つぶやき電子政府(2015年3月17日):電子政府の必要性を感じない日本の現状
先日、ICPFセミナー(電子行政研究会) 「地方自治体における業務の標準化・効率化」が開催されて、自治体システムに詳しい方々も数多くご参加いただきました。
今後の方向性としては、町村を中心として、自治体クラウドの導入が進むことはわかりましたが、5年後、10年後にどういう姿を目指しているのかは、よくわかりませんでした。
ビジネス業界では、いわゆる基幹業務については、欧米においてパッケージ導入が早期に進み、日本企業もようやく追いつきつつあるという感じでしょうか。市場規模に対して、ベンダーの数も適正範囲と言えるでしょう。
日本における自治体の情報システムについては、縮小していく市場において、まだまだベンダーの数が多く、「競争」というよりは「住み分け」という状況のようです。財政的・人的に危機感を持っているのは、小規模自治体であり、中規模以上の自治体では、まだまだお金持ちなので、本格的なクラウド移行みたいな話は出てきづらいようです。
自治体の事業評価などを見ても、職員の危機感は希薄で、年々増えている事業を減らすことも無く、まだまだ(表面的には)財政に余裕があります。
こうした環境では、電子政府の必要性を感じにくいのではないでしょうか。
電子政府先進国に共通するのは、「財政や安全保障などに関する危機の直面」や、労働人口減少や人口密度の低さといった「IT活用の必要性増加」などです。
日本が危機感を持って、電子政府や自治体クラウドを進めるには、夕張市に見るような社会保障等の各種行政サービスが滞るといった「財政危機の顕在化」があり、「人口減少・少子高齢化に伴う過疎地域の増加」で、行政サービスを届けることが困難になるなど、国民と行政が危機を共有するようになることが必要でしょう。
BBC News – Estonia: Government services are paperless and online
エストニアの電子政府サービスやインターネット投票をBBCが動画で紹介しています。
関連>>Internet Voting – Voting methods in Estonia
Valimised (エストニアのインターネット投票サイト)
小国エストニアが電子政府で世界最先端を突き進むワケ 2015年3月13日
ターヴィ・コトカ(エストニア政府CIO)インタビュー
国民は発展のため、公的機関のIT化や自動化に一致して取り組んで生産性を高めてきました。番号制に対してプライバシーを心配される方々もいますが、紙の世界の方が、プライバシーが低い場合もあります。実際、われわれは旧国家保安委員会(KGB)の監視下で、プライバシーの無い生活を続けていましたからと。
内閣官房 国会提出法案(第189回 通常国会)
内閣官房IT総合戦略室が担当する「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」を、H27.3.10に提出。第三者提供に関係なく、匿名加工情報に関する義務が規定されたのも、昨今増えている改正ミスの例になるのでしょうか。
関連>>[個人情報保護法改正] 匿名加工情報と第三者提供記録について
戸籍にもマイナンバー適用 結婚・相続で謄本不要 18年実施検討
マイナンバーを2018年にも戸籍に適用することを検討し、結婚やパスポート申請、遺産相続といった行政手続きの際に、戸籍謄本などが不要になると。実際には、戸籍にマイナンバーを適用しなくても、行政機関がオンラインで戸籍情報をやりとりするのは可能ですが、マイナンバーがあれば迅速・正確に個人を特定しやすくなりますね。日本全体の社会コストを高くしている戸籍制度がマイナンバーとセットで見直されれば、日本の電子政府も一歩前進することになります。
関連>>法務省:戸籍制度に関する研究会
第4回会議(平成27年1月29日)では、システムの一元化に伴う制度の見直しの要否について検討しています。「本籍」などは早急に廃止すべきでしょう。また、国民の生活に関係の深い重要な検討会なのですから、配布資料や議事次第をテキストコピーできないようにするのは止めて欲しいです。
法務省:未来につなぐ相続登記
相続登記が放置されているのは、登記制度自体がデジタルデータ連携に対応した登録制度になっていないからですよね。公共情報データベースの維持管理について、抜本的な見直しが必要です。
日本商工会議所・JIPDEC共催
「企業におけるマイナンバー制度実務対応セミナー」
企業の総務担当者等を対象にした無料セミナー。個々の事業者が実務において必要となる対策について、ケーススタディも含めて解説すると。東京、大阪、名古屋、新潟、広島、福岡、高松、仙台、旭川と全国9か所で開催するそうです。
喉元過ぎれば…「データを失う怖さ」を再認識してほしい
震災後数年経ち、危機感の薄れからデータのバックアップをおろそかにしている現状に警鐘を鳴らすと。国の行政機関や自治体におけるクラウド活用への考え方は、震災を契機にかなり前向きなものになりました。震災時の本人確認手段として、市町村等における「顔写真」の登録も必要で、そこからマイナンバーを使って「かかりつけ医(歯科医を含む)」を特定し連絡できると良いでしょう。
西側勝利を宣言した『歴史の終わり』後の皮肉な世界
「グローバル化」という前提を揺さぶる7つの挑戦
EUのデータ保護に関する動きは、「データ保護規制の運用を通じた他国(特に米国やアジア諸国)への影響力行使」に他なりません。
なぜ「ヘヤジンプライム」は賃貸仲介手数料を無料にできたのか
イタンジ|賃貸物件情報サイトの運営
有料会員の登録料や、掲載する物件数に応じて不動産管理会社から受け取る手数料がイタンジの収入になると。不動産業界は、まだまだ透明性が低く高コスト体質なので、今後も新しいサービスが出てくることに期待します。
厳罰化に要注意! マイナンバー制度が企業に与えるインパクト
セキュリティ強化の起爆剤となるか!?
