つぶやき電子政府情報(2014年8月7日):マイナンバーへの誤解は丁寧に説明することが大切

「個人番号カードに健康保険証を取り込む方針」マイナンバーセミナーで向井審議官
日経コンピュータが開催した「マイナンバー対応実践セミナー」の講演のレポート記事です。
 
この中で、実質的にマイナンバー制度のスポークスマンの役割を担っている、番号制度担当室長の向井審議官の発言は、ネット上でも話題になっているようです。
 
マイナンバーの医療分野での活用については、『医療IDは機関別符号に他ならないのではないかと考えられる』といった発言がありますが、医療IDは「機関別符号」ではなく「分野別符号」と言った方が良いでしょう。
 
他の発言として、
 
『金融機関の預貯金口座への付番が議論されているのは、預金者の身元確認をするためで、政府が逐一、預金残高を把握するものではない。税務調査で不正の把握が進んだり、金融機関が破綻した場合に預金保険制度に基づいてマイナンバーで名寄せする例が考えられる。』
 
預貯金口座へのマイナンバー付番(紐付け)は、よくある誤解の一つですね。
 
「個人の預金口座を特定すること」と「口座の預金残高を把握する」ことは全く別物なのですが、預貯金口座にマイナンバーが紐づくことで、「口座の預金残高を政府や税務署に把握される」と考える人がいるようです。
 
実際には、行政が法令に定められた業務を処理する上で、「個人の預金口座を特定すること」ができても、「口座の預金残高を把握する」ことは通常できません。では、どうするかと言えば、「本人に自己申告してもらう」や「本人に残高証明や通帳のコピー等を提出してもらう」といった形で、業務に必要な範囲で預金残高情報を本人経由で教えてもらうことになります。
 
ただし、悪質な脱税や税金滞納等があった場合や、振込み詐欺等の犯罪捜査に必要な場合は、法令に定められた手段により、本人を経由しないで預金残高を把握されることがあります。
 
これは、マイナンバー制度と関係なく、今でも当然行われていることですが、マイナンバーを活用できれば、より少ないコスト(税金)でできるようになります。
 
なお、株取引等を行う証券会社の口座については、現行のマイナンバー法で口座への紐付けが既に決まっていますが、この場合も残高が税務署等に筒抜けになるわけではありません。
 
こうしたマイナンバー制度に対する誤解については、丁寧に説明して理解者を増やしていくことが大切です。
 
マイナンバー制度に反対する人の意見を変えるのは非常に困難ですが、制度を正しく理解してくれる人を増やすのは、それほど難しいことではありません。
 
 
さて、向井審議官の発言には、次のようなものもあります。
 
『個人番号カードに内蔵するICチップの空きスペースに健康保険証の記号番号を入れて機能を付加すれば、健康保険組合のある民間企業などの事業所単位で個人番号カードを配るという普及策も考えられる。』
 
個人番号カードに健康保険証の機能を付加することについては、今から10年ほど前に作成された「住民基本台帳カード・国民健康保険証等連携検討会報告書(PDF)」が参考になるでしょう。
 
この報告書の結論を言えば、「住基カードと健康保険証の連携は難しい」というものですが、これはあくまでも当時の健康保険の運用状況を前提としたものです。健康保険証の券面や裏面に書いてある項目を、住基カードの券面に全て記載することなど、そもそもするべきではありませんし、住基カードと紙の健康保険証を両方持参するなど、利用者視点から離れすぎています。
 
もし、個人番号カードに健康保険証の機能を付加して、社会コストを減らし、本気で国民の利便性を向上したいのであれば、次のような施策が必要でしょう。
 
・個人番号カードと健康保険証は一枚化する(二重の手間にしない)
・デジタル処理を前提とした運用に切り替える
・カードの券面情報で被保険者資格確認をしない
・全ての医療機関等にカードのデジタル処理対応を義務付ける
・「個人番号カードに保険者識別シールを貼付する」といったデジタルに逆行することは徹底的に排除する
 
全国の医療施設は、数にして18万にも満たないですから、政府で全額補助しても、資格確認等が効率化されれば数年で元が取れますね。
 
個人番号カードやマイナンバーの活用は、行政の基本的な考え方や仕事のやり方が、デジタルへ移行しないままでは、表面的なものに終わってしまいます。これまでの発想を捨てて、デジタル処理を前提とした業務改革ができるかが問われることになりますが、その試金石として「個人番号カードと健康保険証の一枚化」は良い事例になるでしょう。
 

 
識別子ごとに異なるプライバシーへの影響度、履歴の扱いにも注意
識別子(ID)は、利用時間(長さ)と範囲(広さ)に加えて、深さも考える必要があるでしょう。医療情報で言えば、レセプト、処方箋、診療情報、病歴、遺伝子情報と、どこまで深堀しているかということです。
 
