つぶやき電子政府情報(2015年2月9日):電子政府で確認する「日本の中東和平への取り組み」
イスラム国による日本人の人質事件に関連して、安倍総理の発言とされる「2億ドル拠出」が、いまだに問題になっているようです。
「『2億ドル拠出』と言った首相に問題」社民・福島氏らが批判
イスラム国事件 人道支援への“疑義”続々、狙いはまたも安倍政権批判か
電子政府の重要な役割の一つとして、「政府の積極的な情報公開を促進する」ことが挙げられます。最近では「オープンガバメント」と言われるもので、政府の透明性を高め、国民と政府の信頼関係を築くための基礎となります。
今回は、外務省が提供する情報から、「2億ドル拠出」について整理してみたいと思います。
まず、安倍総理の中東政策スピーチを見てみましょう。
安倍総理大臣の中東政策スピーチ
(中庸が最善:活力に満ち安定した中東へ 新たなページめくる日本とエジプト)
2015年1月17日 於・日エジプト経済合同委員会
本スピーチは、次のような構成になっています。
1.中庸が最善
2.日本は中東の伴走者
3.エジプトの努力に敬意
4.日本の約束
5.日本と中東和平
6.共生・共栄・協働・中庸
初めに、「タアーイシュ(共生と共栄)」、「タアーウヌ(協働)」、「タサームフ(和と寛容)」、「中庸が最善(ハイルル・ウムーリ・アウサトハー)」という基本方針を語り、最後に改めて「中庸が最善」を繰り返しています。
こうした発言内容については、
中東和平についての日本の立場
を再確認するものと言えるでしょう。
次に、お金に関する発言を見てみましょう。
まず、「2.日本は中東の伴走者」の中で、「2年前、私の政府はこの考えに立って、中東全体に向けた22億ドルの支援を約束し、これまでにすべて、実行に移しました。」とあります。
さらに、「ここで私は再び、お約束します。日本政府は、中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援を、新たに実施いたします。」としています。
これまでも、日本政府は、地道な支援を続けていたことがわかります。
続いて、「4.日本の約束」の中で、「E-Just(エジプト日本科学技術大学)にとって便利で、有望な産業立地とも近いボルグ・エル・アラブ(Borg El-Arab)国際空港の拡張を、お手伝いします。電力網の整備とあわせ、3億6000万ドルの円借款を提供します。」とあります。
さらに、「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」としています。
この「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」が、テレビや新聞で取り上げられている「2億ドル拠出」なのですね。
この部分を、英語版でも確認しておきましょう。
Speech by Prime Minister Abe “The Best Way Is to Go in the Middle”
「4. Japan’s pledge」の中で、「We are going to provide assistance for refugees and displaced persons from Iraq and Syria. We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shall do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.」とあります。
このような「ISILと闘う周辺各国への支援が、ISILを刺激した」と考える人がいるようです。
確かに、「ISIL」という発言が無ければ、ISIL側の口実に利用されなかったかもしれませんが、ISILの活動目的を考えると、何かしらの因縁をつけてくるのは時間の問題だったと考えることもできます。
●「2億ドル拠出」が意味するもの
「2億ドル拠出」は、決定事項ではなく「支援をお約束します」としているので、英語でも、「 I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars」となっています。
これに対して、ボルグ・エル・アラブ国際空港拡張の支援については、決定事項として「3億6000万ドルの円借款を提供します」とあるので、英語でも「We have decided to provide 360 million U.S. dollars in ODA loans」となっています。
「2億ドル拠出」についても、「地道な人材開発やインフラ整備への支援」が目的なので、「無償資金協力」か「有償資金協力(円借款)」かは明確ではありませんが、「ODAによる支援」と考えて良いでしょう。
続いて、ODA(政府開発援助)の仕組みを確認しておきましょう。
外務省 [ODA] ODAとは?
