複雑なマイナンバー制度で増大する社会コスト

利用している金融機関だけでなく、仕事関係でもマイナンバー提出を求められることが増えてきました。紙処理なので、提出書類としてマイナンバーカードの写しを提出したいところですが、申請から半年経っても肝心のカードが交付されていません。考えてみれば、これらほとんどの作業はエストニアでは発生しない(必要ない)ものであり、社会コストを増加させることについて、日本は先進国だなあと改めて思うのでした。
 
マイナンバー よくある質問(FAQ)
Q4-2-2 従業員や金融機関の顧客などからマイナンバーを取得する際は、どのような手続きが必要ですか?
A4-2-2 マイナンバーを取得する際は、本人に利用目的を明示するとともに、他人へのなりすましを防止するために厳格な本人確認を行ってください。
 
しかし、よくよく考えてみれば、持続不可能な社会保障制度の改革を先送りして、毎年何十兆円もの借金を増やしていく政府にとっては、たかだが数千億円のコストなど些細な手数料みたいなもので、複雑なマイナンバー制度で必要ない仕事が増えれば、そこから生まれる経済効果の方がわかりやすいので、増え続ける社会コストは見て見ぬふりをした方が、みんなが幸せになれると思っているのかもしれません。
 
平成28年5月20日付けで、「世界最先端IT国家創造宣言」が改定されましたが、今の日本に必要なのは「重複・二重化を避けるための意思決定の仕組み」であると思いました。不要な業務やシステムを可能な限り減らして、そこから生まれる余剰資金や人材をイノベーションや生産性向上に投資できるようになることを願います。
 
世界最先端IT国家創造宣言改定 平成28年5月20日
同工程表等と合わせての改定。創造宣言に基づく取組は、国や地方で着実に成果が出ているところ、今般の改定においては、その成果を「国から地方へ」、「地方から全国へ」と横展開することにより、「一億総活躍」等、安全・安心・快適な国民生活の実現を目指すと。データに焦点が当たるのは良いことですが、まずはデータガバナンスの仕組みを見直して欲しいですね。
関連>>「世界最先端IT国家創造宣言工程表 改定」
官民ITS構想・ロードマップ2016
【オープンデータ2.0】官民一体となったデータ流通の促進
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(第69回)
坂村本部員の意見は興味深いですね。
 

 
菓子折もって、ヒアリングや調査にくるのやめない?!
フリーランスで音楽の仕事をしているので、仕事を依頼されるときには、ギャランティの話は最初にするのが常識だが、NPO?あるいは行政の業界?は、ギャラの話をあまり最初にしないようだと。フリーランスの立場としては、こうした話はどんどん取り上げて欲しいところ。先方まで行って1時間お話しするとほぼ半日つぶれますので、それで交通費自腹でギャラ0円だと、感覚的には「1万円あげて話を聞いてもらう」のと同じなんですよね。
 
携帯のGPS情報、本人通知なしで捜査利用 一部新機種
総務省が昨年、個人情報保護ガイドラインを改定し、本人通知を不要としたことを受けた措置で、機種は今後順次拡大していく見通し。犯罪捜査に役立つ一方、プライバシー侵害の懸念もあると。GPS情報を捜査で使う(役立つ)なら、本人通知を不要とするのは当然ですよね。
大切なのは、「捜査終了後(起訴・不起訴の決定後)に本人による情報開示請求等ができること」を法制度として確立することです。事後的に「適切な令状に基づくGPS情報の利用であったか」「捜査に関係ない人がGPS情報を閲覧していないか」等を確認できる仕組みが大切で、デジタルフォレンジックは警察機関等の内部監査でこそ活用されるべきなのです。
 
ブロックチェーンはなぜ“破壊的”なのか―3つの要素から考えるビジネス活用
グロコムの高木聡一郎さんによる連載2回目。主体の紐付けは重要ですね。
関連>>ブロックチェーンは次世代のインターネットになるか
 
最先端社会・スマートネイション実現のための提言  新経済連盟
1. データの利活用
2. デジタルファーストの徹底
3. 新経済・新産業発展のための環境整備
4. マイナンバー制度の利活用
 
「新産業構造ビジョン」~第4次産業革命をリードする日本の戦略~
産業構造審議会 中間整理  平成28年4月27日 経済産業省
現状認識の資料として良いですね。AIを活用した皮膚病診断支援システムの開発:提携皮膚科医を活用し、スマホアプリを通じて送られた患部の写真と問診情報をもとに、無料で皮膚病の診断支援サービスを提供する「ヒフミル」を開発。健康/医療関連データの利活用により、各個人に見合った健康・予防サービスを提供する事が可能に。
エストニアの新しいeヘルス戦略でも、「医療従事者の意思決定支援」や「個別化医療」は重要なテーマの一つです。
関連>>エクスメディオ: 医師向け簡単無料の診断治療支援サービス
Estonian Biobank Genetic (personalized) medicine
Estonian Personalised Medicine Pilot Project evaluation methodology
 
