マイナンバーカードの発行枚数とJ-LIS(機構)の問題について

新年あけましておめでとうございます。

マニアックな内容のブログですが、本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、テレビでの報道があったようなので、マイナンバーカードの発行枚数とJ-LIS(機構)の問題について触れておきたいと思います。

高市総務大臣閣議後記者会見の概要
平成28年1月8日 総務省
http://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000453.html
総務大臣が、マイナンバーカードの交付申請及び普及への取組やJ-LISにおける情報公開制度への対応について回答しており、次のような発言が見られます。

「1月6日の時点でございますが、約320万件の受付処理が終了しています。なお、個人番号カードの交付が今週から始まったところでございます。」

「まだ処理の終了していないものも含めれば、その倍ぐらい、概ね640万ぐらいと想定されておりますので、出だしは非常に速いと思っております。」

「地方公共団体による地方共同法人でございますから、国の行政機関に適用されるような形の情報公開の制度が適用されるわけではございません。これが1点でございます。また、天下り団体といったような指摘もございますけれども、J-LISに関しまして、総務省で経験を積まれた方が行っていらっしゃると、それもこちらの方で人事権があるわけではございません。あくまでも地方公共団体の代表の方々などによって選出された方々であるということでございます。J-LISは、地方共同法人という位置付けでございますので、そこのところはまた、総務省の関与する範囲ではないと考えております。」

 

まず、マイナンバーカードの交付申請件数については、640万枚というのは非常に順調な数字と思います。国と地方の公務員が全員申請したとしても330万枚ぐらいですから、マイナンバーや電子政府関係者だけでなく、一般市民の申請も多いということでしょう。

諸外国を見ると、ICカードタイプの国民IDカードで、取得が任意なものが普及した例はありません。私の知る限りはゼロです。

目安となるのは、人口の1割程度で、日本で言えば1200万枚ほどでしょうか。

住基カードを見ると、全国では約5%の普及率とされますが、自治体によってかなりの格差があります。それでも、任意取得だと15-20%の普及で頭打ちになっています。ただし、印鑑登録カードの強制切替等を行っている自治体では、5割以上の普及率を達成しています。

こうした事例から言えるのは、諸外国で壁となっている「人口の1割程度(約1200万枚)を超えられるか」というのが一つ。次に、住基カードの普及に力を入れてきた自治体が直面した壁である「15-20%の普及(約2000万枚)を超えられるか」でしょう。

イノベーター理論におけるイノベーターとアーリーアダプター(新しい物好きの人たち)を合わせると、市場全体で約16%となり、住基カードの普及で自治体が直面した壁とほぼ同じになります。

この壁を超えるためには、先行取得した人たちの口コミ等により、マイナンバーカードが「日常的に利用される便利なサービス」であると広く認知・認識されることが必要ですが、それは恐らく難しいでしょう。

現実的には、健康保険証の強制切替(新規発行の保険証は全てマイナンバーカードとする)により、交付枚数を増やすのが良いと思います。

他方、任意の取得であっても、マイナンバーカード以上に普及する可能性があるのが、スマホ等に格納して利用できるモバイルIDです。個人的には、モバイルIDの動向に注目しています。

 

次に、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)について。

財団法人地方自治情報センター」が、マイナンバー制度の導入をきっかけに形を変えたのが「地方公共団体情報システム機構」で、略称として「機構(きこう)」や「J-LIS(ジェイリス)」と呼ばれています。根拠になるのは、地方公共団体情報システム機構法という法律で、マイナンバー以外にも多くの業務を取り扱っています。

機構については、本ブログ「マイナンバー制度における地方公共団体情報システム機構とは」でも触れてきましたが、色々と問題があり、総務省の天下り機関であるのも事実です。

実態としては特殊法人に近く、国の基盤となるマイナンバーを生成する等の業務を扱っているので、国民の監視が及ばないのは問題があります。国や自治体の情報公開制度に準じた措置が取れるよう、速やかに法改正するべきでしょう。

マイナンバー制度の健全な発展と普及には、透明性の向上が不可欠です。マイナンバー法(関連法を含む)の見直しは、利用範囲の拡大(利便性の向上)だけでなく、国民から信頼を得られるための措置(透明性・信頼性の向上)を強化していくことが大切なのですから。

 