政府または政府の実施機関によって開発途上国または国際機関に供与されるもので,開発途上国の経済・社会の発展や福祉の向上に役立つために行う資金・技術提供による公的資金を用いた協力のことです。
外務省 [ODA] ODAとは? 援助実施体制
ODAの実施については、円借款,無償資金協力,技術協力の実施をJICA(独立行政法人国際協力機構)にて一元化しています。
JICA – 国際協力機構
JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。「すべての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発」というビジョンを掲げ、多様な援助手法のうち最適な手法を使い、地域別・国別アプローチと課題別アプローチを組み合わせて、開発途上国が抱える課題解決を支援していきます。
外務省 [ODA] ODAとは? 援助形態別の概要・取組 有償資金協力
円借款の概要 有償資金協力
無償資金協力の手続き
無償資金協力業務の流れ(PDF)
に見るように、ODAによる支援は、お金の使い道について、厳格に審査・管理・評価されているので、武器購入等に流用される可能性は極めて低いと言えるでしょう。
このように、「2億ドル拠出」ひとつを取っても、電子政府で公開されている情報を確認するだけで、テレビや新聞で報道されていることの見方が変わってくるかもしれません。
電子政府による一次情報にアクセスして確認する習慣を身につけて、国民全体のメディアリテラシーを高めることが、様々な厳しい決断を迫られることになる今後の日本にとって、とても大切なことだと思います。
電子納税、自宅で完結 本人確認は携帯で可能に
17年から、紙の書類も不要
「PDFファイルにしてメールで送る」は、方向性がずれている気もしますが、今よりは使いやすくなりそうです。次世代型の電子政府へ移行するためには、「本人に確実にリーチできる経路(口座番号、メールアドレス、電話番号、電子私書箱等)を複数確保すること」が重要なので、将来的には、マイナンバーと携帯電話番号の紐付けもありそうです。
North Dakota Considering Enhanced Drivers’ Licenses
米国ノースダコタ州が、RFIDチップを内蔵した「強化運転免許証」の導入を検討していると。RFIDチップにはユニークな識別番号が記録されており、国土安全保障省のデータベースと紐づけられています。この機能により、カナダへ入国する際のパスポートとしても使えるのですね。
関連>>Enhanced Drivers Licenses What Are They Homeland Security
ICカード免許証 :警視庁
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する研究会「中間的な整理」その2の公表
平成27年1月30日 総務省行政管理局 情報公開・個人情報保護推進室
行政機関等が保有するパーソナルデータに関する執行・監督体制、権限の在り方について、2回目の「中間的な整理」として取りまとめを行いましたと。第三者機関の関与、総務大臣の機能・権限、専門機関(新設又は改組)の総務大臣に対する機能、行政機関の匿名加工情報提供先事業者への権限など。
「アプリDe統計」のiOS版の提供開始及びAPI機能のサービス拡充 平成27年1月30日
Android版に加えて、iOS版の提供も開始。API機能についても、開発ガイドを追加するなど、利用者の利便性向上のためにサービスを拡充しましたと。
「マイナンバー制度」と「ストレスチェック義務化」にどう取り組むべきか?
