つぶやき電子政府情報(2014年12月3日):マイナンバー制度で露呈する、日本社会のボトルネック
昨日(平成26年12月2日)、第7回マイナンバー等分科会が開催されて、「電子私書箱」などが新聞各紙の話題になっています。
しかしながら、国民からすれば、各種通知を受け取れる「電子私書箱」などは、今や当たり前の話で、「今さら何を言っているのか」というのが正直なところでしょう。
私も、紙で通知を受け取るのは、役所と議員さんぐらいでしょうか。つまり、電子化やICT化の足を引っ張っているとまでは言いませんが、最もIT活用が遅れている業界の代表が役所と政治家であり、その人たちが考える電子政府がいまいちパッとしないのは、ある意味ごくごく自然なことなのですね。
マイナンバーについては、番号制度を導入している諸外国と比較して、特に利用制限が厳しくなっています。全ての個人や企業がマイナンバーをやり取りして、紙の書類や電子データで流通するにもかかわらず、一生懸命にマイナンバーを隠そう隠そうとしています。
用途を限定して、不正な名寄せやマッチングを禁止すれば良いだけの話なのに、何とも非効率で無駄な行為にお金と時間を費やすのには、正直理解に苦しみます。
医師会にいたっては、トンチンカンな理由で個人番号カードへの健康保険証(被保険者証)機能の取込には反対(PDF)と主張しています。
その理由は、「券面に個別番号が記載されているカードを医療の現場で使うことは、患者の病歴という極めてプライバシー性の高い情報が個人番号と紐付く危険性が高くなるため」とのこと。
では、病院に勤務する職員が、その病院の患者となった場合、どうするのでしょうか。
病院が保有する職員のマイナンバーと病歴は簡単に紐付けできてしまうので、診察を希望する職員に対して、「あなたの病歴という極めてプライバシー性の高い情報が個人番号と紐付く危険性が高くなるので、当病院であなたを診察することはできません!」と言って追い返すのでしょうか。それこそ患者の権利の侵害であり、本末転倒の笑い話になってしまいます。
マイナンバーは、国民健康保険や社会保険の分野で活用され、患者や利用者である被保険者一人ひとりに対して、マイナンバーが紐付けされることが既に決まっています。そうした状況で、マイナンバーと病歴が紐付けされる可能性を過剰に恐れるのは現実的ではありません。
診断記録(現物給付)とマイナンバー(現金給付)が紐づくと、病院における治療とお金の関係が透明化されて、これまでのようなグレーゾーンが無くなっていきます。ビッグデータの流れを受けたデータ分析により、すでに各病院の実力が明らかになりつつありますが、それこそ街の小さな診療所レベルで、力量がわかってしまうでしょう。それは病院単位だけではなく、個々の医師についても同じです。
このように、マイナンバーが本当に必要な情報と紐づいて活用されれば、日本社会におけるボトルネックが見えてきます。中には、見え過ぎちゃって困る人たちも出てくるでしょう。
プライバシーや個人情報の保護は大切ですが、誰も反対できない「プライバシー」の名の下に、マイナンバーとの紐付けを反対する主張には注意が必要です。
「彼らが本当に守りたいものは何なのか」ということです。
第6回 医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会
平成26年11月21日 厚生労働省
医療等分野での番号の活用に関する議論の全体像(中間まとめ案)を参考資料と共に公開。医療等IDに係る法制度整備等に関する三師会声明(石川構成員)、がん対策における番号制度の活用に関する意見書(がん対策推進協議会)などの意見も出ています。
医療等分野での番号による情報連携の利用場面として、医療保険のオンラインでの資格確認、保険者間での加入者の健診データの活用・連携、医療機関等の連携、健康・医療の研究分野、健康・医療分野のポータルサービス、全国がん登録を挙げています。
まずは、医療保険のオンライン資格確認のできるだけ早期の導入(番号制度の情報連携が稼働する平成29年7月以降)を目指し、国民の理解を得つつ、保険者・保険医療機関等の関係者との協議を通じて検討を進める必要があると。
「医療機関ではマイナンバーは使用せず、医療等分野専用の番号(マイナンバーとの関連性は不明)を使って情報連携を行う」方向へ進みそうですが、実現までに最低10年ぐらいはかかりそう。。
2016年元旦「年賀状バイト」の危機
マイナンバー開始まで1年。雇用の現場が激変する
このままだと、マイナンバー制度開始に間に合わない可能性があり、企業経営にとって重大なリスクになると。
厳しい利用制限と安全管理義務のあるマイナンバーを、持ちたがらない企業も多いと思うので、従業員等のマイナンバーの収集・管理・利用を請け負うサービスも増えそうですね。企業の方では、既存の従業員番号を使い、「従業員番号とマイナンバーの対応表を持たない」といった方法とか。つまり、マイナンバー制度の導入をきっかけとして、経理や社会保険に関するアウトソーシング市場が拡大する可能性があると。
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マイナンバー実務対応シンポジウム(議事要旨)
経団連産業技術本部
2014年11月10日開催のシンポジウムの議事要旨と資料が公開されています。こうした実務的な内容が話されるようになったことからも、マイナンバー制度の導入準備が進んでいることを実感できますね。私も勉強しなくちゃ。
