ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか? ネット選挙運動はどちらに働きかけるべきなのか
ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか? | |
ダニエル・カーネマン (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳) | |
早川書房 |
ファスト&スロー (下) | |
ダニエル・カーネマン (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳) | |
早川書房 |
少し長いものの、「ダニエル・カーネマン心理と経済を語る」と同じく、一般書として読みやすい内容です。
人間の意思決定を、「システム1:直感的・感情的な速い思考」と「システム2:意識的・論理的な遅い思考」の2つに分類して、日常の多くの決定は「システム1」によって行われるとしています。
それは、自動的に働く「システム1」の方が楽チンで、「システム2」を働かせるのは努力を要するからと。
さて、参議院選挙の結果から見えてくることで触れた、東京都の参議院選挙結果を見ると、山本太郎氏の選挙運動は「システム1」への働きかけを重視したように思えます。
それに対して、落選した鈴木寛氏は「システム2」への働きかけには優れるものの、「システム1」へのアプローチは苦手だったように思えます。
しかしながら、この結果から、(ネットを含む)選挙運動は「システム1」を重視するのが良い、「システム1」に働きかけた方が実際の投票行動に繋がる、と考えるのもちょっと短絡的過ぎるように思いますし、なんか国民をバカにしているような気もします。長期の視点では、「システム2:意識的・論理的な遅い思考」を働かせるような教育制度を充実させていく必要があるでしょう。
ネット選挙運動が解禁されたばかりの今の日本は、映画「マネーボール」と同じような状況なのだと思います。
今後、データが蓄積されていくと、投票行動に繋がる「システム2」への働きかけ方、「システム2」へと導く「システム1」への働きかけ方、「システム1」で投票しようとする人たちを思いとどまらせるための方法(ネガティブキャンペーンへの対抗策にもなる)などが発見・開発されていくのではないでしょうか。
そんな風に、期待しています。
鈴木寛氏が、今回の敗因をデータ分析して、新たなネット戦略・選挙戦略でリベンジするようなことがあれば、日本の選挙も今より面白くなる(投票する価値が出てくる)でしょう