つぶやき電子政府情報(2014年11月8日):マイナンバーで確実なコスト、約束されないメリット
個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会(第3回)
平成26(2014)年10月29日
マイ・ポータルを活用したプッシュ型情報提供・電子申請について。
北九州市から、情報システム再編や窓口ワンストップサービスについて資料が提出されています。本来は、国レベルで、北九州市の「ワンストップサービスを実現する統合データベース」が実現できると便利なのですが。。しかし、北九州市のように庁内連携・情報共有によるワンストップサービスをすでに実現している自治体は、マイナンバーや特定個人情報が入ってくると、かえって混乱して事務の非効率化や重複・負担を招く恐れもあります。
本ブログでも何度か指摘していますが、マイナンバー制度の導入で確実なのは「コスト」だけです。金額にして初期投資が数千億円、維持費が数百億円と言われており、諸外国の電子政府関連投資と比べても非常に高額です。日本の政府・公共系情報システムは、電子政府先進国より一桁か二桁も高いのですね。例えば、スペイン政府(人口5千万弱)が最近発表した医療情報システム開発への投資金額は約120万ユーロで、日本にして数億円。日本だったら、小さな実証実験で終わってしまうような金額です。
Spain to invest in health information systems
さて、こうしたマイナンバーへの投資に対して、メリットは明確ではありません。政府が掲げるマイナンバーのメリット(PDF)は、添付書類の削減
等の国民負担の軽減、より公平で正確な給付、生活保護の不正受給の防止、社会保障に関する自己情報等の入手などで、どれもパッとしません。しかも、これらのメリットは、「実現するかもしれない」といったレベルのもので、きちんと実現するのかまだわかりません。
他方、マイナンバー制度の導入に伴うコストは、既に政府の予算に組み込まれており確実です。また、見えにくい負担として、上記にあるような、「既にワンストップサービスや情報連携を実現している自治体サービスへの影響」があります。これから本格的になっていく、民間企業等によるマイナンバー対応のコストは、企業や国民が直接負担することになります。
番号制度を活用して電子政府で成功している国は、行政内部処理の「簡素化・効率化・自動化」を実現しており、「簡素化・効率化・自動化」を前提として、初めて優れたサービス(オンラインでも窓口でも)の提供が可能になります。
残念ながら、日本のマイナンバーは利用制限が多いため、「簡素化・効率化・自動化」よりも「複雑化・非効率化・手作業化」の傾向があります。マイナンバーのメリットを、「手続の廃止・自動化」や「添付書類の禁止」ではなく、「添付書類の削減」としているのも、マイナンバーでは「簡素化・効率化・自動化」が難しいことを、政府自身も理解しているからでしょう。
先日、厚生労働省から、児童扶養手当について告知がありました。
児童扶養手当について|厚生労働省
これまで、公的年金を受給する方は児童扶養手当を受給できませんでしたが、平成26年12月以降は、年金額が児童扶養手当額より低い方は、その差額分の児童扶養手当を受給できるようになります、というものです。
Q&A(PDF)を見ると、
・例えば、児童が1人の場合の児童扶養手当は月額 41,020 円(全額支給の場合)なので、年金等の月額がこの額より低い場合に差額を受給できます。
・市区町村では、今回の改正で新たに差額分の手当の支給対象になる方を把握していませんので、それぞれのご家庭に手続のご案内をすることができません。
マイナンバーを活用すれば、該当者を正確に特定して、自動処理で支給金額を算定し、プッシュ型で手続案内ができます。市町村が全住民の支給用口座を事前登録(義務化すれば良い)していれば、申請確認(「支給の手続を済ませますが、よろしいですか」と通知する)だけで済むようになります。
巨額の費用をかけてマイナンバーを導入するなら、本来は、児童扶養手当などは原則自動処理化するべきであり、その実現について政府がコミットする(国民に対しての約束を表明する)べきなのです。
いずれにせよ、マイナンバーの利用が始まれば、政府や自治体は、その効果について説明責任を果たすことが求められます。多額の税金投入と国民・企業負担に見合った効果を実現するためには、制度導入後の見直しも必要になるでしょう。
講演「番号制度(マイナンバー)の概要」等による個人情報保護法に関する説明会を開催します
消費者庁と神奈川県が共催する参加無料の講演会。平成27年1月22日(木)13時30分から15時30分まで、横浜市開港記念会館講堂で。内容は、消費者庁からの説明(個人情報保護法に沿った個人情報の適切な取扱い等)、 講演「番号制度(マイナンバー)の概要」(番号制度の立案を担当した弁護士を予定)、質疑応答(事前質問票に対する回答)など。
マイナンバー制度について、専用ページを設置する省庁や自治体が増えてきました。
社会保障・税番号制度について|国税庁
「社会保障・税番号制度について」が国税庁ホームページにオープンしました(平成26年10月29日)。税分野での利用は、「番号法整備法」に基づき、所得税については平成28年分の申告書から、法人税については平成28年1月以降に開始する事業年度に係る申告書から、法定調書については平成28年1月以降の金銭等の支払等に係るものから、申請書等については平成28年1月以降に提出すべきものから個人番号・法人番号の記載が開始されることになりますと。
関連>>税務関係書類への番号記載時期
社会保障・税番号制度とマイナンバー(個人番号)について|小牧市
総務部情報システム課から。