もう一つ、主体と識別子との関連付け(紐付け)の正確性も重要です。マイナンバー制度でも、いわゆる「初期突合」の大変さが話題になりますが、必ずしも「識別子が同じ=同一人物である」というわけではなく、「識別子が同じ=同一人物である可能性が高い」ということなのです。
 
ですから、手術における患者の識別など、別人との取り違えが重大な損害を招くようなケースでは、識別子はあくまでも個人を特定・識別するための一つの参考情報として取り扱う必要があります。
 
本人の権利義務に関係する行政事務の処理においても、マイナンバーは同じだが、他の本人識別情報(氏名、住所等)が異なる場合は、システム上でその旨の警告が表示されるなど注意を喚起した上で、より慎重な事務処理が求められることになります。
 
重要なのは、識別子の正確性が、プライバシーよりも優先すべき、個人の生命や健康等に重大な影響を与える可能性があるということです。
 
プライバシーの観点から識別子に対して過剰に反応し、安易に識別子の変更や本人との関連付けの断絶を認めることは、社会コストの増大を招き、結果として本人やその家族の権利利益が守られないことになりかねません。
 

 
EU当局、「忘れられる権利」めぐるグーグルの対応を非難
米グーグルが記事の削除対象を欧州のサイトに限定したことで、欧州の個人情報保護局から非難を浴びていると。強力な権限を与えられた個人情報保護局(第三者機関)や「忘れられる権利」の暴走は要注意です。彼らに強力な権限を与えることのリスクは、常に認識しておかなければいけません。彼らの権限が強力になればなるほど、それを政治や外交上の目的で利用したいという欲求が高まるのですから。
 
2012年の特許庁システム開発中止、開発費全額返納のなぜ
こうした不透明な裁定が常態化すれば、「政府システムへの入札はハイリスクに過ぎる」として、優秀なIT企業ほど入札を手控えるような事態になりかねないと。
関連>>特許庁システム全額補償の結末の裏に電子政府5000億円市場
少なくとも、現行ベンダーを巻き込んで、あらかじめ現行システムのシステム要件定義書は成果物として納品させてくださいと。これは全くその通りで、成果物の納品に加えて、システム移行に関する協力義務を契約に明記するべきでしょう。
トンデモ“IT契約”に騙されるな、システム更改やデータ移行への配慮も必要
 
「特定個人情報保護評価書(全項目評価書)(案)」に関する意見募集の結果について(平成26年8月1日) 地方公共団体情報システム機構
7の個人及び団体から計29件の意見があり、意見に対する機構の考え方を提示。意見を踏まえ、必要な見直しを行った上で、「特定個人情報保護評価書(全項目評価書)」を特定個人情報保護委員会へ提出しますと。ログの取得や管理、チェック・監査方法等について意見を踏まえた修正があったようです。
関連>>ベネッセ問題に見る日本のITセキュリティ対応の未熟さ
SIEMとは、企業に関わる、全ての“IT存在”のログをリアルタイムで収集し、“IT存在”へのログイン者のID、その人の役割と権限、そして、その人のアクセスルート&ポイント等の情報、つまり“誰が、どこで、何をしたか?”、そして“その人の通常の行動パターンと同じか否か?”(時間帯、アクセスした場所等の時空要因も含めて)などのいわゆる“Big Dataベースのアイデンティティ管理”と多元相関分析をリアルタイムで行い、出た結果を遅滞なくレポートラインに自動的に知らせることができるシステムであると。
 
保険契約者、どこへ 死亡や転居――受取人捜しも難航 震災きっかけに調査
転居したことを保険会社に届け忘れたり、通知も勧誘などと誤解されて開封されなくなったりして、保険会社が接触できなくなる契約者が増えていくと。マイナンバー制度を活用した最新住所情報等の共有を進めれば、本人からの変更届等が不要になり、受取人捜しも今よりは楽になるでしょう。
 
健康・医療戦略(PDF) 平成26年7月22日閣議決定
医療関連分野については、個人情報を含む医療情報等の利活用に関する整備のため、国民の理解を前提として、医療等分野におけるマイナンバーなどの番号制度基盤の活用検討、医療情報の活用に係る社会的ルールの明確化とともに、民間活力を利用した持続可能なデータ利活用制度の設計を行うと。
 