「マイナンバーを取り扱う業務を外部に委託する際には、従業員の許諾を受ける必要があります」とありますが、これは間違いですね。社労士や税理士に業務委託するのに、一人ひとりの従業員から許諾を受けてたら大変です。。
IT業界を中心として、マイナンバー制度が「個人情報保護法バブル」以上のインパクトがあるのは確かですが、マイナンバー関連ビジネスや企業の見極めが難しいですね。
企業にとって最も深刻なのは「レピュテーション」のリスクでしょう。マイナンバーを含む特定個人情報が漏洩するのは時間の問題なので、大手や有名企業、あるいは自治体などで「誰が最初にハズレくじをひくか」ということになります。安全管理措置は大切ですが、特定個人情報が漏洩した時の対応準備こそ、企業が力を入れるべきポイントでしょう。間違っても、隠蔽などはしてはいけません。
関連>>情報漏えい発生時の対応ポイント集:IPA
マイナンバーが施行されると日本の犯罪は一時的に急増する?
オラクル法執行機関・公安担当グローバル・リード ホン・エン・コー氏に聞く
マイナンバーとIDカードがごっちゃになっていて、マイナンバーの管理や重複についての発言も的外れな感じですが、中国や米国の事例をベースに発言しているのかな。「それまで埋もれていた犯罪や、税金の未納など違法な状態が明らかになり、手配がかかる人が一時的に急増する」というのも微妙なところです。
マイナンバー制度には犯罪や違法行為(脱税や生活保護不正受給等)を検知・発見する仕組みが整備されておらず(制度設計に組み込まれていない)、不正があるのではないか疑いがあった場合に、「今までよりは少しだけ調査しやすくなる」ぐらいです。マイナンバー制度への「過度な期待」と「過剰な反応」は表裏一体なのですね。
医療ビッグデータから、こんなことまで見えてくる
国による医療の大規模データベースの構築は非常に進んでいるが、国は好き勝手にデータを収集しているわけではない。実際には、さまざまな法律に従って収集している。法律にともなっていないデータ収集としては、「DPC(Diagnosis Procedure Combination:診断と治療内容の組み合わせに基づく患者分類)」調査があると。
国による医療ビッグデータは匿名化などによる各データベースの孤立化という問題を抱えており、データを組み合わせた解析が難しいため「ビックデータのメリットを上手く発揮できない実情にあり、「医療分野でもマイナンバーのような情報を作ればいい」と。
関連>>介護情報の活用(PDF)
介護・医療関連情報の「見える化」の推進について(PDF)
高齢者の医療の確保に関する法律
DPC導入の影響評価に関する調査
「医療分野のイノベーションの起点に」、医工、産官学連携の姿に迫る
オープンイノベーションで「自分で守る健康社会」の実現目指す
「三本の矢」としてまず取り組もうとしているのは、
(1)低侵襲診断・治療技術(低侵襲治療を外来で可能とする診断治療一体型小型デバイスや家庭で健康状態を計測できる健康モニターデバイス)
(2)低コスト創薬技術(ジェネリックを含む医薬品を低コスト、高品質、高効率で製造する技術基盤の構築)
(3)健康・医療データベースの構築とその活用(健康増進、疾病予防、予後管理等)
「終身雇用」はIT業界の諸悪の根源だ
解雇を奨励したいわけではないが、この仕組みのままでは、多くの技術者や日本企業全体が不幸になると。
在宅療養患者の服薬状況はどのように把握されているのか
センサ付き薬箱システムを用いた客観的服薬状況データと,医師およびケアマネージャへのアンケートによって“どうして医師が在宅療養患者の服薬不良を把握できないのか” の解明を図った結果,ケアマネージャは通常,患者や家族へのヒアリングによって服薬状況を把握しているため,服薬時刻など医師が重要視している項目に関するデータに基づいた判断をしていなかったことが明らかになったと。「データ収集・分析の自動化」は、これからの電子政府でも重要課題になります。
改正個人情報保護法は「ビッグデータ活用」に役に立つのか
グレーゾーン解消、個人情報保護委員会、匿名加工情報の3つが法改正案の目玉であると。個人情報保護法を見直しする過程で、「個人情報保護法の限界」が浮き彫りになったという感じでしょうか。