医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会 報告書
平成27年12月10日
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106604.html
1.医療等分野の個人情報の特性、情報連携の意義
2.医療保険のオンライン資格確認の導入
3.医療等分野の情報連携の識別子(ID)の体系、普及への取組
世界に類を見ない複雑な仕組み。まずはマイナンバー制度の情報連携の運用状況を見てからですね。

関連>>レセプト情報・特定健診等情報データベースシステムにおける収集・保存データの不突合の状況等について
多数の保険者について、特定健診データをレセプトデータと突合できない状況となっていた。
 
国立がん研究センター、「全国がん登録」の業務開始 
がん登録推進法が1月1日に施行されたのを受けた。全国のすべての病院と指定を受けた診療所に対し、がんと診断された人の情報を都道府県に届け出ることを義務付け。北欧諸国では、1950年代から、がん登録が実施されており、様々な疫学的研究で役立っています。
関連>>全国がん登録|がん登録・統計[がん情報サービス]
スウェーデン・カロリンスカ研究所による疫学研究
 
マイナンバー制度(労働保険の適用徴収関係)
平成28年1月から、労働保険の届出に法人番号の記載が必要です。
という告知を、平成27年12月28日にウェブ掲載する厚生労働省を見ると、年金機構の情報漏洩も無理はないと思うのです。つまり、厚生労働省自身がマイナンバーに対応できていないと。
 
マイナンバーの記載を省略する書類の一覧(案)(マイナンバー記載の対象書類の見直し)について 財務省
①申告等の主たる手続と併せて提出され、又は申告等の後に関連して提出されると考えられる書類、②税務署長等には提出されない書類であって提出者等の個人番号の記載を要しないこととした場合であっても所得把握の適正化・効率化を損なわないと考えられる書類については、提出者等の個人番号の記載を要しないこととする。たくさんあり過ぎて大変!
関連>>平成28年度 税制改正の大綱
インターネット上でのクレジットカードによる国税の納付を可能とする制度を創設。
 
個人情報保護委員会 – PPC
個人情報保護委員会は、個人情報(マイナンバー(個人番号)を含む。)の有用性に配慮しつつ、その適正な取扱いを確保するために設置された独立性の高い機関です。
関連>>「個人情報保護委員会」への改組(平成28年1月1日)について
平成27年11月30日 特定個人情報保護委員会事務局
平成28年1月1日以降、個人情報保護委員会では、現在、特定個人情報保護委員会として担当している特定個人情報の適正な取扱いの確保を図る任務に加え、現在、消費者庁が担当している、個人情報保護法の所管、個人情報の保護及び適正かつ効果的な活用についての広報・啓発に関すること等を任務とすることとなります。
 
国税庁が公表する法人番号 基本3情報を サイバー法人台帳ROBINSに公開しました
平成27年12月17日 一般財団法人日本情報経済社会推進協会
ROBINSは、法人番号情報に加え、法人のロゴなどの画像、現住所、電話番号、ホームページのURL、商品情報、法人のPR等の情報発信とアピールができます。加えて、行政書士や社会保険労務士などの士業が情報の確認を行い、インターネット空間での「信頼できる情報」として、発信していますと。
 
サイバーセキュリティ経営ガイドライン
平成27年12月28日 経済産業省
サイバー攻撃から企業を守る観点で、経営者が認識する必要のある「3原則」、及び経営者が情報セキュリティ対策を実施する上での責任者となる担当幹部(CISO等)に指示すべき「重要10項目」をまとめていますと。技術的対策の例も掲載。
 
復興への強い思い民間から火が付いたWi-Fi網の拡大
福島市が展開する「Fukushima City Wi-Fi」は、市内の観光団体や商店街などが個別に運営していた無線LAN環境を統合し、誰もが無料でWi-Fiを利用できる環境を構築するプロジェクト。福島市の主導のもと、官民一体で推進していると。
関連>>無料公衆無線LAN「Fukushima City Wi-Fi」について
 
編集部が選ぶ、2016年を占う10大キーワード
日経デジタルヘルス編集部が新たな1年を占う10大キーワードを選出。1位は医療の番号制度で、遠隔診療、学生発イノベーション、がんの超早期発見、健康経営、健康まちづくりなどが続きます。
 