「マイナンバー制度」や「ストレスチェック義務化」への対応は、従業員が自分自身の情報を企業と共有するというプロセスを通じて、個人情報やプライバシーを保護することの重要性を啓蒙する絶好の機会になると。
FTCが懸念を示した「IoTのリスク」
デジタルマーケティングにおいて活用されるデータは「Demographic Data(人口統計学的なデータ)」「Attribute Data(属性データ)」「Behavioral Data(オンライン上の行動データ)」が中心となっていたが、IoTの普及は、「Physical Behavioral Data(物理的な行動データ)」をマーケッターの手に渡すと。すでに防犯カメラなどにより、本人が同意や拒否をする余地の無い形で、個人情報が収集・利用されていますが、ネットに繋がった様々なセンサーを備える機器が増えてくると、個人情報やパーソナルデータの収集・保存が半自動的に行われることが当たり前になりますね。データの取得・保存について、本人の関与を保証することは困難であり、取得されたデータの悪用やプライバシーを含む権利への侵害に対してアプローチしていく重要性が高まるでしょう。
関連>>食事のカロリーから喫煙状況までデータ化、ベンチャーは「データプロダクト」でIoT市場攻勢
消費者が企業に提供したくないパーソナルデータ、1位は財産関係情報
20代から60代のインターネット利用者男女400名に対する調査調査からは、具体的にイメージしやすく、また身近な問題として危機感を感じる情報が、提供したくない順位で上位にあがったと。
内閣府の世論調査を見ても、パーソナルデータの機微性については、プラバシーの専門家が考えるものと、消費者が考えるものは、けっこう乖離があるんですよね。
関連>>個人情報保護に関する世論調査の概要(PDF) 消費者庁
個人情報保護に関する意識と評価 (平成18年実施)
全国20歳以上の者3,000人が対象
他人に知られたくない個人情報を挙げてもらったところ,「銀行口座番号,クレジットカード番号,取引履歴」を挙げた者の割合が88.7%と最も高く,以下,「年間収入,財産状態,納税額など」(74.2%)などの順となっている。この世論調査は少なくとも3年毎ぐらいに実施して欲しいところ。
マイナンバー政府予算は1100億円超、周知・広報の不足が落とし穴に:ITpro
日経BPガバメントテクノロジーの井出さんが、マイナンバー政府予算について整理してくれました。総務省が、無料交付を実現するための個人番号カードの製造・発行事業費として112.5億円を計上しており、カード単価700円、電子証明書200円で、2015年度に1000万枚の発行を想定した金額であると。一枚あたり900円は、私が思っていたより低価格ですが、交付時の事務経費(人件費)を含めると、一枚あたり3000円ぐらいでしょうか。
関連>>27年度予算案にみるマイナンバー制度の費用は約1170億円
小さな会社が消耗戦を抜け出すための「動的Eコマース」とは?
次世代Eコマースを考えるときの重要なフレームワーク「動的Eコマースの3C」は、Co-Creation(共創)、Communication(対話)、Community(遊び場)であると。電子政府やオープンガバメントでも、3Cの重要性が高まっています。
マイナンバー制度の今後の展開と望まれる方向(PDF)
森信先生のジャパン・タックス・インスティチュートより。利子所得の情報取得に有効な預金口座への付番について、預金残高などストック情報まで付番して求めるのは行き過ぎだろうと。軽減税率に代わり、消費税還付制度としても機能する給付付き税額控除を推奨しています。インボイス番号の導入も必要と。
「預金口座への付番(誰の財布かを特定すること)」=「税務署による預金残高の把握(財布の中身を見ること)」と考える人が多いので、両者が別物であることを政府は丁寧に質問した方が良いですね。マイポータル・マイガバメントで、記入済み申告制度と同様のことができるかどうかは、現時点では微妙です。むしろ、確定申告書作成サービスに、入力支援やデータ取り込み機能を追加していく方向が良いでしょう。
内閣官房ホームページ「社会保障・税番号制度」ページへのリンク設定について
内閣官房ホームページ「社会保障・税番号制度」ページへのリンクは自由で、事前の連絡も不要ですと。マイナちゃん(マイナンバーの広報用ロゴマーク)の一般利用は、事前の使用申請が必要ですが、マイナちゃんを含むバナー画像は、リンク設定用として自由に使えるそうです。くれぐれも、マイナちゃんを使って変なサイトに誘導しないように!