「健康意識に関する調査」の結果 平成26年8月1日 厚生労働省
ふだんの健康状態について、自分を「非常に健康だと思う」と答えた人は7.3%、「健康な方だと思う」と答えた人は66.4%おり、合わせて73.7%の人が自分を健康だと考えていたと。幸せの感じ方を見ると、まさに「健康第一」と考える人が多いようです。
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警視庁、送検時の一部証拠の隠ぺいが発覚 事件ねつ造、被害者女性の個人情報漏えいか
この事件自体が以前から酷いと指摘されているものですが、警察・検察による事件ねつ造行為も加わり、目に余るものがあります。しかし、この「東証一部上場の大手企業C社」に働いている人(特に女性)は、事件のことをどう思っているのでしょうか。とりあえず電子政府からは、こうした企業を排除して欲しい。
 
許せない政治家の自身政治団体への寄付金控除 — おときた 駿 
例えば実際にお金がなくても、「私は2千万円寄付した。そして政治団体が5万円以下でそれを使い切った」ということにして収支報告書をつければ、1円もお金を動かしてなくても、相応の還付金が返ってくることになると。これは、さすがにまずいでしょ。
 
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会(第1回)
平成26年7月31日 総務省
パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱、行政機関等個人情報保護制度の概要、行政機関等が保有する個人情報の適切な管理の徹底について(通知)、検討の論点など。今年の10月に制度改正の方向性について議論し、取りまとめを行う予定。行政機関等個人情報保護制度の概要を説明する総務省の資料(PDF)はオススメです。
 
本研究会の検討事項は、
・行政機関等が保有するパーソナルデータの特質を踏まえた、利活用可能となり得るデータの範囲、類型化及び取扱いの在り方
・行政機関等が保有するパーソナルデータの特質を踏まえた、保護対象の明確化及び取扱いの在り方
・総務大臣の権限・機能等と第三者機関の関係
面倒なことは「第三者機関」に押し付けて、省庁間の権限・縄張り争いをするようなことは止めて欲しいのですが、その可能性は高いかな。
 
 
官公需情報ポータルサイト
中小企業庁が提供する、国・独立行政法人、地方公共団体等がホームページ上に掲載している入札情報を検索するサイト。こうしたサービスを以前は人海戦術で民間事業者等が行っていましたが、政府がサービス提供してくれるようになりました。将来的には、全ての国・独立行政法人・地方公共団体にオープンデータ化が義務付けられて、データを活用した様々な民間サービスが生まれるのが望ましいですね。
 
オープンデータガイド ~オープンデータのためのルール・技術の手引き~ 第1版
2014年7月31日 オープンデータ流通推進コンソーシアム
オープンデータの作成・整形・公開に当たっての留意事項等を「利用ルール」と「技術」の2つの観点から整理し、本編と概要編を公開。 Getting Started: オープンデータをはじめよう、利用ルール編: データに利用ルールを設定しよう、技術編: 機械判読に適したデータにしよう、付録で構成。オープンデータ入門書としても使えますね。
 
エンタープライズロール管理解説書(第2版) 
NPO日本ネットワークセキュリティ協会(アイデンティティ管理ワーキンググループ)
「エンタープライズロール管理」について、その基礎となる考え方や実施の意義、ID管理システムを導入するにあたって同時に検討すべき「ロール管理」についての、実用的な導入指針として。実際のロール管理の実装ステップをステップごとに解説し、ロール管理の仮想企業導入事例を紹介。
 
情報アーキテクチャ(IA)とナビゲーションの違い
Webサイトのナビゲーションはユーザーインタフェース要素の集合体である。ナビゲーションの主な目的はユーザーが情報や機能を見つけるのを手助けして、望ましい行動を彼らに取らせることであると。
 
社会保障・税番号制度の導入 国税庁レポート
税分野での利用は、「番号法整備法」に基づき、所得税については平成28年分の申告書から、法人税については平成28年1月以降に開始する事業年度に係る申告書から、法定調書・申請書等については平成28年1月から番号記載が開始されることになります。
税務分野においては、確定申告書、法定調書等の税務関係書類に番号が記載されることから、法定調書の名寄せや申告書との突合が、番号を用いて、より効率的かつ正確に行えるようになり、所得把握の正確性が向上し、適正・公平な課税に資するものと考えています。
他方で、番号を利用しても事業所得や海外資産・取引情報の把握には限界があり、番号が記載された法定調書だけでは把握・確認が困難な取引等もあるため、全ての所得を把握することは困難であることに留意が必要です。
 
第27回創業・IT等ワーキング・グループ 平成26年7月23日
民法(債権関係)の見直しについて。時効期間のシンプルな統一化、法定利率の見直し、保証人の保護、約款ルールの明記、意思能力の規定の新設、損害賠償の免責事由の明確化、売主の瑕疵担保責任の明確化、賃貸借終了時のルール明確化など。法曹界からの反対がすごいけど、これは一部の意見なのかな。
関連>>第35回規制改革会議
創業・IT等ワーキング・グループからの報告(タクシー規制)など。
 