「プライバシーフレームワーク」が日本で確立するには時間がかかりそうですし、現実として「ISO/IEC29100」の11プライバシー原則はハードルが高く、全てを遵守しているような企業は思い当たりません。一部の大企業が、消費者との対話を基に「先進的なプライバシー対応企業」としての地位を確立させようとする(確立できるとは限らない)一方で、大半の企業はこれまでとあまり変わらないデータ利用を続けていくのではないでしょうか。
個人的には、以前ブログで書いたように、業界ごとに業界事情を反映させた共通ルールを策定して、第三者機関の認定を受け、「その業界ルールを守っている」=「法令順守に加えて望ましいプライバシー基準を満たしている」と制度的にも社会的にも認知されるのが良いでしょう。この場合でも、「ISO/IEC29100」の11プライバシー原則を完全に満たしている(例えば★3つ)というわけではなくて、各原則の最低限レベル(★1つ)でもOKとか、そんな感じが落としどころかと。PIAについても、企業単位の実施ではなく、業界単位で実施することから始めると。
関連>>プライバシーに関わる標準化の動向:NRI(PDF)
プライバシー関連の国際規格動向(PDF)
データ保護と電子行政サービスに関する欧州調査ご報告資料(PDF)
ドイツの場合、医療データについては、匿名化・仮名化して研究目的で二次利用することが許されている。州によって若干、規定が異なる。また、個人の権利利益に与える影響と公共の利益とを比較考量して後者の方が大きい場合には、匿名化しなくても二次利用できる。これはハードルが高く、DPAの承認が必要である。例えば、癌のDBには、関連する疾病も含め、全国の患者の氏名のデータが入っている。このDBを使う場合には、個人データと疾病データを併せて参照することも許されている。もちろん医療機関の全員がこのDBにアクセスできる訳ではなく、アクセス権限を持つ人も必要なデータにしかアクセスできない。
「プレ・シングルマザー」「アフター・シングルマザー」に何が必要なのか
「子どもを育てながら教育を受け、キャリア構築もする」というルートは、若年出産の母親たちに対しては、ほぼ存在しませんと。確かに、現状で最も有望なルートは、両親や支援団体等のサポートを受けながら「看護師の資格を取る」ぐらいでしょうか。これも、かなりの支援が受けられることが前提ですが、マイナンバー制度を活用して「生活保護」以外の支援制度を作って欲しいですね。
国立病院機構における診療情報分析システムについて
―構築と運用に関する現状と課題―
レセプトデータでの集計は難点が多いが,DPCデータを提出する病院は半数にも満たないため,分析データの質を向上させるためにレセプトデータでの抽出の幅を広げていかなければならない。具体的には,DPCデータの様式1に記載されているような,患者の状態像の評価の実現,現在のところあまり利用できていない外来レセプトデータの積極的利用,機械学習による主病名の選択を考えていると。
関連>>国立病院機構
ICTドリームスクール懇談会(第5回)平成27年2月25日
学習・教育クラウド・プラットフォームのアイデア募集結果、アイデア提案者からのプレゼンテーションなど。
関連>>ICT CONNECT 21 みらいのまなび共創会議
総務省|ワークスタイルを変えるオフィス改革の試行的取組
総務省行政管理局では、国家公務員のワークスタイル変革を目指し、これまでのオフィス環境を一新する試行的取組を開始しましたと。
情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 重点分野WG(第1回)
重点研究開発分野、重点研究開発課題等に関する論点の例など。ICTの最新事情がわかる資料が多いです。
「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申 平成27年3月2日
・中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止
・健康確保のために時間外労働に対する指導の強化
・フレックスタイム制の見直し
・企画業務型裁量労働制の見直し
・特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設など