関連>>マイナンバーの広報用ロゴマーク
マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)のスケジュール
私のブログでも、早速、マイナちゃんバナー画像を使ってみました。
「家事支援サービス推進協議会」の報告書をとりまとめました ~品質確保に向けた家事支援サービス事業者の取組指針となるガイドラインです~
家事支援サービスの認知度は徐々に上昇してきているものの、既存利用者は約3%に留まっており、約97%の未利用者が利用しない理由については、価格面の他、サービスの利用に当たっての抵抗感や不安感も挙げられていますと。
我が家でも、先日ダスキンにお願いして、台所のレンジフード・換気扇とお風呂場を掃除してもらいました。すっかりキレイになった浴室を見て、プロの仕事に感心しましたが、こうしたサービスには当たりハズレもあるらしく、業界全体の品質・信頼性の確保は大切ですね。
マイナンバーを軸に母子健康・学校情報を集約し、子育て支援~前橋市
群馬県前橋市の「ICTしるくプロジェクト」では、マイナンバーを想定した共通ID認証基盤の上で、母子健康、学校、医療、交通、生涯学習などの情報連携を進めていると。「母子健康手帳」や「お薬手帳」を電子化し、今後は「医療連携」や「緊急時利用」も想定。2013年から地道に続けてきた事業で、総務省の所管ということもあり、マイナンバーそのものではなく、個人番号カードや公的個人認証サービスを活用するモデルですね。
「子育てのしやすいまち」が、自治体のブランドや出生率の向上に貢献することは、いくつかの自治体で実証されているので、良い取り組みと思います。こうしたわかりやすい事例が増えると、マイナンバー制度への住民の理解も深まりそうです。
関連>>前橋市の取組概要~前橋ICTしるくプロジェクト~(PDF)
前橋市「ICTしるくプロジェクト」で、エムティーアイが実証事業を開始!~新たな健康管理ツールとして、マイナンバーカード連携の母子健康情報サービスを提供~
平成25年度補正予算「ICT街づくり推進事業」に係る委託先候補の決定
平成24年度補正予算「ICT街づくり推進事業」に係る委託先候補の決定
「ICTしるくプロジェクト地域協議会」の発足について(PDF)
前橋市バス位置情報(実証実験中)
日本人だけじゃない、外国人もマイナンバー制度実施には要注意!
今回の制度によって個人の情報が固有番号により正確に把握できるようになることから、個人の収入の計上漏れ、所得の申告漏れ等が税務当局で完全に捕捉できるようになる。個人の管理番号とともに法人においても管理番号が一元化されて管理されることにより、中小企業の社会保険の強制加入も強化される。外国人留学生をアルバイトとして雇用する場合、外国人が会社を経営する場合などにも適用されるので、注意が必要。マイナンバー制度が施行されると在留資格の更新時に社会保険証が必要要件とされる可能性が高いと。
日本に在住する外国人の間でも、少しずつマイナンバー制度の情報が広がっているようです。
関連>>マイナンバーコールセンター
マイナンバー(社会保障・税番号)制度に関する問い合わせに電話で対応。2015年2月現在、外国語対応は英語のみですが、2015年4月から複数言語(中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語)に対応する予定です。
The Social Security and Tax_Number System
Call Center for the Social Security and Tax Number System (Multilingual Service)
Service for Chinese, Korean, Spanish, and Portuguese is scheduled to begin on April 1, 2015.
対応へ残された時間少ないマイナンバー制
――野村総研未来創発センター主席研究員 和田哲郎
世界全体の番号制度について、社会保障と税等との番号共通化が実施されている国は相応に存在する。番号共通化が実施されていない国は、先進国では日本以外ほとんど存在しない。資金の捕捉向上、効率性の重視、金融機関での活用がポイントと。
CCC、約300の「属性」と「志向性」からTポイント会員を“プロファイリング”、データは音楽会社に提供へ
「プロファイリング」や「属性推定」については、政府が検討している個人情報保護法の改正でもあまり議論されていませんが、法改正前にあえてビジネスをスタートさせたのでしょうね。
「個人情報を削除してあげます」、国民生活センターをかたる電話に注意
詐欺なので、相手にせず、すぐに電話を切るようアドバイスしていると。個人情報保護法の改正がメディアに取り上げられる機会が増えるほどに、こうした便乗犯罪が増えそうです。
犯罪者の社会復帰を後押しするインキュベーター、刑務所は人材の宝庫!
「Defy Ventures」というニューヨークに拠点を置く非営利団体が、刑期を終え出所した人を対象に、事業のスタートアップを支援し出資すると。こうした取組みは、以前、米国で製作されたドキュメンタリー番組で知ったのですが、様々な社会コストを減らす効果が期待できそうです。就職先を斡旋するのではなく、「起業家として育成する」のがポイントですね。