企画競争(医療等分野におけるネットワーク相互運用の実現に向けた検討請負業務(企画競争))
企画書募集要領の交付:平成26年11月17日(月)~12月4日(木)まで。
企画書等の提出期限:平成26年12月5日(金)17時
Norway phases out Java for tax, school and business eID
ノルウェー政府は、オンライン電子申告、教育、ビジネスサービスのためのeIDソリューション(BankID)を更新し、Javaを使用しないようにしたと。Javaに起因するソフトウェア上の問題が、主なコールセンターへの問合せとなっており、利用者とサービス提供者の負担になっていたようです。日本でも同じような問題がありますね。
新しいBankIDは、「HTML5, CSS and Javascript」に対応するブラウザがあればOKとなりますが、この流れ(特定のプラットフォームに依存しない)は今後の電子政府で主流になるでしょう。
German e-health working group reasserts focus on interoperability
ドイツでは、200種類の医療ITシステムが乱立し、相互運用性を確保する障壁となり、医療システム間で情報を交換する際のトラブルになっていると。eヘルス(電子健康)の推進は、先進国で共通する悩みですが、共通番号の無い縦割り前提のドイツは特に苦労が多そうですね。
参入相次ぐオンライン決済市場、新方式で風穴は開くか
電子政府でも重要な決済機能。Poyntのスマート決済端末や、Square(スマホやタブレットを端末とする決済)は要注目です。
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定による通知カード及び個人番号カード並びに情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等に関する省令(仮称)案に対する意見募集の結果
平成26年11月20日 総務省
通知カード、個人番号カード、情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等について必要な事項を定める省令案に対して、90件の意見があったと。総務省からの回答(意見に対する考え方)を読み解くことで、番号制度だけでなく、住基ネットや住基カードの理解も深まりますね。
【マイナンバー制度】特定個人情報保護評価書(素案)への意見募集
平成26年11月14日 板橋区
特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)を取り扱う「住民基本台帳に関する事務」について「特定個人情報保護評価書(素案)」を作成し、意見を募集。提出期限は12月15日(必着)。評価用語集もあり、意見募集についての説明も親切ですね。「マイナンバー制度のスケジュール(国から示されたもの)」も明示しています。特定個人情報保護評価書を見ることで、市区町村が福祉を中心として、いかにたくさんの事務を抱えており、事務処理する上で住民情報を活用していることがわかります。
マイナンバー制度のスケジュール(国から示されたもの)は、次の通り。通知まで1年もありません。。
平成27年10月:区民(外国人住民を含む)に、「通知カード」を郵送し、マイナンバーを通知。
平成28年1月:マイナンバーの利用開始。「個人番号カード」交付申請者に対し個人番号カードを交付。
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会「中間的な整理」の公表
平成26年11月21日 総務省
研究会における制度改正の方向性を示す「中間的な整理」の概要版も公開されました。年内目途に最終的な報告を行う予定。
目的:“公益的目的”のための利活用に限定
範囲:“個人特定性低減データ”として加工し提供し得る個人情報の範囲を限定
規律:再特定禁止等提供先での規律等
“個人特定性低減データ”の法制的位置付け:目的外提供の対象を緩和して“個人特定性低減データ”を位置付ける。
個人情報、間違えてはいけないポイント
新潟大学法学部の鈴木正朝先生が解説した用語や概念についてのポイントを紹介。個人識別情報、個人識別可能性判断、照合容易性判断、個人情報と本人確認情報との違い、個人情報とプライバシー、識別と特定など。個人情報の議論は、専門家でも法解釈に違いがあり、結局は「ケースごとに判断する」というのが現状でしょうか。
ちなみに、住民基本台帳法の「本人確認情報」とは、「氏名・住所・生年月日・性別の4情報、住民票コード、これらの変更情報」を意味しますが、マイナンバー制度の開始後は「個人番号(マイナンバー)」が追加されて、「本人確認情報」=「氏名・住所・生年月日・性別の4情報、住民票コード、個人番号、これらの変更情報」となります。個人番号を含むので、本人確認情報は「特定個人情報」でもあります。また、「本人確認情報」は、住基ネット上で集約・保有されて、法令に基づいて多くの機関・団体により共有されることになります。
関連>>住民基本台帳法
地方公共団体情報システム機構 個人番号
国民健康保険中央会、オラクルのリアルタイム・データ統合製品の導入により、全国47都道府県をつなぐ大規模な双方向データ連携基盤を構築
