主権者たる国民は「平和安全法制」も恐れる必要は無い

安倍さんがわかりやすくお答えします! 自民党
平和安全法制のナゼ?ナニ?ドウシテ?
国会で審議されている「平和安全法制」について、安倍晋三総裁が分かりやすくお答えしますと。放送済みのテーマについては、オンデマンド配信とテキストで提供中。
 
テーマは、
1 なぜ必要なの? なぜ急ぐの?
2 集団的自衛権って何? アメリカの言いなりに戦争するの?
3 自衛隊員は危険にさらされる?
4 平和安全法制は憲法違反なの?
5 やっぱり心配。徴兵制。
 
個人的な理解は、以下に詳しく述べますが、全体として「騒ぎすぎ」と思います。
 
主権者たる国民は「特定秘密保護法」を恐れる必要など無いでも触れましたが、内容を良く知らないまま、あるいは逞しすぎる想像力などにより、過剰反応していると思うのです。
 
今回の「平和安全法制」で、「新設●」または「拡充○」されるものは、次の通りです。
 
●在外邦人等の保護措置
●米軍等の部隊の武器等防護
●国際連携平和安全活動の実施(非国連統括型の国際的な平和協力活動)
●国際平和共同対処事態における協力支援活動等の実施【国際平和支援法(新法)】
●「存立危機事態」への対処
○平時における米軍に対する物品役務の提供【自衛隊法】
○国連PKO等
○重要影響事態における後方支援活動等の実施
○船舶検査活動
 
こうして並べてみても、極めて当たり前のことばかりで、他国から見たら「なぜ大騒ぎするのだろう?」と不思議に思うでしょう。
 
もう10年ほど前になりますが、とあるセキュリティ企業のCEOの方とお話した時に、次のように言われました。
 
「牟田さん、官僚の皆さんはとても頭が良いのだけど、戦略を考えられる人が防衛省にしかいないんですよ。これでは、セキュリティも電子政府も戦略が立てられないから、本当に困ったものです。」
 
この話を聞いて、「なるほど」と思った私は、経営的な戦略ではなく、軍事における戦略について書籍やウェブで学ぶようになりました。まだまだ浅学の身ですが、戦略の重要性については理解しようと努めています。
 
官僚になる人には、大学でも職場研修でも良いので、国家戦略・軍事戦略を体系的に学ぶ機会が必要と思います。
 
戦略は、「戦いを略する」、つまりは「戦いを避ける」ための技術であり、平時にこそ強く求められるものです。
 
 
以下、テーマごとに、私の理解を整理しておきます。
 
1 なぜ必要なの? なぜ急ぐの?
2 集団的自衛権って何? アメリカの言いなりに戦争するの?
3 自衛隊員は危険にさらされる?
4 平和安全法制は憲法違反なの?
5 やっぱり心配。徴兵制。
 
 
1 南シナ海問題等の状況を考えると、早急な対応が必要かと。自衛隊と米軍や南シナ海領域のアジア諸国との連携強化は、中国に対する抑止力になり、戦争のリスクを低下させる。安全保障の見直しは、メディアや国民の攻撃を受けやすいテーマなので、普通の政権であれば踏み込まない領域。安倍政権ができなければ、食料やエネルギーなど実際の現実的な危機に直面するまで見直しされなくなる可能性が高い。追い込まれた状況での安全保障の見直しは、戦争のリスクを高めることになるので望ましくない。
 
平和安全法制等の整備について 国家安全保障局
コラム:5分で分かる「南シナ海問題」 Reuters
 
 
2 集団的自衛権は国際連合憲章にある通りだが、集団安全保障との混同には要注意。集団的自衛権は「権利」であり「義務」とは違うので、少なくとも集団的自衛権を根拠としてアメリカの言いなりに戦争をする必要は無い。集団的自衛権が行使できると選択肢が広がるので、平時および有事の対応がしやすくなる面があるが、今回の政府の提案は制限が多く「集団的自衛権が行使できる」ものではない印象を受ける。その意味では、集団的自衛権にこだわる必要は無いのではないかと思う。
 
つまり、国会の規定に従って粛々と法案を成立させて施行し、「集団的自衛権の行使」や「憲法違反」うんぬんについては、裁判所の判断に任せるということ。多くの国民が本当に今回の平和安全法制に反対するのであれば、次の選挙で自民党は負けるだろうし、代わりの政権が改めて法律の廃止なり改正をすれば良い。もし自民党が支持されれば、野党や一部のメディア・学者が騒いでいただけということになる。
 
いずれにしても、有事において「実際に自衛隊を派遣するかどうか」等については、その時の状況を踏まえて、総合的に判断するしかない。適切な判断をするためにも、米国等と連携して、正確な情報を収集できる体制を整えておくことが大切である。
 
国連憲章テキスト| 国連広報センター
集団的自衛権の法的性質とその発達―国際法上の議論―(PDF)
 
 
3 自衛隊員は危険にさらされる職業である。他国の軍隊と違って自由に退職できるので、自衛隊員になるかどうかは、各人における職業選択の自由である。自衛隊員の危険だけでなく、海上保安官の危険についても広く国民に周知するべき。
 
 
4 自衛隊の存在自体が憲法違反なので、自衛隊を前提とする平和安全法制は憲法違反である。その意味では、現実の安全保障に対応できない憲法を改正する必要があるが、今の政治状況を考えると10年議論しても改正できると思えない。憲法の聖域化は、社会保障制度の聖域化に似たもの(問題の先送り、若者置いてけぼり)を感じる。「マイナンバー制度が無くても、今のままで問題ない」と言う主張にも近い。
 
日本国憲法 第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
安保法案「違憲」104人、「合憲」2人 憲法学者ら
自衛隊については「憲法違反」が50人、「憲法違反の可能性がある」が27人の一方で、「憲法違反にはあたらない」は28人、「憲法違反にあたらない可能性がある」は13人だった。憲法9条改正が「必要ない」は99人、「必要がある」は6人だったと。憲法学者の多くは自衛隊を違憲と考えているのに、9条改正は必要ないとするのは、「自衛隊を廃止しろ」ということなのでしょうか。
 
 
5 徴兵制は、冷戦終結や兵器の高度化により廃止・縮小傾向にある。消費税10%でもあれだけ大騒ぎする日本で、徴兵制が導入されるとは考えにくい。ちなみに、徴兵制を採用するエストニアの国防軍は陸(3,300人)、海(300人)、空(200人)あわせて3,800人程度(常備兵力)。これに対して、日本の自衛隊員は約22.5万人(2014年3月31日現在)となっている。
 
防衛省・自衛隊の人員構成
国・地域 | 外務省
各国の基礎データで、その国の軍事力が確認できます。
 
平和安全法制を考えることで、国民全体のメディアリテラシーや平和リテラシーが向上することを願います。