重要インフラ事業者等の外部サービスへの依存性に関する調査報告書
2016年3月 内閣官房 内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)
重要インフラサービスのサービス維持レベルに影響を与える可能性がある外部サービスを洗い出し、重要インフラサービスの外部サービスへの依存状況や外部サービス提供事業者と重要インフラ事業者等との関係についての調査を実施。
重要インフラ事業者等は、利用する外部サービスを特定した上で評価を行い、その評価に応じたリスクマネジメントを講じることが重要。
重要インフラサービスへの影響度が高く、かつ、提供事業者との関係性が弱い外部サービスに対しては、重要インフラ事業者等が各自でリスクマネジメントを行うことが困難であるため、提供事業者をセプターに含めて分野内での情報共有を強化するなど、関係者同士が連携してリスクマネジメントを行うことが望ましいと。
 
個人情報保護法の改正とデータサイエンスの新潮流
オペレーションズ・リサーチ  5月号 2016年
個人情報保護法の改正とデータを用いた学術研究
パーソナルデータの保護と利活用―改正個人情報保護法とその影響―
医療情報学における個人情報保護法改正の影響
健康ビッグデータ解析による認知症等疾患予兆発見と予防法開発への取組 など
調査研究まで含めて作られた個別法の例として,「がん登録等の推進に関する法律が挙げられる.同法では,がんに関わる調査研究を推進する目的で,全病院と一部診療所に全がん症例の報告を、市町村長に死亡者情報票の提出を義務づけており,収集されたデータは,厚生労働大臣,都道府県知事,市町村長,病院,その他に研究目的で供されることとされており,個人情報を本人同意なく取得し,第三者提供することを可能としている。
関連>>がん登録等の推進に関する法律
 
第16回新戦略推進専門調査会電子行政分科会 平成28年3月30日
政府情報システムのコスト削減の取組状況、世界最先端IT国家創造宣言の見直しなど。ハローワークシステムの運用経費470億円(H25年度)は、3割減らしても年間300億円超で、エストニアの年間IT予算の5倍ほど。
 
Estonia hits the 10000 e-resident milestone
エストニアのe-Residency(電子居住)取得者が1万人を突破したと。次の目標は、次はエストニアの人口5%(6.5万人)あたりでしょうか。
 
Slovenia modelling new eHealth services
スロベニアの公衆衛生研究所が、OpenEHR標準を採用した患者データベース(関節形成術)を構築すると。臨床専門領域のデータベース(レジストリ)はエストニアでも進んでいます。
関連>>What is openEHR?
 
なぜ「行政府の長」は立法府に口を出せないのか — 池田 信夫
先月も同じ失言をして、議場で指摘されるとすぐ「行政府の長」と言い直したので、これは単なる言い間違いだが、かなり大きな問題を含んでいると。
日本の国会運営は、議院内閣制を採用する国としてはかなり特殊で、よくわからない非効率な慣行が多いんですよね。デジタル社会にふさわしい形で、本来の議院内閣制へ移行していくのが望ましいでしょう。
関連ブログ>>法令のオープンデータ化で官僚内閣制から議院内閣制へ
オープンデータが本格的に普及していく現在は、オープンガバメントやデジタル社会に対応した法令の更新・維持管理システムを再考する時期でもあります。法令のオープンデータ化が進み、立法過程の多くが自動化されていくことで、日本が官僚内閣制から議院内閣制へ移行することが可能になるかもしれません。
 
日本の独自防衛をシミュレーションしてみた/栗崎周平氏(早稲田大学政治経済学術院准教授)
もし日本が日米同盟を解消し、自力で国防を担うことになった場合、仮に他の条件が現状と同等だとすると、そのコストは毎年23兆円を超えると、防衛大学の武田康裕教授らは試算。日本の軍事費は、対GDP比ではG8の中でも少なく、日米同盟のおかげで安全維持の費用対効果は高いと言えるでしょう。今後については、国民の選択ですね。
関連>>ビジネスライクに考えた日米同盟の経済コスト
 
会員企業に対して提供する無料宿泊サービスに係る旅館業法の取扱いが明確になりました
照会の事業範囲においては、事業者が宿泊料金を徴収せず人を宿泊させることから、「旅館業」には該当しない旨の回答を行いました。
 
第1回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会 平成28年4月25日
データヘルス時代にふさわしい質の高い医療を実現するため、
(1)データヘルス事業の推進など保険者機能を強化する新たなサービス
(2)マイナンバー制度のインフラ等のICTとビッグデータを活用した医療の質、価値を飛躍的に向上させる新たなサービス
(3)ICT の活用による審査業務の一層の効率化・統一化と審査点検ノウハウの集積・統一化等
について検討する。併せて、新たなサービスを担うにふさわしい組織・ガバナンス体制について、既存の業務・組織体制を前提とせずに検討すると。厚労省から「医療保険におけるICTの活用等の現状」資料が出ています。個人的には、複雑で柔軟性の低い医療制度と医療保険制度が医療ICT化を遅らせていると理解しています。
 
Study: Cross-border eGov services low on agenda
デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける国境を越えた電子政府サービス利用を実現するためのeIDと電子署名に関する研究報告を紹介。国家eIDのインフラが相互接続されていない。EUのeIDAS規則も不十分であると。 
関連>>Survey and recommendations for cross border cooperation