お薬手帳(電子版)の運用上の留意事項について
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長 平成27年11月27日
お薬手帳の意義及び役割、提供薬局等が留意すべき事項、運営事業者等が留意すべき事項など。エストニアの電子処方箋と異なり、電子お薬手帳が乱立して、データも散在して、トレーサビリティも確立できない方向へ進みそうです。
処方箋と薬購入データは自動的に共通データベースに記録・蓄積されるようにして、自分のデータを閲覧したり服薬データを追記したりするアプリは好きなものを選べるというのが良いのですが。
関連>>電子版お薬手帳の適切な推進に向けた調査検討事業報告書 平成27年11月
電子版お薬手帳データフォーマット仕様書 Ver.2.0
 
セックスの話題をタブー視しない、妊活アプリ世界席巻
最近の妊娠支援アプリは、月経を記録し管理するだけでなく、妊娠や避妊をしやすくするサポートを含めて、生活全般にわたるアドバイスを提供しており、ソーシャル機能で活発に情報が交換されていると。
 
RSA、盗んだ情報を現金に変えるサイバー犯罪者の手法を解説
銀行口座は150ドル~300ドルで取引。ECサイトのユーザーID/パスワードは2ドル~10ドル、ソーシャルメディアIDは5ドル(500人以上の友達がいる場合は7.5ドル)、現金化を外部に委託する際の手数料は25%~30%と。
 
指紋認証だけでATMの利用可能に イオン銀行
利用者は暗証番号を管理したり、キャッシュカードを持ち歩いたりする必要がなくなり、指紋の認証だけで現金の引き出しや預け入れなどができるようになると。トータルリコールの世界が現実に。
 
タワーマンションが認知症ケア施設になる未来
アクティブ・リビング・インターナショナルのデビッド・コリンズCEOに聞く
日本では施設に補助金などが出ますね。ここの部分も変える必要が必要でしょうか。
コリンズ:私はコミュニティを運営する立場ですが、政府ではなく利用者が私どもに料金を支払ってくれるのなら、利用者の希望に沿ったサービスの提供を検討できますし、そのために料金を自由にコントロールできます。政府がシニア対応にかかわる必要はあると思いますが、政府がシニア向け事業をする必要はありません。お金があるから、それを使うためにサービスを提供するのではありません。必要なサービスを必要な人に届けるため、必要な方からお金をいただくのです。
保育園や幼稚園でも同じことが言えますね。
 
医療ビッグデータ、この1年―― 実臨床へ歩みだすゲノム医療
特定地域の住民を対象に、遺伝的要因や生活習慣と疾患の相関を長年にわたって追跡調査するコホート研究。一般向け遺伝子検査サービスで集めたデータの品質が従来のコホート研究に劣らないと。
 
日立、ビッグデータで福岡市の地域包括ケア支援
データ集約、データ分析、在宅連携支援、情報提供はeヘルスに欠かせない機能ですが、自治体レベルで終わってしまうのが日本の課題ですね。
 
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び行政手続
における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律
の整備等に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令の公布につ
いて
平成28年1月1日以降、介護保険法施行規則に基づく申請事項等に個人番号を追加することとされた。
 
2016年1月以降の長期国債買入れの運営について
2015年12月18日 日本銀行 金融市場局
毎月8~12兆円程度を基本とする。ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。今年も日銀による国債買入れは強化され、市場にほとんど出回らず、低金利が続きそうです。
関連>>日本の国債の保有者内訳をグラフ化してみる(2015年)(最新)
海外比率は9.8%に。
 
全住民情報など約18万件持ち出しの職員に停職1カ月、熊本県西原村
全住民情報を持ち出しても停職1カ月で済むのが、自治体の個人情報管理の現状。不正閲覧・持ち出し天国を改めて、少なくとも停職後にどのような職場に復帰するかを公表するべきでしょう。
 
同姓同名で国民健康保険料を3年間誤徴収 70代男性の口座から101万円 和歌山市
誤って徴収した保険料などを返金するとともに、口座振替の全約2万8千件についても、ミスがないかを確認すると。マイナンバーが銀行口座に紐づくのはかなり先の話なので、今後も同じようなことが起きるでしょう。
 
マイナンバー「対応せずとも罰則なし」?対応しない企業は番号法違反
個人情報保護法の運用を見ても分かるとおり、この手の間接罰が適用されるケースは稀で、マイナンバー法上は実質的に「対応せずとも罰則なし」と言えるでしょう。税法上の罰則には要注意です。
 
標的型攻撃の侵入は防ぎきれない、モニタリングの充実で早期把握を
国と地方の公的機関におけるモニタリングが強化されるのは良い傾向ですね。