検察庁には手を出すな!

ツイッター等で世間を騒がしている「検察庁法改正」の問題について、当初は「別に大した法改正では無い」と思ってましたが、どうもそうではないようです。もしかしたら電子政府とも関係が深い、大きな改革への布石なのかもしれません。

 

検察庁法改正への違和感の正体

検察庁法改正について、なんでこんなに騒いでいるんだろう、またいつもの政権反対運動かなと思って、問題の法改正案や法曹関係者等による解説記事などを読んでいる中で、ちょっとひっかかるというか、妙な違和感がありました。

その違和感が何だったのかを理解できたのが、検察出身の郷原信郎弁護士による解説記事「検察官定年延長法案が「絶対に許容できない」理由」でした。

記事にある法案に対する解説や反対理由は、極めて普通なのですが、非常に重要な記述があります。それは「検察官の退職後の処遇の現状」についてのものです。少し長くなりますが、引用しておきましょう。


『検察庁法上、現在の検察官の定年は、検事総長が65歳、それ以外は63歳だが、実際には、検事正以下の一般の検察官の場合は、60歳前後で、いわゆる「肩叩き」が行われ、それに従って退官すると、「公証人」のポストが与えられる。公証人の収入は、勤務する公証人役場の所在地によるが、概ね2000万円程度の年収になる。

そして、認証官である最高検の次長検事、高検の検事長の職を務めた場合には、63歳の定年近くまで勤務して退官し、この場合は公証人のポストが与えられることはないが、証券取引等監視委員会委員長など、過去に検事長経験者が就任することが慣例化しているポストもあるし、検事長経験者は、弁護士となった場合、大企業の社外役員等に就任する場合が多い。

検察官の退職後の処遇については、上記のような相当な処遇が行われているのであり、一般の公務員のように、定年後、年金受給までの生活に困ることは、まずない。

だからこそ、今回、国家公務員法改正での定年延長制度の導入に併せて、検察官の定年延長を根本的に変えてしまうのであれば、従来行われてきた検察官の退職後の処遇の在り方も根本的に見直すことになる。それを、違法な定年延長を行って批判を受けたからといって拙速に行い、しかも、その審議に、法務大臣も法務省の事務方も関わらないなどということは、全くあり得ないやり方だ。』


このように論じた上で、『検察官の退職後の処遇の現状からしても、検察官に定年延長を導入する必要性は全くない。』と結論づけています。

 

これって、国民から見れば「検察官には天下り先が必要で、それが正義の行使に対する当然の代償である」と言われているようなものですよね。

恐らく郷原弁護士は、検察出身であるがゆえに、本人も気が付かないうちに感覚が麻痺してしまい、「現在の検察官の退職後の処遇は当然である」と勘違いしているのでしょう。だからこそ、全く悪びれることもなく、上記のような天下りの現状を述べてしまっているのだと思います。

そんなことを思っていたら、共同通信で「元検事総長らが定年延長に反対、法務省に意見書提出へ」というニュースがあり、「あ、これはもう確信犯だな」と思いました。松尾邦弘元検事総長の「ライブドア事件などの大型経済事件を指揮」という経歴には、思わず苦笑してしまいましたが。。

 

電子政府や規制改革の壁となる法務省

日本の電子政府が遅れてる原因の一つが、法務省であることは、関係者なら理解していると思います。

法務省管轄の戸籍のデジタル化が進まないこともそうですし、最近では、オンライン会社設立で「公証人による定款認証の省略」を強く反対して押し切ったのも法務省でした。

「公証人による定款認証さえ省略できないで、何が電子政府だ、何が規制改革だ」と思う関係者がいたかもしれませんが、私の感想は「やっぱり、省略できなかったか。まあ、そうだよね」というものでした。

実は、法務省は、官庁の中でもかなり特殊な組織です。通常の省庁は、かつて国家Ⅰ種と言われた公務員試験に通過した、いわゆる官僚(キャリア組)と呼ばれる人たちが中心になっています。ところが、法務省は、さらにその上位に検察官がいて、事務次官を始めとする上位の役職は検察出身者で占められています。

こうした法務省の特殊性について始めて聞いたのは、まだ私が大学生だったころのこと。それから30年近く経っていますが、何も変わっていないのです。

日本の電子政府にとって不幸なのは、そんな法務省が、国の重要なレジストリー(公的な登録簿:戸籍、商業登記、不動産登記など)を握ってしまっているということです。公証人制度を始めとした、検察官や検察OBの利権に関わる改革や電子政府は、すべて潰されてしまうことでしょう。

 

検察庁法改正反対で浮かび上がるメッセージ

そんな検察出身者とそのOBに支配されている法務省は、ほとんど「アンタッチャブル」の組織です。なぜなら、検察官や検察庁そのものが、これでもかと言えるくらいに法律で守られ優遇されているからです。

独立性の高い、いわゆる「三条委員会」や、それに準じるとされる国家公安委員会や個人情報保護委員会などと比べても、検察官や検察庁の厚遇ぶりは、飛びぬけているのです。その一方で、検察官や検察庁を監視・監督する機関は存在しません。検察官や検察庁は、「検察ファッショ」という言葉もあるくらい、実はめちゃくちゃ恐ろしい権力なのです。この辺りの詳しいことは「検察庁法14条に基づく法務大臣の指揮権 弁護士山中理司(大阪弁護士会所属)のブログ」が参考になります。

そんな検察官や検察庁に唯一口を出せるのが、法務大臣であり内閣です。法務大臣や内閣の主要メンバーは、主権者である国民が選んだ国会議員だからです。

現在の安倍政権は、官僚内閣制ではない本来の議院内閣制を目指して、様々な改革を行ってきました。特に人事権は極めて重要で、不透明・不公平な天下りを無くすためにも、公務員の定年延長は欠かせません。

そんな安倍政権に対して、野党の思惑や、政治に関心のある国民を扇動しながら、一つのメッセージが発せられています。それは、

検察庁には手を出すな!

 

さて、私自身は、検察がとても怖いので、後の判断は「主権者である国民の皆様」にお任せしたいと思います。