受けてきましたが、事態は改善するどころか、かなりまずい状況になっているようです。
まず、日本語の難しさもあって、合格率が極端に低いことがあります。最近の外国人看護師試験でも、合格率が9.6%に低下していました。
参考>>外国人看護師試験、合格率9.6%に低下 特例措置も効果みえず
日本語は、他言語と比較しても、文法的にはあまり難しくない(よくできている)のですが、必要とされる語彙が多く、漢字の音読み訓読みなども複雑なので、外国人にとって日本語による国家試験合格はとても難しいのです。日本で働いてもらうための試験ではなく、落とすための試験と言われても仕方が無いところです。日本語によるガラパゴス化と言っても良いでしょう。
外国人の看護・介護受入は、日本で進む少子高齢化に備えた、税金を使った投資です。天下り機関のピンハネがあったとしても、効果を上げていれば良いのですが、多額の税金を使って日本で技術や知識を身につけた外国人が、本国に返されてしまうのは馬鹿げています。試験制度など止めて、研修や実務によるポイント制等に変えるべきでしょう。
こうした費用対効果の問題に加えて、アジアで急速に進む高齢化による人材獲得競争があります。
外国人看護師・介護福祉士候補者が日本で国家資格を取得できなくても、「日本で頑張ってきたのにかわいそう・・・」ということにはなりません。日本の高度な看護や介護に関する技術や知識を身に付けた人材として、韓国や中国やシンガポールでは重宝されるからです。これでは税金の無駄遣いどころか、競争国へ補助金をばらまいているようなものです。
日本が老老介護の難民国にならないためには、日本語によるガラパゴス化から脱却して、国籍に関係なく優秀な人材が働きやすい環境を整えていく必要があります。もちろん、この考え方は、看護や介護の分野に限った話ではありません。