医療とマイナンバー、「マイナンバーと医療番号を使い分けることによるリスク」に注意!

 

医療とマイナンバー
安達和夫 (著), 榎並利博  (著), 金子麻衣 (著), 中野直樹 (著)
日本法令

第1章 日本の医療システムの現状と課題 
第2章 マイナンバーで変わる医療
第3章 医療へのマイナンバー導入における議論と展望 
第4章 海外における社会保障制度を支える番号制度

富士通総研の榎並さん、EABuSの安達さんらによる、医療分野のマイナンバー制度に関する書籍です。

患者を正確に識別・特定するための番号制度の必要性については、医療関係者の間では長年指摘されてきましたが、ようやく日本でも医療・介護分野で利用できる番号制度が実現されそうな気配です。

心配なのは、本書でも指摘されている「マイナンバーと医療番号を使い分けることによるリスク」ですが、なぜか日本では「マイナンバーを医療番号と同じにすることによるリスク」ばかりが一部の人たちによって声高に主張されているように思います。

北欧諸国、エストニア、オランダなど、公共分野で広く利用される個人番号を医療分野でも同じように利用している国は珍しくなく、EUやOECDでeヘルス先進国として認識されている国の多くは、個人番号を医療番号としています。つまり、彼らは「個人番号を医療番号とすることによるメリット」を享受しながら、同時に「リスクと上手く付き合う方法(許容できる範囲でコントロールし、改善・見直しを続けていく)」を確立しており、そのことを多くの国民が理解し支持しているのです。

よく言われる「名寄せ」の問題についても、「正確に名寄せされないことによる被害」の方が深刻で、制度を複雑にすれば、リスクをコントロールすることがより難しくなるでしょう。

日本における医療番号制度の実現には、しばらく時間がかかりそうなので、よりシンプルでわかりやすい(=透明性の高い)仕組みにして欲しいと思います。