モバイル政府サービスの11原則:マルタ共和国のモバイル政府戦略から学ぶ、モバイルサービスの作り方

『行政&情報システム』の2017年4月号に掲載予定の「マルタ共和国のモバイル政府戦略から学ぶ、モバイルサービスの作り方」に、誌面の都合で収まりきらなかった「モバイル政府サービスの11原則」を本ブログで紹介しておきます。日本で「モバイル政府サービス」を検討する際の参考になれば幸です。

マルタ共和国が新しく策定した「モバイル政府戦略2017-2018」は、スマホやタブレット等のモバイル端末を誰もが利用し、その流れが加速する中で、マルタ政府が進むべき新たな方向性を示しています。「モバイル政府戦略」のビジョンは、「どこからでも24時間365日、公共サービスへアクセスできるようになる」と、非常にシンプルでわかりやすいものです。「モバイル政府サービス(mServices)」は、「市民や企業に利用してもらう」ためにあります。

新しい「モバイル政府サービス」は、11の原則に従って作ります。この11原則に基いて、より高いレベルを目指したゴールが設定されることになります。「モバイル政府サービスの11原則」は、次の通りです。

1 モビリティの有効化
公共サービスは、いつでも、どこでも、複数のチャネルを通じて利用される。市民は、役所や公務員の存在に依存する必要がない。

2 サービスチャネル
新しい、または既存の公的サービスを更新する場合、適切な基準を適用して、モバイル向けに開発するかどうかを決める。モバイルファーストでは、まずモバイル用にサービスを開発し、続いて他のチャネル用に開発される。

3 市民中心主義
サービスは、そのライフサイクルを通じて、市民、企業、行政機関の協議や関与により開発されなければいけない。サービスが効果的に機能し、ユーザーのニーズを満たしていることを確認するために、サービスが対象とする利用者に、初期バージョンを利用してもらう。

4 簡略化
サービスは、プロセスの合理化と簡素化を伴う。公共サービスの利便性と使いやすさが向上し、ニーズに応じて、より少ない時間で完了できる。

5 パーソナライゼーション
サービス利用者には、政府が保有しているデータに対して、一定の自己コントロール権が与えられる。自己コントロール権には、データやサービスの機密性を考慮して、誰がそれにアクセスできるかの権限管理と共有方法が含まれる。

6 ユーザー体験
サービスは、「シームレスな全チャネルユーザー体験」として開発する。ユーザー体験は、既存の最新の電子政府サービスなど他のチャネルのものと整合性があり、それと同等以上の有用性を持つものでなければならない。サービスは、美しくシンプルで直感的なインターフェースを備え、必要最小限の機能を実行する。

7 コラボレーション
行政府は、縦割り構造を透明化するために、各部門や組織との連携を改善しなければならない。政府機関および関連団体は、市民および企業から同じ情報を繰り返し収集することを避けるために、データの共有を図り、1回限りの情報要求を目指さなければいけない。

8 敏捷性と適時性
サービスは、アジャイル型開発手法で導入する。敏捷性(agility)とは、定められた時間内に繰り返し提供することで、急速に進化する状況に迅速かつ柔軟に対応することである。敏捷性は、ソフトウェア開発のあらゆる段階(調達、BPR、人的資源のトレーニング等)において求められる。サービスは、タイムリーに市民や企業が利用できるようにして、その価値を最大化する。

9 アクセシビリティ
サービスは見つけやすく、アクセスしやすいものでなければならない。アクセシビリティの必要性は、身体的な障害だけでなく、言語障壁などあらゆる障壁の除去を含む。アクセシビリティの向上は、デジタル・デバイドの解消に役立つ。

10 認知度と訓練サポート
市民が、サービスの存在とアクセス方法を簡単に認知できるようにしなければいけない。宣伝キャンペーンを行い、利用者を指導・支援するためのオンライントレーニングを提供する。

11 信頼
サービスは、人々の信頼を獲得し、利用を増やすために、より高い価値と利便性を提供しなければならない。 サービス利用の結果として送信・保存される情報には、プライバシーおよびその他の適用される法令に従って、適切なセキュリティ対策が実施される。仲介者、代表者または代理人を介したサービスへのアクセスにも考慮する。