福岡市 マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)
福岡市では,マイナンバー制度の導入に向けて,全庁横断的な推進体制として「社会保障・税番号制度推進委員会」を平成26年5月に設置し,準備を進めています。福岡市の取組は,順次,このコンテンツでお知らせしていきますと。
個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会(第2回)
平成26(2014)年9月30日
個人番号を活用した情報連携のあり方(独自利用に向けた対応)について。 番号制度に関する情報共有を目的としたコミュニケーションツール「デジタルPMO」も紹介。
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第二の主務省令で定める事務及び情報を定める命令案に対する意見募集について
2014年10月30日から11月12日まで。
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会(第7回)平成26年10月28日
中間的な整理(座長試案)を公開。これで政省令が出揃いますね。
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会(第6回)平成26年10月16日
論点の整理について議論。資料として、行政機関等が保有するパーソナルデータの利活用について(“個人特定性低減データ”の導入とその場合の範囲、利用目的、規律、法制的位置付け等)、論点の整理、検討の論点など。検討の論点として、パーソナルデータの利活用、パーソナルデータの保護対象、第三者機関の権限・機能等。この研究会って、どうも方向性がずれてる感じがするんですよね。
電子政府の観点で言えば、次の2点が重要です。
・行政が保有するデータ(個人情報に限らない)を官民の組織や地域を超えて、法令で定められた業務(介護・福祉や災害予防等)を遂行する上で、迅速かつ効率的に情報交換・共有・利用できること
・行政が保有するデータが、正確性等の一定の品質を維持した上で、デジタル社会対応の形で保存・管理されて、適切にアクセス制御されていること
「個人特定性低減データ」なるものは、再特定が可能であれば、それは「個人情報」に他なりません。つまり、「個人特定性の低減」というデータ加工は、アクセス制御の一手法に過ぎないということです。再特定が禁止された「個人特定性低減データ」は、アクセスが禁止された「個人情報」であり、「個人情報」としては使えないので、そのニーズは統計データやオープンデータに対するニーズと近いものになるでしょう。
「個人特定性低減データ」のニーズが高まることが確実なのは、医療分野ぐらいでしょう。これは「医療費・社会保障費の増大を抑制しなければいけない」という最優先の社会的ニーズがあるからです。ただし、その場合も、再特定を禁止した「個人特定性低減データ」ではなく、一定の条件の下で再特定が許可される「個人特定性低減データ」という扱いになります。つまり、アクセスが禁止された「個人情報」ではなく、アクセスが厳格に制限された「個人情報」ということです。
個人的には、個人情報保護法は、もっと保護(ブレーキ)役に徹して良いと思っています。その一方で、情報へのアクセスや利用(利用の義務化を含む)については別途法制度(アクセル)を整備して、両者の役割分担を明確にした上でバランスを取れば良いと思います。信頼できる高機能のブレーキがあればこそ、アクセルを踏んでけっこうなスピードが出せるということですね。
関連>>行政機関等が保有するパーソナルデータの利活用のニーズに関する意見募集
平成26年10月31日
「中間的な整理(座長試案)」では、行政機関等が保有するパーソナルデータを「個人の特定性を低減したデータ」(例:氏名の削除、年齢・住所等の属性情報の抽象化等の処理を行ったもの)に加工し、公益的目的のために提供する仕組みを導入することを提案。この提案を踏まえて、利活用のニーズを把握するため、広く国民の意見募集。11月14日(金)まで。
我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性(PDF)
文部科学省の一有識者会議が大きな話題になるのは珍しいのですが、経営共創基盤の冨山和彦氏のプレゼンテーションが取り上げられたことが大きいようです。冨山氏の考え方は納得できるので、私も著作を何冊か読んで電子政府を考える際の参考にさせて頂いてます。
冨山氏のプレゼン資料は全部で10ページ。特に話題になっているのは7ページの図と思いますが、個人的には9ページ目を今の中高生や大学生に読んで欲しいです。
「なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか」で、「大学で学んだことが卒業後の仕事を直結する」と紹介したように、北欧諸国では既に「高等教育の職業訓練校化」が進んでいます。また、流動性の高いフレキシブルな労働市場を前提としているので、学校卒業後・就職後も「技能向上を目的とした職業訓練」を受ける機会が豊富です。
同一職種同一賃金が原則なので、日本のように正規雇用・非正規雇用で差別や賃金格差が無く、高賃金を維持するために、ホワイトカラーもブルカラーも高い労働生産性と継続的な向上を目指しています。日本との違いは、人口が少なく国内市場が小さいことですが、だからこそ国際市場で通用する人材育成・確保の必要性は日本より高いのですね。
関連>>実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第1回)
経営共創基盤(IGPI).