 
「災害時等の情報伝達の共通基盤の在り方に関する研究会」報告書の公表及び「公共情報コモンズ」の新たな名称の決定 平成26年8月1日
国民に分かりやすい名称という観点から、新たな名称「災害情報共有システム(Lアラート)」を決定。
 
 
生活保護に関する実態調査 <結果に基づく勧告> 平成26年8月1日
生活保護の実態を明らかにし、生活保護を要する者への適正な保護、生活保護受給者に対する就労・自立支援等の効果的な実施を図る観点から、生活保護の現状・動向、生活保護行政の実態等を調査し、その結果を取りまとめ、必要な改善措置について勧告。「金融機関等に早期照会対応について要請」といった勧告も。実態に即したマイナンバー制度の活用が必要ですね。
 
 
世界初の「NEDOロボット白書2014」を公表
―ロボット技術による社会的課題解決の処方箋を提言―
2014年7月17日 新エネルギー・産業技術総合開発機構
少子高齢化による介護労働力などの不足を補う介護ロボットや地震や台風などの自然災害における人命救助を行う救助ロボットなど、今後、市場規模が飛躍的に拡大されるサービスロボット、フィールドロボット分野等の技術開発指針と活用例を提言。
関連>>平成26年8月1日概略と全文のPDFを掲載いたしました。
 
反原発派の「魔女狩り」
魔女狩りを終わらせたのは近代科学ではなく、寛容だったと本書はいう。魔女を信じる人は信じればいいが、他人に強制すべきではないし、国家は彼女を処刑してはいけない――そういうジョン・ロックの自由主義が戦争に疲れた人々に受け入れられ、中世の混乱を終わらせるきっかけになったと。私の基本的な考え方においても、「寛容」は、「中庸」と共に、中心的な役割を担っています。どちらも、意識していないと、ついついそこから離れてしまうので。。
 
子ども・若者育成支援推進大綱(「子ども・若者ビジョン」)の総点検 報告書(PDF)
平成26年7月
子供・若者のライフサイクルから見た課題、ライフサイクルを踏まえた「縦のネットワーク」構築の必要性、一元的な相談窓口(「子ども・若者総合相談センター」)の在り方、地域における多様な担い手の育成、情報化社会に対応した保護者に対する支援・啓発の充実強化や子供・若者のメディアリテラシーの育成、虐待死事例の検証に対する評価とデータ整備の充実強化など。データやエビデンスの重視でIT活用の機会が増えそうな分野です。
関連>>子ども・若者育成支援推進点検・評価会議
 
第3回 リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会
2014年8月1日 食品安全委員会
食品企業が提供する資料にある「牛乳の放射能汚染で経験したこと」からわかるのは、リスクコミュニケーションの難しさであり、企業や行政が思い描くようなシナリオ(消費者の理解や反応)は期待できない、ということでしょうか。やはり時間をかけて、地道に誠実にコミュニケーションを続けていくしかないようです。マイナンバー制度も同じですね。
関連>>リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会
食品を科学する ― リスクアナリシス(分析)連続講座
平成26年6月5日 食品安全委員会
この講義資料は、とても良いですね。電子政府やマイナンバー制度におけるリスク分析でも参考したい内容です。
 
 
 
 
ICTを活用した地域医療ネットワーク事業(補助事業)の二次公募を開始
地域医療連携において、中核的な役割をもつ病院などの安全な地域にデータサーバを設置し、異なる都道府県に所在する連携医療機関における医療情報システムの主要データを別途標準的な形式で保存する事業者に対し、経費の一部を補助(補助率1 /2)。公募期間は平成26年7月28日から9月16日まで(郵送必着)。
 
病院の中をITが変える──スマホで呼び出すITナースコールやRFID認証など
データ収集の自動化、クラウド前提の情報保存・共有、スマホやタブレットによる情報確認などが当たり前になりそうですね。
 
「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書 平成26年7月30日
労働者のワーク・ライフ・バランスの実現などのため、いわゆる正社員から多様な正社員へ転換できることが望ましい。他方、キャリア形成への影響やモチベーション維持のため、いわゆる正社員への再転換ができることが望ましいと。「多様な正社員」とか変な用語を作る前に、正規雇用と非正規雇用の均衡処遇を図るべきでしょ。
関連>>非常勤講師の44%が年収250万円以下の高学歴ワーキングプア
 
(2014年6月)小学校社会科教科書「我が国の歴史」に関する検定結果(平成25年度)
こんな風に検定されているのね。けっこう笑えます。
指摘事項:有力な貴族たちは、…遊びを楽しんだりして、優雅な毎日を送っていた。
指摘事由:平安時代の貴族の実態について誤解するおそれのある表現である。