47都道府県の国保連合会が運用する「介護保険・障害者総合支援システム」と共同運用センターにおいて、リアルタイムな双方向データ連携を実現し、システム障害や災害時におけるデータ損失を防ぐとともに、事業継続性を支えるシステム基盤を実現。47都道府県の国保連合会が個別に運用している介護保険・障害者総合支援システムを、新たに設置した「共同運用センター」に集約化したと。戸籍情報の一元化も、こんな感じで実現して欲しい。
東京都世田谷区と豊島区、住民情報システムのクラウド利用開始 練馬区・中央区も採用
特別区で必要となる住民記録、印鑑登録、住民税、国民健康保険などの業務機能をクラウド型で提供。練馬区と中央区も導入予定で、約200万人の住民をカバーする国内最大級の自治体クラウドサービスになると。4区の住民だけで200万人と、エストニアの人口132万人を大きく上回るので、特別区向けのサービスだけでも、ヨーロッパの中規模国家並みの市場規模があるのですよね。
「人のインターネット端末化」が始まる
レコメンドサービスを超えた、その人だけに向けたピンポイント、ドンピシャな商品広告や提案ができるようになる。人はメリットさえ明確なら、喜んでプライバシー情報を提供すると。
関連>>『ルナルナLite』
生理日予測を始めとする、女性のための健康管理アプリ。
起業家精神を創発するIT関連施策パッケージ(特設ページ)
起業家人材の育成からベンチャーの育成までの、起業家精神創発に係る関係府省庁のIT関連施策を、「施策群」として横串を通した上で、取りまとめたものであり、府省庁間連携・効果的取組を有機的に推進していくものと。現在、2014年12月12日までアイデアを募集中。特設ページのお金かけてない感がハンパないです。
関連>>「起業家精神を創発する IT 関連施策パッケージ」第一版について(PDF)
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室では、平成26年6月24日に閣議決定された、政府のIT戦略である「世界最先端IT国家創造宣言改定版」を踏まえ、IT総合戦略本部下の「新戦略推進専門調査会 新産業分科会」での議論を経て、「起業家精神を創発するIT関連施策パッケージ(副題:「アントレ×ITパッケージ」)」を策定し、内閣情報通信政策監決定しましたと。
サイバー犯罪対策新組織「日本サイバー犯罪対策センター(JC3)」の業務開始
日本版NCFTAとしてサイバー空間の脅威に対処するための非営利団体「一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3:Japan Cybercrime Control Center)」が、2014年11月13日付けで業務を開始。各主体の対処経験を集約・分析した情報を共有することにより、脅威の大本を特定・軽減・無効化し、以後の事案発生を防止する対応を行うとともに、海外機関との連携も積極的に行い、我が国の安全・安心なサイバー空間の実現に貢献していくと。専門家や関係者が連携した地道な活動が大切な分野ですね。
法務省:平成26年版犯罪白書のあらまし
犯罪の動向、犯罪者の処遇、少年非行の動向と非行少年の処遇、各種犯罪者の動向と処遇、犯罪被害者、窃盗事犯者と再犯の全6編。高齢化の影響は、犯罪全般にも表れていて、加害者・被害者・受刑者等の高齢者の割合や人数が今後も増えていきそうです。
刑法犯の認知件数は,14年には369万3,928件にまで達したが,15年に減少に転じて以降,年々減少し,25年は191万7,929件(前年比11万8,567件(5.8%)減)であり,昭和56年以来32年ぶりに200万件を下回った。
最近は,全般的に高年齢化が進み,60歳以上の者の構成比は,平成6年には6.3%(1万9,505人)であったのが,25年は,24.0%(6万3,157人)を占め,65歳以上の高齢者が17.6%(4 万6,243人)を占めている。
殺人の認知件数は,平成16年から減少傾向にあり,25年は938件(前年比94件(9.1%)減)と戦後初めて1,000件を下回った。
振り込め詐欺(恐喝)を含めた特殊詐欺について見ると,平成25年は認知件数及び検挙件数共に増加しており,特に,認知件数は,1 万1,998件(前年比3,305件(38.0%)増)と大きく増加した。
交通事故の発生件数及び負傷者数は、平成17年から9年連続で減少。死亡者数は5年以降減少傾向にあり、25年は4,373人(前年比0.9%減)であった。
2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会(第1回)
平成26年11月14日
検討体制、検討スケジュール、オリンピック・パラリンピックとICT、「国の対応が期待される事項」の進捗状況など。来年の7月に「第一次中間取りまとめ」を公表する予定。ICTを活用した多言語対応は、広く電子政府サービス全般に応用できるので、着実に進めて欲しいですね。
情報公開開示請求データベース
政策研究大学院大学が公開しているデータベース。全国自治体(の一部)における情報開示請求について、請求内容、請求対応をした部課、決定内容がわかります。また、データを活用して、マッピングや対比分析などもできます。こうした活動にこそ、税金を使うべきかと。