女性記者の婚活記 めげずにサービス続けるべきか…日本経済新聞
詳しく見れば、喫煙や宗教の有無、両親や兄弟の職業や最終学歴まで分かるようになっていると。以前から、結婚相談所は、機微情報を含む最も多種類の個人情報を保有する民間サービスの一つとして有名ですが、以前よりも保有する個人情報の質や量が増加しているのかな。
ありのままでと娘の決断-87歳認知症の母、徘徊の自由で戻った笑顔
バランスの取れた良い記事なので、どこのマスコミかと思ったら、Bloombergからの配信でした。記事にある「地域にいる認知症患者は生活者」という言葉は、65歳以上の人口が4割になる2060年頃には、全ての人が当然のこととして受け止めているのでしょうね。
第8回電子行政オープンデータ実務者会議 平成26年10月24日
自治体普及作業部会の中間取りまとめ、オープンデータ関連ワーキンググループの再編、データカタログサイト「DATA.GO.JP」の本格運用開始、各府省の政府標準利用規約適用状況(適用完了率76%)など。
関連>>電子行政オープンデータ実務者会議 データWG・ルール普及WG合同会合
平成26年10月15日
DATA.GO.JP データカタログサイト
政府統計の総合窓口(e-Stat)-API機能 2014年10月31日
本格運用の開始に伴い、API機能で利用可能な統計データについて、国勢調査などの23統計約3万4千表から学校基本調査、農林業センサスなど34統計約4万表を加えた、合計57統計約7万4千表に大幅に拡大。
関連>>API機能で利用できる統計データの拡充
法務省:性犯罪の罰則に関する検討会
平成26年10月31日に第1回会議を開催。論点の整理(案)が出ています。構成要件の拡大、罰則の強化、プライバシー侵害や二次的被害の発生抑止、公訴時効の廃止・停止などへ進みそうです。
オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった
かつてレストランのウェイターやウェイトレスの仕事は機械に奪われないと言われていましたが、いまはタブレット端末で注文できるレストランが増えています。受付業務や秘書業務も同じような流れにある。今後はさらに、調理、医療、清掃、高齢者介護などのサービス産業で、ロボットが複雑な作業を担うことになるでしょうと。
欧米とは少し事情が異なる日本の場合、10年では無くならないと思いますが、多くの仕事が自動化されていく(しかも想像以上のスピードで)のは避けられないですね。
第3回高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たな在り方検討会
平成26年10月29日
報告書の作成に向けた議論の整理。生活期リハビリテーションマネジメントの再構築を進めると。「参加に焦点を当てたリハビリテーションの提供」というのは、電子政府でも参考になりそう。
関連>>「活動と参加」に焦点をあてた作業療法の紹介(PDF)
健康寿命の延伸は「攻めるリハビリ」から
入札公告(厚生労働省ホームページJIS適合試験等アクセシビリティ対応業務一式)
履行期限は平成27年3月31日、入札書の受領期限は平成26年11月14日(金) 15時30分まで。
関連>>アクセシビリティについて|厚生労働省
厚生労働省では、ウェブアクセシビリティの日本工業規格「JIS X 8341-3:2010」における等級A(シングルA)のレベルを達成するホームページ作成を心掛けています。まだ対応が十分でないページもありますが、引き続き整備を進め、アクセシビリティの向上に努めてまいります。
入札公告(海外における医療ニーズ等及び国内企業の海外進出状況等調査及び分析業務)
入札書の受領期限は平成26年11月20日(木) 10時00分まで。
関連>>健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)(PDF)
医療の国際展開 取組の現状と見通し(PDF)
福島でのリスクコミュニケーションの重要性(上)放射能より恐怖が脅威
放射性ヨウ素の場合と同じく、福島原発から放出された放射性セシウムの量もチェルノブイリに比べてはるかに少ない量でした。チェルノブイリ事故後の最大の健康被害は、被ばくによって直接生じたものではなく、放射能への恐怖によるものでした。
福島で見てきたことは、健康の問題ではなく、コミュニケーションの問題です。福島に住む人々は福島における放射能の安全性について心配しているのではなくて、放射能は安全ではないと信じている人たちとの断絶が福島の復興を妨げかねないということを意識していますと。マイナンバー制度でも、リスクコミュニケーションは重要です。