ロボット法・AI法に関する書籍
「ロボット法」や「AI法」に関する書籍を紹介します。
ロボットに関係する法律問題と言えば、製造物責任や著作権といったあたりと思いますが、AI(人工知能)の進化により、その範囲が拡大しつつあり、「ロボット法」という新しい分類が生まれつつあるようです。
エストニアでも、「AIに対して法的人格を与えるか」といった議論があるようです。個人的には、人間とAIの区別が曖昧なものになっていくと思いますので、法律についても、いわゆる「AI法」や「ロボット法」といったものではなく、憲法レベルでAIの存在を前提とした法制度を確立していくことが大切と考えています。現在の延長としてではなく、全く新しい社会の到来まで思い巡らすことができれば、かなり楽しいものになるでしょう。
最初に紹介するのは、ウゴ・パガロ氏の「ロボット法」です。
原書が書かれたのが2013年と少し古いのですが、ロボット法の基本書として読んでおきたい内容です。パガロ教授によると、本書は「一般の読者に向けて、今日のロボット技術の設計、製造、供給そして利用を規律する、複雑な一連の原理、概念そして法的推論を紹介することにある。」とのこと。
本書でカバーしているのは、法哲学・技術、犯罪、契約、不法行為といった基本事項ですが、特徴的なのは「メタ技術としての法」を含んでいることでしょう。発展途上の対象を取り扱う場合、抽象化の作業は避けられないのですが、どこまで抽象化のレベルを上げるのかは難しいところです。しかし、ロボットやAIを対象とする場合、最低でも法律を超えたレベルへ高めた上で、そこから具体化を進めて憲法レベルでの新たな法制度を確立していく必要があるのではないでしょうか。
次に紹介するのは、平野晋氏の「ロボット法–AIとヒトの共生にむけて」です。
2017年11月の初版発行なので、かなり最近の動向もカバーしています。米国弁護士でもある平野教授は、製造物責任の専門家でもあり、本書でも具体的な判例を数多く取り上げています。総務省の「AIネットワーク社会推進会議」のメンバーでもあるので、そこでの議論についても解説しています。日本を含む具体的な事例や最新動向を知りたい人にオススメですね。ロボットが出てくる古今東西の映画も紹介してくれるので、映画ファンとしても楽しめました。
次は、「AIがつなげる社会–AIネットワーク時代の法・政策」です。
2017年11月初版で、こちらも総務省の「AIネットワーク社会推進会議」の議論を踏まえた内容になっています。「ロボット法 AIとヒトの共生にむけて」の平野晋氏も座談会に参加し、製造物責任法について解説しています。
「AIネットワーク化」をテーマに、総論(ガバナンス、リスク)、研究開発(原則・指針、倫理と法)、データ流通・利活用、プライバシーとセキュリティ、社会の基本ルール(製造物責任、刑事法制、政治参加・政策決定)、人間(個人の尊重、人格と責任、雇用環境と労働法)といった広い範囲をカバーしています。今回紹介した書籍の中では、プライバシーとセキュリティについて、豪華な執筆陣により割と詳しく解説されていると思います。
続いて、角田美穂子氏と工藤俊亮氏による「ロボットと生きる社会―法はAIとどう付き合う?」です。
こちらは、様々な分野の専門家を招き、編者を含めた3名で語り合う鼎談+後日談で構成されています。法律の話はそれほど多くないのですが、テーマはAI技術、労働、プライバシー、自動運転、ロボット演劇、金融、ロボット投信、医療介護と多岐に渡っており、各分分野の最新事情に触れることができます。ロボット演劇における「ロボットが人の身体性を代替する」という発想は面白いですね。2018年1月発行なので、内容も新しいものが多いですし、興味深い判例にも折々触れています。
最後は、弥永真生氏と宍戸常寿氏による「ロボット・AIと法」です。
今回紹介する中では2018年4月9日出版で最も新しく、大変バランスの取れた内容になっています。出版社が有斐閣ということもあってか、法律を学ぶ学生の教科書・参考書としてオススメするのであれば本書が良いと思いました。執筆陣は上記に紹介した書籍と重なる人も多く、最新事情もカバーしています。
参考サイト
ロボット法をめぐる法領域別課題の鳥瞰 |慶應義塾大学総合政策学部教授 新保史生
http://alis.or.jp/img/issn2432-9649_vol1_p1.pdf
AIネットワーク社会推進会議 報告書2017 |総務省
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000067.html
人工知能と人間社会に関する懇談会 報告書|内閣府
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/ai/summary/index.html
AI社会実装推進調査報告書|IPA
https://www.ipa.go.jp/files/000067229.pdf
AI・データの利用に関する契約ガイドライン|経済産業省
http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180615001/20180615001.html
保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169233.html
「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の報告書|国土交通省
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000336.html
自動運転の段階的実現に向けた調査研究 報告書 | 警察庁
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/jidounten/28houkokusyo.pdf
AIが作ったコンテンツの著作権はどうなる?–福井弁護士が解説する知財戦略|CNET Japan
https://japan.cnet.com/article/35115900/3/
自律兵器の規制から考えるAI時代の戦争と人間のかかわり – 佐藤丙午 / 国際関係論
http://blogos.com/article/278772/
What is a Robot under EU Law?
https://www.globalpolicywatch.com/2017/08/what-is-a-robot-under-eu-law/